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本当の名前で
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2人で床や棚を拭き
掃除をして荷物を整理した。
「本が多いなぁ…。」
俊詩が感心したように言う。
「……神田くん。
手伝ってくれてありがとう。」
彩明は目を伏せて言った。
「神宮寺。これからも
お前に会いに来ていいか?」
顔を上げる彩明。
「えっ?」
「ダメか?」
「…………ダメ、なんてそんなこと。
あるわけ、ない。」
「俺は…。お前も、アキ、も。
幸せにしたい。
これからの治療で
どういう形になっていくのか…。
まだわからないけど。
どう、なっても。俺は。
お前を。アキを。神宮寺彩明を
守っていきたい。愛してるんだ。」
「かん、だくん……。」
「アキは俺をシュン、と呼んだ。
前世で俺は駿二だったから。
今世も俊詩のはずだったのに
母親のわがままでとしふみに
読みが変わった。 」
「あ…………確かにしゅんじ…」
「うん。母親の不倫相手がね
としや、って名前でね。
俺をとしくん、と不倫相手と
同じあだ名で呼びたいがために
強引にとしふみにしたんだよ。
寺でつけてもらった
名前だったのにさ。」
ふっ、と笑い俊詩は続ける。
「俺に前世の記憶を
思い出させてくれたのは
アキだけど…。なんだか俺の
思い出すアキはお前の感じも
多分にあるんだよな…。
律儀なとことか、
本が好きなとことか、
優しいところ…
意外と頑固なところ。
変に気を遣うところ。
お前に会えない2週間で
いろいろ考えたんだ。
俺のアキは、彩明であり、アキだって。」
「神田くん…。」
「だから…これからを…
これからの神宮寺彩明を
俺に守らせてくれないか?
もちろんまだ学生だし
守るっつったって
なかなかなんだけどさ。
なんつーか。それでも。
…守りたい、んだ。
ずっと、守っていきたいんだ。」
「神田くん…。
僕達、同性、だよ?
そんなの、いいの?
神田くんの将来が
台無しになっちゃう…」
「俺たちはさ。前世で大切な人達に
拒絶され絶望した。
それでもお互いを愛することを
やめなかったし
今世で会うことを約束した。
俺…。シュンは言っただろう?
またあやあきで生まれて
欲しい、って。そのままの
あやあきでいいんだ、って。」
「ううっ…か、ん、だく、ん…。
うぅぅっ…」
彩明は泣き崩れた。
「日本では同性婚はまだ
認められていないけど
将来はわからないし…。
もしそうならなくても
一緒に生きていくことに
変わりはない。
それでいいと思わない?
普通に普通の恋人同士で
いいじゃん。」
「………。タイスケって覚えてる?
あの子…同性で結婚生活をして
彼の子供たちを育てて、
孫たちに囲まれて
楽しく暮らしたみたい。」
「タイスケ、が?
そう、か…よかった…。」
「そのタイスケの子供さんに
アキからの手紙をね…。
いただいたんだ。これ。」
彩明はそう言うと
棚においてあった箱を持ってきた。
「写真とね。手紙を子供さんに
託していたんだって。
僕達のことを…シュンとアキのことを
いつも話していてくれたんだって。」
「タイ、スケ…。
これは、アキの手紙、なの?」
「うん…。読んでみて。
これはシュンは知らないものだよ。」
「…。」
おそるおそる俊詩は手紙をあけ読んだ。
「う、ぅぅぅぅ…。う、ぁぁぁあ…
アキ、あや、あき…。」
俊詩は彩明を抱きしめた。
「ぁぁ…か、んだくん…。」
「俺っ…。ちいさなころから
建築士になるのが夢だった。
自分で設計した黄色い屋根の家に
住むって決めてた。
この写真…アキにも
送ってもらったけど…
庭に木が植わってて…
俺の小さい頃に描いた夢の家
そのものだ…ぅぅぅっ…。
ここにいた時ものすごく
幸せだったんだよ…
あ、やあきっ!あやあき…ぁぁぁ!」
「かんだく、ん。
僕、治療をがんばる。
アキと僕と、あなたと。
一緒に歩めるように。
がんばる、から。
どんな僕でも。どんなアキでも。
愛してくれる?」
「あたりまえだ!
