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公国動乱
30.
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「ようこそ、クロノ准男爵。当家に卿を迎える日が来ようとはね」
「事情もありましてね。後、ガスター侯爵相続、おめでとうございます」
オレが訪ねたのは、家督相続したばかりの新ガスター侯爵エミリオ様。
「さて、本日の赴きは例の公国動乱の件だと聞いているが」
「はい。その件についてリスティア皇女殿下の使者としてまかり越しました」
国務大臣補佐官にルキアル皇子を推す。
無能の補佐官ジョン=マルク・ミズル公子を除いて、ついでにミズル公爵家も失墜してもらう。代わりにガスター侯爵を陞爵して三公の座に。
皇女って言うより軍師たる『紫光の魔女』の企み。オレの提案をより具体的にしてもらった物。
「正気?いや、本気かい?」
「はい。皇女派はそのつもりで動いています」
「だが、それでは殿下が当家の補佐になってしまわないか?」
「新人の大臣と言う事で『宰相』位を復活させるんです」
「すると政務の中心は宰相に、国務大臣は式典や慣例を司る形に、そう国政を変えたい訳だ」
「ルキアル殿下に、今少し前に出て欲しいんですよ。それがリスティア皇女殿下の願いです。そして、あの方を補佐し並び立つ事をガスター公爵にお願いしたい、と」
ここだけの話、オレの提案だけどそんなに政治に明るい訳じゃ無い。魔女さんの受け売りもあるけど、この「公国動乱」ってゲームの背景、つまり帝国の歴史として語られている事なんだ。そこはホラ、オレってヘビーユーザーだし、「世界の知識」持ちだし。
アンさん達は、オレが魔女=賢者の息子だからそれなりに博識なんだって理解してるみたい。実に都合のいい解釈で助かってる。
まぁ多少歴史改ざんになるけど。
尤もオレの存在が既にイレギュラーな訳で、考えてもしょうがないよね。
改ざん。
この動乱、本来なら長引いてベルン王国・ミリシア王国連合軍に攻め込まれて後手に回る事になる。そう、戦争のキッカケにもなった動乱だったんだ。まさかそれを口に出す訳にもいかないし、長引かせるのもタチ悪いしで、オレも目立つのは本意じゃないんだけど、表立って動く事にした。
うん。提案だけで済ますつもりだったんだよ。
ココ、ガスター侯爵家にも四天騎士の誰かに行ってもらうつもりだったんだ。
でもアンさんがオレが行った方が良いって。
オレが頭を下げて頼み込む事に意味があるって言ってさ。こうして動く事にしたんだ。
確かにオレに貸しを作り尚且つ目の上のタンコブたる三公を降ろす事はガスター侯爵家の溜飲を下げる事になる。エミリオ様は前侯爵程オレに対して含む処はなかったけど、それでもオレは煮湯を飲まされた因縁の相手だ。
その思惑も分かった上だとは思う。
「分かった。その提案に乗ろう。改めて聞くが、リスティア皇女殿下及びその派閥は我が家を三公に伸し上げる事に…」
「同意してその為に動きます。最終的にはルキアル皇子殿下を宰相位に」
「ああ。フム、家督を次いで直ぐ難題を持ち掛けられるとはね。だが此れは貴族の本懐。喜んで君等の企みに加担しよう」
オレはエミリオ様としっかり握手した。
その足で、そのまま法皇家へ向かう。
「ガスター侯爵を三公に挙げる?また思い切った事を」
事情や状況を説明した時、キティアラ法皇様は少し呆れていた。
「ルキアル皇子殿下を政務の中心に置く為には、ミズル公爵家は邪魔です。しかも次期公爵はあまりにも酷い人材です」
「それは同意するけど。でも少し性急に感じるわ。焦る理由を話して貰おうかしら」
この人相手に腹芸は無理だよ。
「推測の域を出ませんけど、この動乱の裏。いや、もっと前。リスティア皇女殿下暗殺未遂の時から得体の知れない敵対相手の存在を感じます」
「それってベルン王国の仕掛け?」
「どうでしょう。最近はベルンよりミリシアの方が露骨な嫌がらせをしてるって聞いてますけど」
法皇様の手がはたと止まる。
コーヒーカップの上で所在なさげに手を廻すと
「それってアン?大分世界の情勢に明るくなってきたのね」
「個人的にはどうでもいい事なんですけどね」
ホント、面倒くさい。
「まぁ、帝国貴族としての義務位は果たしとかないと。年金貰う身分ですから」
「ふ~ん、それを気にする訳ねぇ。少し意外」
オレってどう思われてんだろ?
