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悲しい結末と嬉しい誘い

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「あ、あのさ。私なんかをデートに誘って……瑞って、彼女とか……いないの?」


口から自然に言葉が飛び出す。
こんなにも直球にプライベート過ぎる質問をするなんて。このタイミングで聞くことが正解なのかどうかわからないけど……どうしても気になってしまった。


もしかしたら、彼女はもちろん、ガールフレンドだってたくさんいるかも知れない。
……っていうか、結婚してたりするかも知れない。その可能性だって十分あるんだよ。
なのに、私、本当に聞いて大丈夫なの?
心の準備はできてるの?


『いない』


「えっ……」


『彼女はいない。だから、お前を誘ってる』


瑞……本当に?   
本当に、相手はいないの?
今の瑞に彼女がいないなんて信じられないよ。


でも、もし「いる」って答えが返ってきたら、私の気持ちは……どう動いたんだろう?


「あ、うん。そっか、彼女さんはいないんだ」


『ああ。愛莉は?   彼氏、いるの?』


うわっ、私も聞かれた。
まさか、今日フラれたばかりだなんて言えない。


「い、いないよ。彼氏なんか」


この答えに、間違いはない。


『なら、2人でどっか遊びに行こう』


これは現実?
そんなこと瑞に言われるなんて、正直、思ってもみなかった。
ものすごく甘い声で誘われて、胸がキュンとする。
一瞬にして体中が火照るのを感じた。


瑞は、今の私の寂しい気持ちを全部わかってくれてるの?
そんなはず……ないよね。


「……」


『どうした?   嫌なのか?』


「う……ううん、あ、ありがとう」


つい瑞の誘いを受けてしまった。
本当に……良かったのかな?
デートだなんて、私達は付き合ってるわけじゃないのに。


『決まり。どこか行きたいとこある?』


「あっ、うーん、私は……どこでもいいよ。瑞は?」


『じゃあ、プールにしよう。屋内プール』


嘘っ、プ、プール?! 本気で言ってる?
私は、突然の「デート」と「プール」のワードに、かなり動揺してる。


「さすがにプールはちょっと……」


『どこでもいいって言っただろ?   プールに決まり!   愛莉、次の休みはいつ?』


瑞のペースにハマってどんどん話が進んでいく。
プールなんて何年かぶりだし、水着になるのも恥ずかしい。


でも……
何だか今、瑞にすごく救われてる気がしてる。


確かに、私達は恋人同士ではない、ただの幼なじみ。それでも、こうして話してると、あの人と話す何倍も何百倍も楽しい。正直、こんなにもワクワクしてる自分に会うのは久しぶりだった。
私は、ずっと忘れてた感情をひとつ……瑞のおかげで取り戻させてもらえたんだ。


きっと「失恋」という闇の中に落ちずに済んだのは、幼なじみのあなたがいたから。
優しい瑞と再会できて、本当に良かったと……心から感謝した。
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