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引き合わせ
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彩明はまず
病院内の図書館に
行ってみることにした。
調べ物をすることができる
パソコンの前に座る。
(もし。前世なら。
どのぐらい前だろう。
北海道の北のほう、山で遭難…
少年2人。新聞に載ったり
しているだろうか…)
いろいろ検索ワードを入れてみる。
何時間もいろいろと
検索してひとつの記事に
たどり着いた。
(ん?こ、れ…?)
その記事は約60年前の小さな記事。
それは少年らが展望台に行って
帰ってこないと
ロープウェイの職員が申し出て
捜索隊が出された、というもので
少年らはまだ行方不明だ、と
いう短い記事だったが
彩明が確信するに
じゅうぶんで…。
ギプスがとれ退院した彩明は
まず北海道に向かった。
アキの話した前世が
住んでいたところと
その山は近い場所で
とりあえず、その山の展望台に
行ってみたくて電車を乗り継いだ。
駅に降り立つと古びたロープウェイは
まだそこにあって
乗って展望台に行けるようだった。
ロープウェイの職員に記事を見せ
聞いてみたがその若い職員は
知らないと言う。
彩明は展望台で
少し冷たくなってきた空気を
思い切り吸い込んだ。
夢に出てきたあの人の
唇まで白く、透き通ったような
肌の色をまざまざと思い出す。
(でも、顔、思い出せないな…)
しばらく佇み、景色を見ていた
彩明だったが無言で
ロープウェイを降り
アキが前世で住んでいた、と
語った町へとやってきた。
(大工さん…でもそこには行けない。
あと聞くとすれば食堂かな…
残ってはいないかな…)
「…………………ア、キ?」
駅を出たところのロータリーで
佇んでいると後ろから声をかけられた。
見るとかなり高齢のご婦人が
駅のベンチに腰かけて
こちらをびっくりしたように
見つめている。
「そんなはずはない…」
1人つぶやくそのご婦人に
彩明は声をかける。
「今、アキとおっしゃいましたか?」
「あぁ…。遠い昔にあなたに
よく似た子をうちの食堂で
預かってねぇ…
あの子に可哀想なことを
してしまってねぇ…
あの時なぜ私は相談に
のってやれなかったのか…
自分の情けなさを
ずっと悔やんでいてねぇ…」
そう言いながらご婦人は
涙をつ、と流す。
彩明はハンカチを渡し
微笑んだ。
「…きっと。その子はあなたに
感謝してると思いますよ。
ってか……………感謝してます。
……………僕がそのアキって子の
生まれ変わりだ、と言ったら
信じてくれますか?」
目をまんまるく見開いた
ご婦人はまじまじと彩明を見た。
「面影が似ている…。
さっき見たときアキだと思った。
佇まいが一緒で…」
「僕、彩やかに明るい、と
書いてあやあきと言います。
その…アキ、もあやあきですか?」
「!そうだ!アキは彪亮だ…。
………生まれ変わり、なんて
本当にあるのかい?」
「僕もここに来るまで
半信半疑だったんです。
僕、事故にあって
意識不明だったんですが
その間に前世を見たみたいで…
記憶は曖昧なんです…
でも。ここにきてあの山にも
行ってきてすごく実感が…。
あなたにお会いした瞬間も
懐かしいような気持ちがしました。」
「…………………アキ。ごめんねぇ。
あんときアイツがしたことは
許されない…私がもっと
しっかりしていれば……。
そして兄夫婦のことも
申し訳なかった……
あんな、偏見に満ちた
人たちだと思わなかった…
アキ、本当にごめんね…」
「………幸子さん…」
ふっ、と名前が口をついて出た。
「え?………名前、私言ってないよねぇ…
やっぱりあなたは
アキの生まれ変わりって
本当なのかも…」
それからも2人でいろいろな話をした。
「私はね…アキ。2人のこと
わかってたんだ。
愛し合う2人だってこと。
…もう少し気遣ってやれれば
よかったねぇ…
あの時、私はまだ30代で、
自分のことで精一杯だった…
ごめんねぇ…」
「いえ…本当に良くして
いただきました。親方ご夫妻にも
幸子さんにも。
本当にありがとうございます…」
「こんな…こんなことが
あるのかねぇ……そうだ、思い出した。
…あなたたちが行方不明になってから
泣きながら食堂に来た子がいてね…
名前はなんだったか……………」
「………タイスケ、ですか?」
「そうだ、タイスケくん!
あの子からアキの手紙を
見せてもらったんだよ。
最後の手紙を………。」
「手紙…。タイスケ持って
来てくれたんですね…。」
「泣いてたけど…でも2人一緒に
逝って幸せだろう、って。
まだ中学生なのに
大人びたことを言った…」
「…あの子も苦労、したんです。
…………あの子、その後どうしたか
ご存じですか?」
「…。何年もずっと年賀状を
くれていたが…帰って探してみるよ。」
「………………ありがとうごさいます…。」
彩明は電話番号と住所を渡し
もし見つかったら連絡ください、と言った。
「わかった…。アキ。
本当にごめんね…ごめん、ごめ…」と
幸子はいつまでも謝って
彩明を抱きしめ続けてくれた。
病院内の図書館に
行ってみることにした。
調べ物をすることができる
パソコンの前に座る。
(もし。前世なら。
どのぐらい前だろう。
北海道の北のほう、山で遭難…
少年2人。新聞に載ったり
しているだろうか…)
いろいろ検索ワードを入れてみる。
何時間もいろいろと
検索してひとつの記事に
たどり着いた。
(ん?こ、れ…?)
