上 下
36 / 98

前世が見せる夢

しおりを挟む
彩明あやあきが目覚めて
2週間がたった。



まだ夢と現を行ったり来たり
していた彩明あやあきだったが
たくさん繋がれていた
点滴などが徐々に外れていき
右足のギブスを残すのみと
なるまで回復し
リハビリが始まっていた。




父、彩人あやとの実家のほうから
弁護士だという人が来て
初めて父親が自殺だったことを
知らされ呆然とする彩明あやあき

財産分与などの説明があったが
上の空で聞いていた。



とにかくにも彩人あやと彩明あやあき
一生困らないぐらいの財産を
きちんと残してくれていた。




(ぼくは父親を殺そうとした。
その事実は変わらない…。)





彩明あやあきは眠れぬ日々を
過ごす中で少し眠ることができると
きまって夢を見ていた。




あたたかく微笑む男性が
自分を抱きしめて
愛してる、と、呟く。

時には顔中にキスの雨をふらせながら、
時には優しく涙を拭きながら
時には欲情した顔で
時には満面の笑顔で
時には涙を頬に伝わせ
時には蒼白な顔で…
自分を見ている。

そして夢の中ではわかっているのに
目覚めるとまったく
その顔を思い出せない。




(誰なんだろう…。
すごくあたたかくて切なくて…
幸せな気持ちになる。)





『…シュンだよ。』
自分の中から声がする。 



彩明あやあきは一瞬
目をぎゅっと瞑った。





「………………アキ。
…やっぱりまだ、いたんだね。」





彩明あやあきごめん。
お前のお父さんの最期を
伝えたくて留まってしまった。

そしたら…前世を見たんだ。
彩明あやあきが寝ている間
ずっとボクは前世を体感してた。』




「じゃあ…あの人は。」

『うん。前世での恋人。』

「恋人?」

『うん。』

「ほんとのことなの?
前世なんて…信じられない。」

『ホントのことだよ!……………と、思う。』

「…アキ。話して聞かせて?」

『うん。ボクたちの前世の 
あやあきと彼は
同じ日に生まれたんだよ…』

アキはすべてを話して聞かせる。





彩明あやあきはただただ
涙を流していた。




(そんなに愛し合える人が
いた前世の自分が羨ましい
とも思った。
本当にその恋人も今のこの世
同じ時代とき
生まれ変わっているだろうか…。)




『…彩明あやあき。ボクはあの人を。
シュンを探したい。』




「探すってどうやって!?
それにアキが見た前世が
本当かどうかなんてわかんない!
本当だとしても
彼が今世また生まれてるとは
限らないよ…」




『約束したもん。
絶対に生まれてくれてる。
彩明あやあき、探して…お願い。
お願いだよ…。』



「探す、ったって…」 
 



『おね…が…い……………』




「アキ?アキ!」





アキは出てこなくなってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪済み悪役令息は、嫌われないようにおとなしく生きます!

七海咲良
BL
 前世の記憶を思い出したのは、断罪後の馬車の中だった。プレイしたことのあるBLゲームの世界に転生したけど、その知識を使うまでもなく僕は舞台から離れていく。でもこれって、ある意味これからのストーリーに介入しなくていいってことだよね? やった! 自由だ! これからはおとなしく生きていくぞ~!

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

「俺の子を孕め。」とアルファ令息に強制的に妊娠させられ、番にならされました。

天災
BL
 「俺の子を孕め」  そう言われて、ご主人様のダニエル・ラーン(α)は執事の僕、アンドレ・ブール(Ω)を強制的に妊娠させ、二人は番となる。

悪役令息に誘拐されるなんて聞いてない!

晴森 詩悠
BL
ハヴィことハヴィエスは若くして第二騎士団の副団長をしていた。 今日はこの国王太子と幼馴染である親友の婚約式。 従兄弟のオルトと共に警備をしていたが、どうやら婚約式での会場の様子がおかしい。 不穏な空気を感じつつ会場に入ると、そこにはアンセルが無理やり床に押し付けられていたーー。 物語は完結済みで、毎日10時更新で最後まで読めます。(全29話+閉話) (1話が大体3000字↑あります。なるべく2000文字で抑えたい所ではありますが、あんこたっぷりのあんぱんみたいな感じなので、短い章が好きな人には先に謝っておきます、ゴメンネ。) ここでは初投稿になりますので、気になったり苦手な部分がありましたら速やかにソッ閉じの方向で!(土下座 性的描写はありませんが、嗜好描写があります。その時は▷がついてそうな感じです。 好き勝手描きたいので、作品の内容の苦情や批判は受け付けておりませんので、ご了承下されば幸いです。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て運命の相手を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ──────────── ※感想、いいね大歓迎です!!

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。
BL
たった一人神器、黙示録を扱える少年は仲間を庇い、絶命した。 そして目を覚ましたら、少年がいた時代から遥か先の時代のエリオット・オズヴェルグに転生していた!? 黒いボサボサの頭に、丸眼鏡という容姿。 お世辞でも顔が整っているとはいえなかったが、術が解けると本来は紅い髪に金色の瞳で整っている顔たちだった。 そんなエリオットはいじめを受け、精神的な理由で絶賛休学中。 学園生活は平穏に過ごしたいが、真正面から返り討ちにすると後々面倒事に巻き込まれる可能性がある。 それならと陰ながら返り討ちしつつ、唯一いじめから庇ってくれていたデュオのフレディと共に学園生活を平穏(?)に過ごしていた。 だが、そんな最中自身のことをゲームのヒロインだという季節外れの転校生アリスティアによって、平穏な学園生活は崩れ去っていく。 生徒会や風紀委員を巻き込むのはいいが、俺だけは巻き込まないでくれ!! この物語は、平穏にのんびりマイペースに過ごしたいエリオットが、問題に巻き込まれながら、生徒会や風紀委員の者達と交流を深めていく微BLチックなお話 ※のんびりマイペースに気が向いた時に投稿していきます。 昔から誤字脱字変換ミスが多い人なので、何かありましたらお伝えいただけれ幸いです。 pixivにもゆっくり投稿しております。 病気療養中で、具合悪いことが多いので度々放置しています。 楽しみにしてくださっている方ごめんなさい💦 R15は流血表現などの保険ですので、性的表現はほぼないです。 あったとしても軽いキスくらいですので、性的表現が苦手な人でも見れる話かと思います。

処理中です...