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あなたの隣で
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控え室には、絢斗のご両親、私の両親も待機してくれてる。
式が始まったら、ホテルの副総支配人を始め、数人のホテルマンが参列してくれることになってる。
山内さん、茅野君も。
そして、実は、工藤様も…
少しだけ式を見にきてくれるらしい。
あれからしばらくご自宅に戻っていたけど、今はまた、新しい作品を執筆するためにグレースホテル東京に宿泊していた。
昨日、中庭に呼ばれて、久しぶりに2人きりで話をした。
中庭の桜も満開を迎えてとても綺麗だった。
『明日だね、結婚式。本当に…おめでとう』
『工藤様、ありがとうございます』
『1年前、ここで君と話した後、すぐに書いていた小説が完成して発表したけど…』
『はい、素晴らしい作品でした。すぐに全部読ませて頂きました』
『ありがとう…だけど、次の作品がどうしても書けなくてね』
『仰っていたホテルを題材にした?』
『ああ…書きたくても…書けなかった』
工藤様…
『君を忘れるためにいろいろ努力したつもりだった。ホテルを出て自宅にいる時も、なるべく小説のことだけ考えるようにしたよ。君が頭に浮かべば、何かして紛らわせた。だけど…難しいね。心底惚れた女は…そう簡単には忘れられないんだって…初めて知ったよ』
そう言って、工藤様は桜を見上げた。
『でも、またここに戻ってきたのは…君の結婚を噂で聞いたから…』
『…私の結婚を?』
『君は、結婚して他の男の奥さんになる。そんな幸せになるべき人をいつまでも俺なんかが想っていたら…君の重荷になるだけだ。そんなかっこ悪い生き方は…したくないからね。俺は、君の幸せを…』
工藤様は桜から視線を外し、斜め後ろにいた私の方に振り返った。
『ずっとずっと願っているよ。あの彼となら、君は絶対に幸せになれる。俺は、また…最高のミステリーを書こうと思う』
式が始まったら、ホテルの副総支配人を始め、数人のホテルマンが参列してくれることになってる。
山内さん、茅野君も。
そして、実は、工藤様も…
少しだけ式を見にきてくれるらしい。
あれからしばらくご自宅に戻っていたけど、今はまた、新しい作品を執筆するためにグレースホテル東京に宿泊していた。
昨日、中庭に呼ばれて、久しぶりに2人きりで話をした。
中庭の桜も満開を迎えてとても綺麗だった。
『明日だね、結婚式。本当に…おめでとう』
『工藤様、ありがとうございます』
『1年前、ここで君と話した後、すぐに書いていた小説が完成して発表したけど…』
『はい、素晴らしい作品でした。すぐに全部読ませて頂きました』
『ありがとう…だけど、次の作品がどうしても書けなくてね』
『仰っていたホテルを題材にした?』
『ああ…書きたくても…書けなかった』
工藤様…
『君を忘れるためにいろいろ努力したつもりだった。ホテルを出て自宅にいる時も、なるべく小説のことだけ考えるようにしたよ。君が頭に浮かべば、何かして紛らわせた。だけど…難しいね。心底惚れた女は…そう簡単には忘れられないんだって…初めて知ったよ』
そう言って、工藤様は桜を見上げた。
『でも、またここに戻ってきたのは…君の結婚を噂で聞いたから…』
『…私の結婚を?』
『君は、結婚して他の男の奥さんになる。そんな幸せになるべき人をいつまでも俺なんかが想っていたら…君の重荷になるだけだ。そんなかっこ悪い生き方は…したくないからね。俺は、君の幸せを…』
工藤様は桜から視線を外し、斜め後ろにいた私の方に振り返った。
『ずっとずっと願っているよ。あの彼となら、君は絶対に幸せになれる。俺は、また…最高のミステリーを書こうと思う』
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