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社長としてのあなた

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『雫、久しぶり』


って、榊社長が入って来た。


その時、私は…


なぜか心臓が止まりそうになるくらい、ドキッとしてしまった。


細身の長身でモデルみたい、ううん、モデル以上にイケメンのスーツ姿…


これはやっぱり、明らかに反則だ。


何に対しての反則なのか、自分でもよくわからないけど、こんなにドキドキしてる自分が不思議で仕方なかった。


『…あ、お久しぶりです。あの…パンの配達に来ました』


私は、ボックスに入ったパンを差し出した。


ガチガチでロボットみたいな私の仕草に、前田さんがクスッと笑った。


『ありがとう。久しぶりに「杏」のパンが食べられる。前田君、頼む』


『かしこまりました』


前田さんは、パンを持って部屋を出た。


『朝から何も食べる時間が無くて、お腹が空いてる。座って』


スーツの上着をかけてから、榊社長はソファに座った。


『あ、あの…私、仕事中なんで帰ります』


これ以上ここにいるなんて、耐えられない…


『そんなにすぐに帰るのか?やっと…雫の顔見れたのに?』


『え…』


そ、そんなこと、甘い声で言わないで…


『今、新しい店舗の出店計画があって忙しい。なかなか「杏」に行けないから…』


やっぱり、忙しいんだ…


『そんなに忙しくされてて、お身体大丈夫ですか?さっき、朝食も取られてないって…』


『…』


え?


なんで黙るの?


私、何か変なこと言った?


『す、すみません。出過ぎたこと言っちゃいました』


『いや…確かに自分の身体のこと、最近ちゃんと考えてなかったかもな。ジムにも全然行けてない』


『ジムですか?』


『ああ』


だからかな…


細身なんだけど、そんなに細すぎないと言うか、スーツの下は結構引き締まってるんじゃないかなって…


って、なにを想像してるのよ。


私、本当におかしい。
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