あやあき…ぅぅぅ…あやあき。」
「ああああぁぁぁ!かん、だくん!」
俊詩は泣き笑いの表情になった。
そして、涙を拭きながら笑う。
「…ふふ。………その…
かんだくんってのやめない?」
「え…。だっ、て…。」
彩明は涙まみれで
戸惑うような嬉しいような顔をした。
「かんだ、くん…。
な、んて呼べばいい、の?」
「ほら、また。ふふふ。
ん、そうだなぁ…。
『としふみ』がいい、な。
お前にこの名前を呼んでもらったら
やっと、自分の名前を
好きになれそうな気がする。」
「かん…。!………えっと。
とし、ふみ、くん。」
「ふはは!くん、いらないし!
同級生だろ?」
「…………だって。」
「だって、なんだよ?」
「だって…………………。恥ずかしい。」
「ぶはっ!お前がそんな照れると
こっちまで照れるじゃん。」
「………………………だって。」
「ほら、呼んで。彩明。」
「…!……………とっ…。としふみ。」
「よし!」
俊詩は彩明の頭を
くしゃくしゃ、と撫でる。
真っ赤な顔をした彩明は
花咲くような笑顔を見せた。
「…つっ。お、お前…。
その顔、反則…。」
俊詩は彩明に
そっと触れるだけの
短いキスを落とす。
さらに赤くなった彩明を
見つめながら改めて誓った。
(俺はこいつを幸せにする。)
高校卒業までの約1年ちょっとの間。
生徒会長をできなくなった
彩明のかわりに俊詩は
生徒会長代理として活躍し
放課後は毎日彩明の部屋に通う。
彩明の小中からの同級生
泰ちゃんこと高橋泰輔も
ちょくちょく見舞いに訪れた。
だが彩明の治療は
一筋縄ではいかなかった。
掃除をして荷物を整理した。
「本が多いなぁ…。」
俊詩が感心したように言う。
「……神田くん。
手伝ってくれてありがとう。」
彩明は目を伏せて言った。
「神宮寺。これからも
お前に会いに来ていいか?」
顔を上げる彩明。
「えっ?」
「ダメか?」
「…………ダメ、なんてそんなこと。
あるわけ、ない。」
「俺は…。お前も、アキ、も。
幸せにしたい。
これからの治療で
どういう形になっていくのか…。
まだわからないけど。
どう、なっても。俺は。
お前を。アキを。神宮寺彩明を
守っていきたい。愛してるんだ。」
「かん、だくん……。」
「アキは俺をシュン、と呼んだ。
前世で俺は駿二だったから。
今世も俊詩のはずだったのに
母親のわがままでとしふみに
読みが変わった。 」
「あ…………確かにしゅんじ…」
「うん。母親の不倫相手がね
としや、って名前でね。
俺をとしくん、と不倫相手と
同じあだ名で呼びたいがために
強引にとしふみにしたんだよ。
寺でつけてもらった
名前だったのにさ。」
ふっ、と笑い俊詩は続ける。
「俺に前世の記憶を
思い出させてくれたのは
アキだけど…。なんだか俺の
思い出すアキはお前の感じも
多分にあるんだよな…。
律儀なとことか、
本が好きなとことか、
優しいところ…
意外と頑固なところ。
変に気を遣うところ。
お前に会えない2週間で
いろいろ考えたんだ。
俺のアキは、彩明であり、アキだって。」
「神田くん…。」
「だから…これからを…
これからの神宮寺彩明を
俺に守らせてくれないか?
もちろんまだ学生だし
守るっつったって
なかなかなんだけどさ。
なんつーか。それでも。
…守りたい、んだ。
ずっと、守っていきたいんだ。」
「神田くん…。
僕達、同性、だよ?
そんなの、いいの?