その記事は約60年前の小さな記事。
それは少年らが展望台に行って
帰ってこないと
ロープウェイの職員が申し出て
捜索隊が出された、というもので
少年らはまだ行方不明だ、と
いう短い記事だったが
彩明が確信するに
じゅうぶんで…。
ギプスがとれ退院した彩明は
まず北海道に向かった。
アキの話した前世が
住んでいたところと
その山は近い場所で
とりあえず、その山の展望台に
行ってみたくて電車を乗り継いだ。
駅に降り立つと古びたロープウェイは
まだそこにあって
乗って展望台に行けるようだった。
ロープウェイの職員に記事を見せ
聞いてみたがその若い職員は
知らないと言う。
彩明は展望台で
少し冷たくなってきた空気を
思い切り吸い込んだ。
夢に出てきたあの人の
唇まで白く、透き通ったような
肌の色をまざまざと思い出す。
(でも、顔、思い出せないな…)
しばらく佇み、景色を見ていた
彩明だったが無言で
ロープウェイを降り
アキが前世で住んでいた、と
語った町へとやってきた。
(大工さん…でもそこには行けない。
あと聞くとすれば食堂かな…
残ってはいないかな…)
「…………………ア、キ?」
駅を出たところのロータリーで
佇んでいると後ろから声をかけられた。
見るとかなり高齢のご婦人が
駅のベンチに腰かけて
こちらをびっくりしたように
見つめている。
「そんなはずはない…」
1人つぶやくそのご婦人に
彩明は声をかける。
「今、アキとおっしゃいましたか?」
「あぁ…。遠い昔にあなたに
よく似た子をうちの食堂で
預かってねぇ…
あの子に可哀想なことを
してしまってねぇ…
あの時なぜ私は相談に
のってやれなかったのか…
自分の情けなさを
ずっと悔やんでいてねぇ…」
そう言いながらご婦人は
涙をつ、と流す。
彩明はハンカチを渡し
微笑んだ。
「…きっと。その子はあなたに
感謝してると思いますよ。
ってか……………感謝してます。
……………僕がそのアキって子の
生まれ変わりだ、と言ったら
信じてくれますか?」
目をまんまるく見開いた
ご婦人はまじまじと彩明を見た。
「面影が似ている…。
さっき見たときアキだと思った。
佇まいが一緒で…」
「僕、彩やかに明るい、と
書いてあやあきと言います。
その…アキ、もあやあきですか?」
「!そうだ!アキは彪亮だ…。
………生まれ変わり、なんて
本当にあるのかい?」
「僕もここに来るまで
半信半疑だったんです。
僕、事故にあって
意識不明だったんですが
その間に前世を見たみたいで…
記憶は曖昧なんです…
でも。ここにきてあの山にも
行ってきてすごく実感が…。
あなたにお会いした瞬間も
懐かしいような気持ちがしました。」
「…………………アキ。ごめんねぇ。
あんときアイツがしたことは
許されない…私がもっと
しっかりしていれば……。
そして兄夫婦のことも
申し訳なかった……
あんな、偏見に満ちた
人たちだと思わなかった…
アキ、本当にごめんね…」
「………幸子さん…」
ふっ、と名前が口をついて出た。
「え?………名前、私言ってないよねぇ…
やっぱりあなたは
アキの生まれ変わりって
本当なのかも…」
それからも2人でいろいろな話をした。
「私はね…アキ。2人のこと
わかってたんだ。
愛し合う2人だってこと。
…もう少し気遣ってやれれば
よかったねぇ…
あの時、私はまだ30代で、
自分のことで精一杯だった…
ごめんねぇ…」
「いえ…本当に良くして
いただきました。親方ご夫妻にも
幸子さんにも。
本当にありがとうございます…」
「こんな…こんなことが
あるのかねぇ……そうだ、思い出した。
…あなたたちが行方不明になってから
泣きながら食堂に来た子がいてね…
名前はなんだったか……………」
「………タイスケ、ですか?」
「そうだ、タイスケくん!
あの子からアキの手紙を
見せてもらったんだよ。
最後の手紙を………。」
「手紙…。タイスケ持って
来てくれたんですね…。」
「泣いてたけど…でも2人一緒に
逝って幸せだろう、って。
まだ中学生なのに
大人びたことを言った…」
「…あの子も苦労、したんです。
…………あの子、その後どうしたか
ご存じですか?」
「…。何年もずっと年賀状を
くれていたが…帰って探してみるよ。」
「………………ありがとうごさいます…。」
彩明は電話番号と住所を渡し
もし見つかったら連絡ください、と言った。
「わかった…。アキ。
本当にごめんね…ごめん、ごめ…」と
幸子はいつまでも謝って
彩明を抱きしめ続けてくれた。
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