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好きだからこそ~俊哉side~

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「そんな…そんなこと…」


本当に?


琴音ちゃんがまさか…


「あら、信じられない? 私は琴音と龍聖さんの両方から聞いたの。これは真実。だからね、俊哉さんがちょっと頑張れば、琴音はあなたのもの。あの子のことが嫌いじゃないならお願い。琴音を契約結婚みたいなバカな世界から連れ戻してちょうだい」


2人が偽物の結婚生活を送ってることが事実なら、琴音ちゃん、君は…幸せなのか?


「正直、僕は琴音さんが好きです。今でも…忘れられない。でも、涼香さんの話を…そのまま信じることはできません」


予想もしていなかった展開に頭が回らない。


「俊哉さん、あんな子が好きなの? 変わってるわね。まあいいわ。とにかく、あなたが琴音を契約結婚から救い出して幸せにしてあげて。そしたら私は…」


「…?」


「何でもないわ。俊哉さんなら大丈夫だから。よろしくお願いしますね」


それから、涼香さんはビールを追加し、1人で飲み続けた。


黙って考えている僕とは対象的に。


確かに僕は、今でも彼女が好きでたまらない。


もし、これが本当に契約結婚なら、あの人から琴音ちゃんを奪えるのか?


いや…


世界的に有名な鳳条グループの御曹司と比べたら、僕なんて…


何もかもがあまりにも違い過ぎる。


この人の言葉で、一気に戸惑いや不安が押し寄せ、冷静に考える余裕はどこかへ消え失せた。


琴音ちゃん…


僕は、ただ君の近くにいたいだけなんだ。


笑顔を見て、声が聞けたら…


そう思って毎日過ごしてきたのに。


変な動揺を隠すため、僕は涼香さんには気づかれないよう何度も深呼吸を繰り返した。


必死に気持ちを鎮めようと試みる。


でも、僕の心は全く言うことを聞いてくれなかった。


彼女を救う。


彼女を守る。


彼女を幸せにする。


もちろん、できることならそうしたい。


あの時、琴音ちゃんが可愛すぎてキスした唇の感触。


なぜか今それがよみがえり、どんどん心がうづいてく…


僕は、いったいどうすればいいのか?


解決策が何もわからず、ただ1人途方に暮れるしかなかった。
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