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家族の本当の思い

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「えっ…」


「私にも…色々な思いがあったんだよ。だけどね、やっぱり、家族になりたかったから。何があっても絆で結ばれてる、仲の良い、大切な家族に」


みんながそれぞれの思いを吐露した。


ずいぶん長い間、口にしてこなかった思い。


それを今ようやく言葉にできたんだ。


「本当なら、もっと早くにこうして話すべきだった。全部、私が悪いんだ。工場が大変で、そのことばかりで。いつも桜の木に誓っていた、どんなことがあってもあきらめないって。なのに、ずっと『家族』になることをあきらめていた…」


お父さんは肩を落とした。


「あなただけが悪いわけじゃないわ。私も…同じ。ダメな母親だったわ」


確かに、もっと前からずっと笑い合っていられたら…どんなに良かっただろう。


でも、きっと、今からでもいい…


今からでも全然遅くないから。


「とにかく、今は龍聖君のおかげで工場経営は十分過ぎるくらい潤っている。これからはもっと良いものを作っていきながら、今までの何倍も家族を大切にする。約束するよ。そうだ、琴音が海外から帰ってきたら、みんなで家族旅行でもしよう」


「そうね、それはすごく良い考えだわ。4人で旅行なんて1度もしたことなかったものね。ぜひ行きたいわ。どこがいいかしらね」


「ちょ、ちょっと、勝手に決めないでよ。私の都合も聞かないで」


「涼香姉さん、私も行きたいよ。家族みんなで旅行に。行くなら春がいいな。綺麗な桜が咲く季節に。私、楽しみにしてるから、ね、いいでしょ?  涼香姉さん」


「…し、知らないわ。今、そんなこと言われても…」


「涼香が行かないなら旅行は無しだ。そうだ、涼香が好きだった水族館にも行こう」


「行きたいわ~水族館なんて何十年ぶりかしら」


「私も行きたい!  久しぶりにイルカのショーとか見てみたいな」


「私が水族館を好きだったなんて、いったいいつの話してるのよ。かっ、勝手に…決めないで…」


涼香姉さんは、負の感情を少しだけ消して…そっと涙を流した。


こんな表情、初めて見た。


やっぱり、美人さんの涙はものすごく綺麗なんだなと思った。
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