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脅迫状の犯人の告白

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『佐々木先生はどう?』


優愛高校の演劇部、部室には赤田さんがいた。


今日は…さすがに練習は「中止」になったらしい。


『凛音様。ついさっき教頭先生から話がありました。先生…体を強く打って「1週間」は入院になるそうです。骨折は無かったみたいですけど…』


『1週間も…でも命に別状はないみたいで良かった…赤田さんもびっくりしたよね…』


私が言うと、赤田さんはうなづいた。


『先生は誰かに「突き落とされた」んでしょうか?文化祭での劇は…どうしたら…』


今にも泣き出してしまいそうで、私は赤田さんの肩に手をやった。


悲しいイメージがほんの少しだけ伝わってくるけど、何かを隠してるような嫌な感じはしない。


『落ち着いて…深呼吸してみてね。佐々木先生は自分で階段から落ちたと言ってるんだし…きっと…すぐに凛音が犯人を見つけてくれるから。今はもう少しだけ様子をみましょ』


そんなことしか言えない自分が情けなかったけど、私は…彼女を出来るだけ安心させてあげたかった。


『実は…さっきここに来る前に演劇部の数名に会って話を聞いたんだけど、佐々木先生が「ある部員の女子」と話しているのを、つい最近見た…と言ってる子がいたんだ』


『佐々木先生とですか?』


『ああ』


『でも、佐々木先生は誰とでも親しげに話しますよ』


『…なんていうか…いつもとは雰囲気が違ったと言ってた。部室に忘れ物を取りに戻ったら、楽しそうに…というよりは、先生が厳しい目付きでその部員を叱っているみたいに見えたって。だから、部屋には入らずに帰ったと…』


凛音が、言葉を丁寧に赤田さんに伝えた。


『そんな…確かに演劇に対して厳しい時はありますし、私も部長としては怒られたりします。でも…特に女子に対して叱ったり…佐々木先生はそこまで厳しい人じゃないです。いったい誰なんですか?その部員っていうのは?』
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