あの夜、あなたがくれた大切な宝物～御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く～

当たり前の家族の幸せ

5

『無理だよ。彩葉さんやあなたのお母さんとは交われない。お母さんが死んじゃって、あなた達がやってきて…その時から私の人生は変わったの』


『…』


もう、これ以上、何を言えばいいのかわからなくなった。


麗華の言うように、もう交われないの？


家族にはなれないの？


『でも…』


その瞬間、麗華の憎しみに満ちた顔が、ほんの少しだけ緩んだ気がした。


『安心して。あれからいろいろ考えた。私は…日本を出るわ』


『え！？』


『私、海外にいくの。向こうで好きな絵を描いて暮らすわ』


『麗華…？』


あまりにも突然の告白に驚いた。


『もう、あなた達がいる日本にはいたくないから。向こうにね、大金持ちの友達がいるから、しばらくは彼の別荘でゆっくり暮らすの。アトリエもあるのよ。そこで好きなだけ絵を描けばいいって言ってくれてる。素敵でしょ？だから、この家にあなたのお母さんを呼び戻してみんな仲良く暮らせばいいわ』


『麗華…本気なの？モデルの仕事は？』


『モデルなんて、もう何だか飽きちゃった。今は向こうで絵の勉強をしたいの。ずっと思ってたことよ。itidou化粧品はお父様の弟が継ぐんだし、お父様も賛成してくれるはずだわ。私は…自分の道を見つける。だから何も心配しないで。これからは家族みんなで仲良くして。あなたも慶都さんと…』


麗華…


その目、今の言葉は意地悪じゃない…？


麗華の本当の気持ち？


私に突っかかった言葉、あれは、麗華の中の胸のつかえを吐き出したかっただけなのかも。


本当は優しい子。


私だって知ってたよ。


どうしようもなくキツくて苦しくて、夜中、お母さんを思ってずっと泣いてたこともあったよね。


お父さんに甘えたくても、忙しいからって我慢したり、夢中で好きな絵を描いてる時の顔がすごくキラキラしてたり、私のことは…嫌いといいながら名前で呼んでくれたり…


いっぱい…わかってた。