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総支配人のお願い

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私は、胸の前でクロスされた腕を力を込めて外した。


そして、振り返って、絢斗にもう一度言った。


『私は、確かに自分に自信は持てないです。可愛くもないです。だけど…絢斗に本当に彼女がいないなら…それが本当だったら、こ、こんな私で良かったら、お母様のために力にならせて下さい』


ちょっと、私、何言ってるの?


自分から力にならせてなんて。


本当にこんな私に絢斗の彼女役なんて出来るの?


そんなだいそれたこと。


きっと…


嘘でも可愛いって、絢斗にそう言ってもらえたこと、私、すごく嬉しかったんだ。


だけど、恥ずかしくてつい反抗的な態度を取ってしまって。


自信が持てないのは本当のことで、すぐにどうにか出来るレベルのことじゃない。


でも、そのことと、絢斗のお母様を安心させることは全然別のことだよね。


だから私、人としてそのお願いを叶えてあげたいって…そう思ったんだ。


絢斗は、最初少し驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になって、私に向かって「ありがとう」とポツリと言ってくれた。


首を横に振って答える私。


『一花。1度、母に会って欲しい。きっと喜ぶ』


『お母様、本当に私で安心して下さいますか?』


やっぱり不安だよ。


『当たり前だ。一花なら必ず安心してくれる。だから君に頼んだ』


そんな風に言ってくれる絢斗の真意が、私にはさっぱりわからないけど…


でも、とにかく今は自分の好きな人の頼みを聞いてあげたいと、ただ素直にそう思った。


『一花。それともう1つ。俺達はこんなに近くに住んでるんだ。だったら、君もここに一緒に住めばいい。その方が、母も、もっと信じてくれるし安心する』


えっ、一緒に住むって、絢斗、何言ってるの?


この豪華なマンションに私が引っ越してくるってこと?


しかも、同じ部屋に一緒に住むってこと?
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