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召喚者達

34.

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 パンタン山脈。
 此処に闇竜ヴァルザールが飛来している事に端を発した魔物暴走スタンピードが拡がりつつある。
 ギルドからって言うより王宮からと言った方がいいか?「暴走を食い止めよ」という依頼を受けて、我々『地上の星』は久々に5人のフルメンバーで挑む事にした。

「って具合に拡がってんだ。だからこの辺で食い止めネェとかなりヤバい」

 地図の1点を指し示す義賊マーキュリー

「もう一歩先じゃな。そこじゃケミの村は救えん」
「手遅れだろう?その先はサナク平原だ。広過ぎるんだよ。カバーしきれん」
 賢者サターンが異を唱えるがマーキュリーは譲らない。
「そこは何とかするわ。サターンも広域攻撃呪文はあるし。何処ぞのテイマーよりもね」
 聖女ビーナスもサターンを支持する。
「やっぱ魔法戦士ジュピター精霊魔法使いガイアがいないのは、こういう時に地味に痛いね」
 マーキュリーの愚痴はそれこそ何度も聞いた。
「今更言うな。コッチの都合の良い話ばかりで無い事は今迄だってあったろうに」
 マーズの声も苛立っている?
 それに気付き一息入れてみる。
 ふう。全く…。

 とは言えジュピターとガイアが居ないのは本当に痛い。ガイアの精霊魔法は殆どが広域呪文だし、ジュピターは魔法剣で容易く瞬殺していける。火力攻撃力が半減しているのだ。
 神竜ランクAとかならば絶大な効果を期待出来る盾役重戦士プルートは広範囲の魔物暴走スタンピードでは小さな壁に過ぎない。

 しかも本来の依頼は暴走鎮圧では無くて闇竜の退治だ。

「それにしても歴史バックボーンとして分かっていたはずなのにのぅ。我等の思考は固かった様じゃ」
「そうね。まさか『公国動乱』を収め切るなんて。リスティア皇女の手腕もだけど、帝国の召喚者プレイヤーの動きには感嘆するわ」
「ある意味希望が持てる。我等の動きで歴史はどうとでも変えられると知ればな」
「確かにね。お陰で思い出したよ。確か世界レムルに来る時に『世界を変えよ』って言ってた事をね」

 歴史バックボーンでは、闇竜の襲撃で2つの村と1つの街が壊滅した。そして国境守備の要であるリヒター辺境伯ミゲル6世卿を配下の騎士団と共に失っている。無論闇竜も傷付いた身体を休める為、おそらくは魔界と呼ばれる場所?へ去ってはいるが、辺境伯不在の隙をついてアマレゴ王国に攻め込まれる事になる。

 撃退は出来た。
 元々アマレゴとは地力が違う。だが国力を消耗するだけの無意味とも言える戦乱の為、ベルン王国は回復にかなりの時間を要したのだ。
「コレを改変出来るのならば、召喚者プレイヤーの本懐と言えるな。ミズル公国動乱が改変出来て此方が出来ぬ道理は無いからな」

 我々はサナク平原へ向かう。
 此処で魔物暴走スタンピードを食い止め、そのまま闇竜退治へと!

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 再び皇都です。
 新三公誕生という慶事も重なり、先の竜征伐と動乱平定の功を以て陞爵される事になりました。

 男爵?
 下位爵位だけど准が取れただけって訳にはいかない。この爵位の差も側から見る以上にデカい。

 で、皇都に来たからには法皇家に顔を出しとかないと。その後で婚約者カミーユの実家ね。寄るとこ増えたなぁ。

「陞爵なんて、オレ、そんな大した事…」
「してるわ。レッサーと言っても普通は熟練パーティで挑むものよ。ソロで複数討伐。それも瞬殺。もうバカげたと言っていい快挙。諦めなさいな。それに悪いけど私の一族なの。出来れば伯爵位まで来て欲しいわね」
「勘弁してくださいよ、法皇様キティさん
 マジでゲンナリしてるよ、オレ。
 表情もだけど雰囲気もダダ漏れだったんだろう。法皇様キティさん爆笑。
「あっははは。うん、まぁ、多少同情するけど、持っている才に見合った地位と役割を期待したいのよ。貴方のお母様メーヴは全てを蹴ってしまったけれど」
「『滅びの魔女母さん』みたいな才は有りませんよ?」

 寧ろあれば、同じ様に全てを拒否して引き籠れたかもしれないなぁ。残念。何せ、世界レムルをも支配し得る実力。『滅びの魔女』の名は伊達じゃないから。皇帝陛下ですら魔女母さんの顔色を伺ってたみたいだし。

「で、まだ拠点を皇都に移すつもりは?」
「ありませんね。エラムが性に合ってます」
「ま、いいか。北の辺境に貴方がいるのは割と助かってるから」

 アンバー辺境伯の領地は帝国北方の国境だ。コリコス王国と接している。
 そのコリコスは親帝国派の王家が治めていて交易も盛んだ。ベルン王国と違い帝国は周りを属国扱いはしていないし。
 とは言え国同士の関係なんて何時どう転ぶか分かったもんじゃない。国境に強兵を置くのは当たり前の話だ。トライドルには国境守備の砦があるし駐留国軍たる近衛騎士団はトップクラスの実力を誇るって聞いた。またエラムには辺境伯最強の近衛師団がいる。

 で、今現在のオレは辺境伯領に住む法衣貴族という立場。伯から要請があれば貴族の義務として参戦しなくちゃなんない。つまりオレ個人と従魔を戦力として計算出来る。まぁ、冒険者としての依頼とかで遠く離れていれば厳しいかもしんないけど、ちょっとした依頼ならば領主権限で「待ち」に出来る訳だし。
 しかもアンバー辺境伯も皇女派。
 仮に内戦状態になっても辺境伯はオレを当てに出来るって見るのが妥当なトコ。
 オレもリスティア皇女の派閥の方が居心地いいし、アンバー辺境伯も豪放奔放な方だ。このエラムから出るつもりはないからwin winの関係だよ。

 法皇様キティさんは確かに国防には関係ないけど帝国の重鎮だから無関心ではいられない。オレとあんまり歳変わらないのに、やっぱ国家の要職にある人は違うね。

「では、それで」
「あら?もう行くの?」
「もう一箇所、行くとこありまして」
「ふ~ん、婚約者カノジョに会いたいと」
「皇都に来たら顔は出さなきゃ。それ位の分別位は流石に持ってます」

 爆笑しつつ法皇様キティさんは見送ってくれた。好意的なのは嬉しいけど、多少の腹芸は必要だから疲れるんだよね。

 だから婚約者カミーユに癒やしてもらおうと思うのは、そう罰当たりな事じゃないと思うんだ。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「本当に助かっているのよ、ロディ。貴方が辺境にいる事。皇女派である事。我が一族である事」
 




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