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もう1つの桜の前で
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そう、どんなに嬉しくても、私は…
総支配人が…
絢斗が、好きなんだ。
でも、絢斗は、私に彼女役を頼んだだけで、きっとそこに深い意味は無いんだとわかってる。
わかってるけど…
わかってるんだけど…
『ただ…?』
茅野君は不安そうな視線を私に向けた。
その視線に少し躊躇しながらも、私は言った。
『…私ね。今、好きな人がいるの…』
数秒の沈黙。
『そっか…そうなんですね。一花さん、好きな人…いるんですね』
一生懸命言葉にしてくれた茅野君に申し訳ない気持ちになった。
『うん、ごめん…』
『そんな…謝らないで下さい。彼氏がいるんじゃないかとか、好きな人がいるんじゃないかとか、ちゃんと考えてはいましたから。一花さんみたいな素敵な女性に相手がいないなんておかしいですよね。でも…それでも、今日、どうしても告白したかったんです』
私は、少しだけ考えてから続けた。
『茅野君。今、私、胸がいっぱい。すごく混乱してて上手く何も言ってあげられない…ごめんね。でもね、今日は本当にありがとう。明日からまたホテルに来て下さるお客様のために、一緒に頑張りたいって…思ってるよ』
絢斗のことが好きだとも言えず、突然過ぎて、自分が茅野君をどう思ってるのかもわからなくて…
すぐには自分の気持ちを伝えることが出来なかった。
かなりずるいよね、私。
ごめん…
茅野君はニコッと笑って、でも、ちょっと寂しそうな顔をしてうなづいた。
『…また、良かったらご飯だけでも』
私は、その絞り出すように言ってくれた誘いにも上手く返事が出来なくて。
茅野君の「送ります」の言葉にさえ「1人で大丈夫だから…」って、素っ気なく返してしまった。
2人ともいつもの調子じゃ無くなってしまって、私は戸惑いながら手を振ってその場から立ち去った。
後ろを振り向けずにいたから、茅野君がどんな顔をしてるのかわからない。
気づけば私、いつもの2倍のスピードで足を進めてた。
マンションに着いてシャワーを浴びたら、わけがわからず涙が出てきて…
少し腫れてしまった目を無理やり閉じて、何も考えないようにしてベッドで静かに眠った。
総支配人が…
絢斗が、好きなんだ。
でも、絢斗は、私に彼女役を頼んだだけで、きっとそこに深い意味は無いんだとわかってる。
わかってるけど…
わかってるんだけど…
『ただ…?』
茅野君は不安そうな視線を私に向けた。
その視線に少し躊躇しながらも、私は言った。
『…私ね。今、好きな人がいるの…』
数秒の沈黙。
『そっか…そうなんですね。一花さん、好きな人…いるんですね』
一生懸命言葉にしてくれた茅野君に申し訳ない気持ちになった。
『うん、ごめん…』
『そんな…謝らないで下さい。彼氏がいるんじゃないかとか、好きな人がいるんじゃないかとか、ちゃんと考えてはいましたから。一花さんみたいな素敵な女性に相手がいないなんておかしいですよね。でも…それでも、今日、どうしても告白したかったんです』
私は、少しだけ考えてから続けた。
『茅野君。今、私、胸がいっぱい。すごく混乱してて上手く何も言ってあげられない…ごめんね。でもね、今日は本当にありがとう。明日からまたホテルに来て下さるお客様のために、一緒に頑張りたいって…思ってるよ』
絢斗のことが好きだとも言えず、突然過ぎて、自分が茅野君をどう思ってるのかもわからなくて…
すぐには自分の気持ちを伝えることが出来なかった。
かなりずるいよね、私。
ごめん…
茅野君はニコッと笑って、でも、ちょっと寂しそうな顔をしてうなづいた。
『…また、良かったらご飯だけでも』
私は、その絞り出すように言ってくれた誘いにも上手く返事が出来なくて。
茅野君の「送ります」の言葉にさえ「1人で大丈夫だから…」って、素っ気なく返してしまった。
2人ともいつもの調子じゃ無くなってしまって、私は戸惑いながら手を振ってその場から立ち去った。
後ろを振り向けずにいたから、茅野君がどんな顔をしてるのかわからない。
気づけば私、いつもの2倍のスピードで足を進めてた。
マンションに着いてシャワーを浴びたら、わけがわからず涙が出てきて…
少し腫れてしまった目を無理やり閉じて、何も考えないようにしてベッドで静かに眠った。
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