10 / 29
モヤモヤする
しおりを挟む
「……ねぇ佳マネさん。僕1ヶ月もたないかも……。」
{雷音。疲れているのはわかってる……。でもここが踏ん張りどきなんだ。2日目で根をあげないでなんとかがんばってよ。ね?}
「……。」
{僕らも気合入ってる企画なんだ。
拓も久しぶりの逸材に張り切ってるし。}
「サン、演技はどうなの?」
{それがさ!オーディションのとき演技初めてだ、って言うんだけど凄く光るものがあってね!もちろん荒削りでいろいろレッスンする必要はあるけど。拓が激推しだったんだよね。}
(……。拓マネさんの肝煎りか……。あーモヤモヤする。)
ラジオ局に着いて楽屋に入ると一息つくまもなく雑誌のインタビューが始まる。
4thシングルのこと、アルバムのこと、ゲスト出演するドラマのこと。そして今回の企画のこと。雑誌社ごとに似たような質問がされそのどれにも似たような答えを返す。その繰り返し。
(5社が限界だ……。訳がわからなくなってくる……。疲れているのかなぁ……。)
実際だいぶ前から精神的な疲れは僕を蝕んでいる。
デビューから今日まで目まぐるしすぎた。
(この企画が終わったら少しだけでも休ませてもらえるように佳マネさんに頼んでみよう……。)
まだ続いている質問に上辺だけは微笑しながら口だけが勝手に動く。それはひどく滑稽なように思えた。
ラジオ収録は夕方から始まって。僕がブースに入り準備をしているとサンがキョロキョロしながら前室に入ってくる。
拓マネさんがスタッフにサンを紹介しているようだ。
僕が見ていることに気づいたサンがこっちに手を振ってくるのに全力で無視を決めこむ。
「雷音のPassion Radioの時間です!こんにちは。新堂雷音です。みなさん1週間いかがお過ごしでしたか?僕は、というと、とある企画でシェアハウスを始めています!このラジオも協賛してくださっているMuyTVアプリさんで1ヶ月シェアハウスチャレンジ配信中です!見ていない!ってかたは是非"えむ、ゆー、わい"で検索してMuyTVアプリをダウンロードして24時間生配信を見てくださいね!では1曲目。raion、4thシングルで"SKY"聴いてください。」
テンション高く言い切ってマイクをoffしたのを確認してからふーっと息を吐き出すとキラキラした目でこちらを見ているサンと目がバチッと合ってしまってまた目をそらし資料を探しているふりをして手元を見回した。
ラジオ番組2本の収録が終わり目頭を抑えながらブースを出るとサンが駆け寄ってくる。
『ライ、おつかれさま!……大丈夫?頭痛い?』
「……大丈夫。」
ライはやっぱりカッコイイね!なんてテンションの高いサンに僕はついていけず力なく前室のソファに沈みこんだ。
《雷音!ラジオ、全っ然覇気がなかったよ。どうなってんの?佳が甘やかすから……。調子のってんじゃないよ!?ちょっと今回の企画、ちゃんとやって?足引っ張らないでよ?》
冷ややかな拓マネの声が僕の心を抉っていく。
そのままサンを連れて行ってしまった。
(拓マネが苦手すぎる……。)
ますますズキズキする頭と重い体を引きずって楽屋に戻りCMの打ち合わせをしたあとドラマの衣装合わせをしてやっと仕事が終わる。
{今日は移動がなかっただけ
身体の疲れはましだったでしょ?}
「……。あぁ。佳マネさんラジオ局だけでいいようにやいろいろ手配してくれたんでしょ?ありがとうね……。」
ううん、と言って車を発車させた佳マネさんは拓がごめんね、あいつも悪いやつじゃないんだけど、と顔をしかめた。
僕が首を振って大丈夫と呟くと、着くまで目をつぶってて、と温かくなるアイマスクを渡される。
その気遣いが嬉しかった。
洋服や身の回りのものをシェアハウスに持っていくために実家に寄ってまた車に戻ると、これ、と見せられたタブレットにはサンの宣材写真。
髪を後ろに束ねてラフなスーツに身を包んだサンはとても綺麗で。
「……いいじゃん。」
素直にそう言いまた目を閉じた。
{雷音。疲れているのはわかってる……。でもここが踏ん張りどきなんだ。2日目で根をあげないでなんとかがんばってよ。ね?}
「……。」
{僕らも気合入ってる企画なんだ。
拓も久しぶりの逸材に張り切ってるし。}
「サン、演技はどうなの?」
{それがさ!オーディションのとき演技初めてだ、って言うんだけど凄く光るものがあってね!もちろん荒削りでいろいろレッスンする必要はあるけど。拓が激推しだったんだよね。}