神田くんの将来が
台無しになっちゃう…」
「俺たちはさ。前世で大切な人達に
拒絶され絶望した。
それでもお互いを愛することを
やめなかったし
今世で会うことを約束した。
俺…。シュンは言っただろう?
またあやあきで生まれて
欲しい、って。そのままの
あやあきでいいんだ、って。」
「ううっ…か、ん、だく、ん…。
うぅぅっ…」
彩明は泣き崩れた。
「日本では同性婚はまだ
認められていないけど
将来はわからないし…。
もしそうならなくても
一緒に生きていくことに
変わりはない。
それでいいと思わない?
普通に普通の恋人同士で
いいじゃん。」
「………。タイスケって覚えてる?
あの子…同性で結婚生活をして
彼の子供たちを育てて、
孫たちに囲まれて
楽しく暮らしたみたい。」
「タイスケ、が?
そう、か…よかった…。」
「そのタイスケの子供さんに
アキからの手紙をね…。
いただいたんだ。これ。」
彩明はそう言うと
棚においてあった箱を持ってきた。
「写真とね。手紙を子供さんに
託していたんだって。
僕達のことを…シュンとアキのことを
いつも話していてくれたんだって。」
「タイ、スケ…。
これは、アキの手紙、なの?」
「うん…。読んでみて。
これはシュンは知らないものだよ。」
「…。」
おそるおそる俊詩は手紙をあけ読んだ。
「う、ぅぅぅぅ…。う、ぁぁぁあ…
アキ、あや、あき…。」
俊詩は彩明を抱きしめた。
「ぁぁ…か、んだくん…。」
「俺っ…。ちいさなころから
建築士になるのが夢だった。
自分で設計した黄色い屋根の家に
住むって決めてた。
この写真…アキにも
送ってもらったけど…
庭に木が植わってて…
俺の小さい頃に描いた夢の家
そのものだ…ぅぅぅっ…。
ここにいた時ものすごく
幸せだったんだよ…
あ、やあきっ!あやあき…ぁぁぁ!」
「かんだく、ん。
僕、治療をがんばる。
アキと僕と、あなたと。
一緒に歩めるように。
がんばる、から。
どんな僕でも。どんなアキでも。
愛してくれる?」
「あたりまえだ!
あやあき…ぅぅぅ…あやあき。」
「ああああぁぁぁ!かん、だくん!」
俊詩は泣き笑いの表情になった。
そして、涙を拭きながら笑う。
「…ふふ。………その…
かんだくんってのやめない?」
「え…。だっ、て…。」
彩明は涙まみれで
戸惑うような嬉しいような顔をした。
「かんだ、くん…。
な、んて呼べばいい、の?」
「ほら、また。ふふふ。
ん、そうだなぁ…。
『としふみ』がいい、な。
お前にこの名前を呼んでもらったら
やっと、自分の名前を
好きになれそうな気がする。」
「かん…。!………えっと。
とし、ふみ、くん。」
「ふはは!くん、いらないし!
同級生だろ?」
「…………だって。」
「だって、なんだよ?」
「だって…………………。恥ずかしい。」
「ぶはっ!お前がそんな照れると
こっちまで照れるじゃん。」
「………………………だって。」
「ほら、呼んで。彩明。」
「…!……………とっ…。としふみ。」
「よし!」
俊詩は彩明の頭を
くしゃくしゃ、と撫でる。
真っ赤な顔をした彩明は
花咲くような笑顔を見せた。
「…つっ。お、お前…。
その顔、反則…。」
俊詩は彩明に
そっと触れるだけの
短いキスを落とす。
さらに赤くなった彩明を
見つめながら改めて誓った。
(俺はこいつを幸せにする。)
高校卒業までの約1年ちょっとの間。
生徒会長をできなくなった
彩明のかわりに俊詩は
生徒会長代理として活躍し
放課後は毎日彩明の部屋に通う。
彩明の小中からの同級生
泰ちゃんこと高橋泰輔も
ちょくちょく見舞いに訪れた。
だが彩明の治療は
一筋縄ではいかなかった。
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