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脅迫状の犯人の告白

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『僕も情けないよ。先生が中島さんを脅してたの知っても何も出来なくて…ただ、中島さんが帰るまで学校に残るくらいしか…』


『私が誰にも言わないでってお願いしたからだよ。気持ちがたまらなくなって、つい話してしまって…小川君を苦しめて。なのに、私のことかばってくれて…本当に…ごめんね』


演劇部の3人の中に流れる「友情や愛情」を…佐々木先生はぐちゃぐちゃに壊そうとしたんだ。


本当に…許せない。 


久しぶりに怒りで全身が震えた。


『エーデルワイスの花を描いたのは…中島さんの「心の叫び」だったんだね。誰か…助けてって』


凛音が言った。


『…花言葉…ご存知だったんですね』


『僕じゃない。僕の大切な人が教えてくれたんだよ。とにかく、君が先生を突き落としたんじゃないことはわかった。先生が階段から落ちたことと脅迫状は別だったとハッキリした。でも、やっぱりこのタイミングで起こったことは気になるよね。先生は自分で落ちたのか、それとも…まだこの先に何か「別の真相」があるのか』


『うん。あの日、中島さんが部室を出た後の先生の行動が気になるよね』


『ああ。1度…先生に会ってみよう。何も知らないフリをしてお見舞いに』


『だったら、私も一緒に行きます。演劇部の部長として、そして、凛音様に依頼した者として…この事件に最後までお付き合いさせて下さい』


赤田さん、急に強くなったみたいで頼もしい。


『…大丈夫?』


凛音が優しく聞く。


今、普通なら佐々木先生には会いたくないよね。


信頼していた先生の「最悪な1面」を知ってしまったから…


こういう気遣いが出来る凛音…やっぱりカッコいい。


『はい、私は大丈夫です。心配して下さりありがとうございます。演劇部として、立派に演技してみせます』


赤田さんがニコッと微笑んだ。


『では頼んだよ。あと…小川君は、中島さんのことを頼むね。ずっと側にいてあげて…』


『はい!絶対に守り抜きます』


中島さんと小川君にも少し笑顔が戻った。
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