(……。拓マネさんの肝煎りか……。あーモヤモヤする。)
ラジオ局に着いて楽屋に入ると一息つくまもなく雑誌のインタビューが始まる。
4thシングルのこと、アルバムのこと、ゲスト出演するドラマのこと。そして今回の企画のこと。雑誌社ごとに似たような質問がされそのどれにも似たような答えを返す。その繰り返し。
(5社が限界だ……。訳がわからなくなってくる……。疲れているのかなぁ……。)
実際だいぶ前から精神的な疲れは僕を蝕んでいる。
デビューから今日まで目まぐるしすぎた。
(この企画が終わったら少しだけでも休ませてもらえるように佳マネさんに頼んでみよう……。)
まだ続いている質問に上辺だけは微笑しながら口だけが勝手に動く。それはひどく滑稽なように思えた。
ラジオ収録は夕方から始まって。僕がブースに入り準備をしているとサンがキョロキョロしながら前室に入ってくる。
拓マネさんがスタッフにサンを紹介しているようだ。
僕が見ていることに気づいたサンがこっちに手を振ってくるのに全力で無視を決めこむ。
「雷音のPassion Radioの時間です!こんにちは。新堂雷音です。みなさん1週間いかがお過ごしでしたか?僕は、というと、とある企画でシェアハウスを始めています!このラジオも協賛してくださっているMuyTVアプリさんで1ヶ月シェアハウスチャレンジ配信中です!見ていない!ってかたは是非"えむ、ゆー、わい"で検索してMuyTVアプリをダウンロードして24時間生配信を見てくださいね!では1曲目。raion、4thシングルで"SKY"聴いてください。」
テンション高く言い切ってマイクをoffしたのを確認してからふーっと息を吐き出すとキラキラした目でこちらを見ているサンと目がバチッと合ってしまってまた目をそらし資料を探しているふりをして手元を見回した。
ラジオ番組2本の収録が終わり目頭を抑えながらブースを出るとサンが駆け寄ってくる。
『ライ、おつかれさま!……大丈夫?頭痛い?』
「……大丈夫。」
ライはやっぱりカッコイイね!なんてテンションの高いサンに僕はついていけず力なく前室のソファに沈みこんだ。
《雷音!ラジオ、全っ然覇気がなかったよ。どうなってんの?佳が甘やかすから……。調子のってんじゃないよ!?ちょっと今回の企画、ちゃんとやって?足引っ張らないでよ?》
冷ややかな拓マネの声が僕の心を抉っていく。
そのままサンを連れて行ってしまった。
(拓マネが苦手すぎる……。)
ますますズキズキする頭と重い体を引きずって楽屋に戻りCMの打ち合わせをしたあとドラマの衣装合わせをしてやっと仕事が終わる。
{今日は移動がなかっただけ
身体の疲れはましだったでしょ?}
「……。あぁ。佳マネさんラジオ局だけでいいようにやいろいろ手配してくれたんでしょ?ありがとうね……。」
ううん、と言って車を発車させた佳マネさんは拓がごめんね、あいつも悪いやつじゃないんだけど、と顔をしかめた。
僕が首を振って大丈夫と呟くと、着くまで目をつぶってて、と温かくなるアイマスクを渡される。
その気遣いが嬉しかった。
洋服や身の回りのものをシェアハウスに持っていくために実家に寄ってまた車に戻ると、これ、と見せられたタブレットにはサンの宣材写真。
髪を後ろに束ねてラフなスーツに身を包んだサンはとても綺麗で。
「……いいじゃん。」
素直にそう言いまた目を閉じた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
異世界転移したら豊穣の神でした ~イケメン王子たちが僕の夫の座を奪い合っています~
奈織
BL
勉強も運動もまるでダメなポンコツの僕が階段で足を滑らせると、そこは異世界でした。
どうやら僕は数十年に一度降臨する豊穣の神様らしくて、僕が幸せだと恵みの雨が降るらしい。
しかも豊穣神は男でも妊娠できて、生まれた子が次代の王になるってマジですか…?
才色兼備な3人の王子様が僕の夫候補らしい。
あの手この手でアプローチされても、ポンコツの僕が誰かを選ぶなんて出来ないです…。
そんな呑気で天然な豊穣神(受け)と、色々な事情を抱えながら豊穣神の夫になりたい3人の王子様(攻め)の物語。
ハーレムものです。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる