48 / 98
拒否
しおりを挟む
「なにから話せばいいのか…
わからないんですけど…。
僕は…母親が病気で亡くなってから
父親に…」
彩明はぽつりぽつりと話しだした。
涙と鼻水とよだれで
持っていたハンカチは
ぐしゃぐしゃになり
柏葉からタオルを借り
そのタオルを握りしめ
ひとつひとつ丁寧に
今までの事を話した。
なにも包み隠さずに
すべてを打ち明けた。
「………そして、今日、覚悟して
ここに、来たん、で、す。」
最初椅子に座って話していた
彩明だったが気がつけば
床で柏葉に抱きとめられていた。
「よしよし…。つらかったな。
今までひとりでよくがんばった。」
そう言って柏葉は
彩明の頭をなでてくれる。
どのくらいそうして
すすり泣いていただろう。
窓から日の光がさしていた
診察室は月の光でぼんやりと
あかりがあるだけで
夜の帳がおりていた。
「…す、すみません。
こんな…こんな時間まで。」
彩明は我に返って
柏葉から離れる。
「…いや。大丈夫だよ。
君のための時間だから。」
「先生…。う、わぁぁぁぁ……………!」
彩明は大声を上げて泣いた。
「君の治療には時間が
かかるかもしれない。」
そう柏葉は告げた。
「今、話を聞く限り…
僕は『人格統合』という
治療がいいのかな、と思う。
もちろんこれから
いろんな検査とかテストなどをして
決めていくんだけれど。」
そう言うと彩明の肩に
手を乗せた。
「統、合…?」
「あぁ。彩明くんとアキくんを
1つの人格に統合する。」
「…………………いやです。
そんなのいやだ!
僕は…僕は彩明です!
アキじゃない!
僕が僕でなくなっちゃうのは
いやだ!…いやです……………!」
覚悟をしてきたはずの
彩明だったが思わず
取り乱して叫んだ。
「わかった。ごめん。
いろんな治療がある。
いろんな方法がある。
だから。これから話し合って
決めていこう。な。」
「………うっ、うぅ…。
い、やで………す。」
そういうと彩明は
必死に逃げ出した。
「!!!彩明くん!待って!」
柏葉は追いかけたが
1寸の差で彩明は
手をすり抜けた。
「彩明くん!彩明くん!!!」
どれだけ走ったのか。
息が切れ喉がヒュウヒュウと鳴る。
涙と汗と吐き出す息の水分で
顔中がベタベタだった。
壁に背をすりつけて
ズリズリとしゃがみ込む。
(息が上手く吸えず苦しい…
このまま…死んでしまえば
楽になれるんだろうか。
いや、きっとアキが怒るよね…)
苦しいのに笑いが出てくる。
彩明は狂ったように
泣き笑い、号泣した。
泣くだけ泣いて嗚咽混じりに
息をつく。
その時、聞き覚えのある声が
聞こえた気がした。
「……ぐうじ?
……………神宮寺、なの?
え?大丈夫か?」
「…………………か、んだ、く、ん…。
…………来、ないで!」
「!!な!なんだよ!
どうしたんだよ?」
「………来、ちゃだ、め。」
「おい!神宮寺…」
俊詩は助け起こそうと
彩明の肩を触った。
その瞬間、ビリビリと俊詩の手と
彩明の肩が痺れ
「うっ!」「あっ…」と
声をあげ、驚く2人。
「っつ………………とりあえず
うちに行こう。
神宮寺、立てるか?」
ちいさく首をふる彩明。
「神宮寺。
ここにお前を置いていけない。
だから、とりあえず
うちに行こうよ。」
彩明は、とまどいながらも
無言で立ち上がった。
「すぐ、そこだから、さ。」
俊詩は先を歩く。
彩明は少し後ろをおずおずと歩いた。
部屋の中に入って俊詩は
玄関に佇む彩明に
「シャワー、使っていいから。
はい。」と、タオルと
新しい下着と着替えの
スエットを渡した。
「…でも。」
彩明は、躊躇う。
「神宮寺…
いいから。お前の状態、ひどいよ。
流して着替えてきて。」
「神田くん…。
………あり、がとう…」
「ん。」
彩明は震えながら
シャワーをなんとか浴びて
着替えた。
シャワーから出ると俊詩から
「ほい、これ飲んで。」と
カップを渡たされる。
「…………ありが、とう。」
はちみつが入った
ホットミルクだった。
「俺、心がしんどい時さ、
それ飲むと落ち着くから。」
そう言い俊詩は
彩明の向かい側に座った。
彩明は顔を上げることが
出来ずにいたが意を決して
俊詩を見る。
わからないんですけど…。
僕は…母親が病気で亡くなってから
父親に…」
彩明はぽつりぽつりと話しだした。
涙と鼻水とよだれで
持っていたハンカチは
ぐしゃぐしゃになり
柏葉からタオルを借り
そのタオルを握りしめ
ひとつひとつ丁寧に
今までの事を話した。
なにも包み隠さずに
すべてを打ち明けた。
「………そして、今日、覚悟して
ここに、来たん、で、す。」
最初椅子に座って話していた
彩明だったが気がつけば
床で柏葉に抱きとめられていた。
「よしよし…。つらかったな。
今までひとりでよくがんばった。」
そう言って柏葉は
彩明の頭をなでてくれる。
どのくらいそうして
すすり泣いていただろう。
窓から日の光がさしていた
診察室は月の光でぼんやりと
あかりがあるだけで
夜の帳がおりていた。
「…す、すみません。
こんな…こんな時間まで。」
彩明は我に返って
柏葉から離れる。
「…いや。大丈夫だよ。
君のための時間だから。」
「先生…。う、わぁぁぁぁ……………!」
彩明は大声を上げて泣いた。
「君の治療には時間が
かかるかもしれない。」
そう柏葉は告げた。
「今、話を聞く限り…
僕は『人格統合』という
治療がいいのかな、と思う。
もちろんこれから
いろんな検査とかテストなどをして
決めていくんだけれど。」
そう言うと彩明の肩に
手を乗せた。
「統、合…?」
「あぁ。彩明くんとアキくんを
1つの人格に統合する。」
「…………………いやです。
そんなのいやだ!
僕は…僕は彩明です!
アキじゃない!
僕が僕でなくなっちゃうのは
いやだ!…いやです……………!」
覚悟をしてきたはずの
彩明だったが思わず
取り乱して叫んだ。
「わかった。ごめん。
いろんな治療がある。
いろんな方法がある。
だから。これから話し合って
決めていこう。な。」
「………うっ、うぅ…。
い、やで………す。」
そういうと彩明は
必死に逃げ出した。
「!!!彩明くん!待って!」
柏葉は追いかけたが
1寸の差で彩明は
手をすり抜けた。
「彩明くん!彩明くん!!!」
どれだけ走ったのか。
息が切れ喉がヒュウヒュウと鳴る。
涙と汗と吐き出す息の水分で
顔中がベタベタだった。
壁に背をすりつけて
ズリズリとしゃがみ込む。
(息が上手く吸えず苦しい…
このまま…死んでしまえば
楽になれるんだろうか。
いや、きっとアキが怒るよね…)
苦しいのに笑いが出てくる。
彩明は狂ったように
泣き笑い、号泣した。
泣くだけ泣いて嗚咽混じりに
息をつく。
その時、聞き覚えのある声が
聞こえた気がした。
「……ぐうじ?
……………神宮寺、なの?
え?大丈夫か?」
「…………………か、んだ、く、ん…。
…………来、ないで!」
「!!な!なんだよ!
どうしたんだよ?」
「………来、ちゃだ、め。」
「おい!神宮寺…」
俊詩は助け起こそうと
彩明の肩を触った。
その瞬間、ビリビリと俊詩の手と
彩明の肩が痺れ
「うっ!」「あっ…」と
声をあげ、驚く2人。
「っつ………………とりあえず
うちに行こう。
神宮寺、立てるか?」
ちいさく首をふる彩明。
「神宮寺。
ここにお前を置いていけない。
だから、とりあえず
うちに行こうよ。」
彩明は、とまどいながらも
無言で立ち上がった。
「すぐ、そこだから、さ。」
俊詩は先を歩く。
彩明は少し後ろをおずおずと歩いた。
部屋の中に入って俊詩は
玄関に佇む彩明に
「シャワー、使っていいから。
はい。」と、タオルと
新しい下着と着替えの
スエットを渡した。
「…でも。」
彩明は、躊躇う。
「神宮寺…
いいから。お前の状態、ひどいよ。
流して着替えてきて。」
「神田くん…。
………あり、がとう…」
「ん。」
彩明は震えながら
シャワーをなんとか浴びて
着替えた。
シャワーから出ると俊詩から
「ほい、これ飲んで。」と
カップを渡たされる。
「…………ありが、とう。」
はちみつが入った
ホットミルクだった。
「俺、心がしんどい時さ、
それ飲むと落ち着くから。」
そう言い俊詩は
彩明の向かい側に座った。
彩明は顔を上げることが
出来ずにいたが意を決して
俊詩を見る。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~
天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。
オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。
彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。
目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった!
他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。
ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる