上 下
114 / 134
友情でつながる未来

4

しおりを挟む
萌佳は、顔を両手で覆ってまた泣いた。


『だったら…茅野君には、本当に申し訳ないことをしたよね。でも…私は萌佳を許すよ。萌佳が総支配人を好きなのに、それを知らなかったにせよ、嬉しそうに萌佳に同居のこととか話して。逆の立場なら、たまらないよ。苦しくて泣きたくて、どうしようもなかったと思うから…』


萌佳は私を見て、ぐちゃぐちゃに濡れた顔を更にまた涙で濡らした。


もう、涙が枯れてしまうじゃないかってくらい、いっぱい泣いた。


『ごめんなさい…本当にごめんなさい…一花、ごめん…ごめん…』


『…茅野君には一緒に謝ろう。茅野君なら、絶対に許してくれるよ』


『…わかった…』


私は一花の頭を撫でて、そして、笑顔で言った。


『ずっと苦しませてごめんね。これからは前だけ向いて、励まし合って仕事頑張ろ』


萌佳も泣きながら笑顔を作って、何度もうなづいていた。 


私は、萌佳とまた仲良く出来ることに心の底から嬉しかった。


溢れ出す涙は、友情の証。


きっと2人の未来は明るい…


そう信じずにはいられなかった。


萌佳は、すぐに茅野君にもちゃんとわけを言って謝った。


思った通り、茅野君は優しく萌佳を許した。


本当に、素晴らしい青年だと思った。


私は、絢斗にも全てを話した。


萌佳が、総支配人にも謝りたいって言って、ホテルの会議室で3人で話すことになった。


『総支配人、本当に…いろいろと申し訳ありませんでした』


『…島田さんが一花と茅野君にしたことは、本当なら許されることじゃない。もし大切な2人に何かあったら、私は…』


絢斗…


『はい、私、どうかしてました。本当に…2人には取り返しのつかないことをしたと思ってます。まずは警察に行って全て話して…』


『待って!茅野君は許してるんだよ。もちろん私も。当然、被害届も出さないから』
しおりを挟む

処理中です...