それはさておき、世界の知識…いや歴史か?この動乱の裏にいるのは実はやっぱりベルン王国。ミリシア王国はベルンの思惑に乗せられたに過ぎない。でも2国に挟撃され、またベルンにいつの間に操られる形となった国務大臣のローナン卿の失策もあり帝国はミリシアに国土を割譲させられる屈辱を味わってしまう。ゲーム内で帝国とベルンが拮抗し、ミリシアが第3国としてのし上がって結果三国志の様相の情勢になっていたんだ。
だから記憶より現帝国の国土が広い事の違和感。解消出来た事はスッキリするんだけど、コレで確実に歴史の本筋から離れていく。その事の自問自答を何度も繰り返した。
開き直る気になったのはゲームのオープニングの一節。
「世界を変えよ」
そう言われてオレ達は世界に送り込まれた。イレギュラーな存在の筈の異世界人を導入する意味。
思いっきり変えてやっからな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
とある国の、貴き者の居館にて。
「そろそろ邪魔な存在になってきましたね」
「では?」
「消してしまいましょう。貴方達なら可能ですよね?」
「無論。我等に消せぬ者等存在しない。どの様な存在、どの様な魔物を連れていても」
「事情もありましてね。後、ガスター侯爵相続、おめでとうございます」
オレが訪ねたのは、家督相続したばかりの新ガスター侯爵エミリオ様。
「さて、本日の赴きは例の公国動乱の件だと聞いているが」
「はい。その件についてリスティア皇女殿下の使者としてまかり越しました」
国務大臣補佐官にルキアル皇子を推す。
無能の補佐官ジョン=マルク・ミズル公子を除いて、ついでにミズル公爵家も失墜してもらう。代わりにガスター侯爵を陞爵して三公の座に。
皇女って言うより軍師たる『紫光の魔女』の企み。オレの提案をより具体的にしてもらった物。
「正気?いや、本気かい?」
「はい。皇女派はそのつもりで動いています」
「だが、それでは殿下が当家の補佐になってしまわないか?」
「新人の大臣と言う事で『宰相』位を復活させるんです」
「すると政務の中心は宰相に、国務大臣は式典や慣例を司る形に、そう国政を変えたい訳だ」
「ルキアル殿下に、今少し前に出て欲しいんですよ。それがリスティア皇女殿下の願いです。そして、あの方を補佐し並び立つ事をガスター公爵にお願いしたい、と」
ここだけの話、オレの提案だけどそんなに政治に明るい訳じゃ無い。魔女さんの受け売りもあるけど、この「公国動乱」ってゲームの背景、つまり帝国の歴史として語られている事なんだ。そこはホラ、オレってヘビーユーザーだし、「世界の知識」持ちだし。
アンさん達は、オレが魔女=賢者の息子だからそれなりに博識なんだって理解してるみたい。実に都合のいい解釈で助かってる。
まぁ多少歴史改ざんになるけど。
尤もオレの存在が既にイレギュラーな訳で、考えてもしょうがないよね。
改ざん。
この動乱、本来なら長引いてベルン王国・ミリシア王国連合軍に攻め込まれて後手に回る事になる。そう、戦争のキッカケにもなった動乱だったんだ。まさかそれを口に出す訳にもいかないし、長引かせるのもタチ悪いしで、オレも目立つのは本意じゃないんだけど、表立って動く事にした。
うん。提案だけで済ますつもりだったんだよ。
ココ、ガスター侯爵家にも四天騎士の誰かに行ってもらうつもりだったんだ。
でもアンさんがオレが行った方が良いって。
オレが頭を下げて頼み込む事に意味があるって言ってさ。こうして動く事にしたんだ。
確かにオレに貸しを作り尚且つ目の上のタンコブたる三公を降ろす事はガスター侯爵家の溜飲を下げる事になる。エミリオ様は前侯爵程オレに対して含む処はなかったけど、それでもオレは煮湯を飲まされた因縁の相手だ。
その思惑も分かった上だとは思う。
「分かった。その提案に乗ろう。改めて聞くが、リスティア皇女殿下及びその派閥は我が家を三公に伸し上げる事に…」
「同意してその為に動きます。最終的にはルキアル皇子殿下を宰相位に」
「ああ。フム、家督を次いで直ぐ難題を持ち掛けられるとはね。だが此れは貴族の本懐。喜んで君等の企みに加担しよう」
オレはエミリオ様としっかり握手した。
その足で、そのまま法皇家へ向かう。
「ガスター侯爵を三公に挙げる?また思い切った事を」
事情や状況を説明した時、キティアラ法皇様は少し呆れていた。
「ルキアル皇子殿下を政務の中心に置く為には、ミズル公爵家は邪魔です。しかも次期公爵はあまりにも酷い人材です」
「それは同意するけど。でも少し性急に感じるわ。焦る理由を話して貰おうかしら」
この人相手に腹芸は無理だよ。
「推測の域を出ませんけど、この動乱の裏。いや、もっと前。リスティア皇女殿下暗殺未遂の時から得体の知れない敵対相手の存在を感じます」
「それってベルン王国の仕掛け?」
「どうでしょう。最近はベルンよりミリシアの方が露骨な嫌がらせをしてるって聞いてますけど」
法皇様の手がはたと止まる。
コーヒーカップの上で所在なさげに手を廻すと
「それってアン?大分世界の情勢に明るくなってきたのね」
「個人的にはどうでもいい事なんですけどね」
ホント、面倒くさい。
「まぁ、帝国貴族としての義務位は果たしとかないと。年金貰う身分ですから」
「ふ~ん、それを気にする訳ねぇ。少し意外」
オレってどう思われてんだろ?
それはさておき、世界の知識…いや歴史か?この動乱の裏にいるのは実はやっぱりベルン王国。ミリシア王国はベルンの思惑に乗せられたに過ぎない。でも2国に挟撃され、またベルンにいつの間に操られる形となった国務大臣のローナン卿の失策もあり帝国はミリシアに国土を割譲させられる屈辱を味わってしまう。ゲーム内で帝国とベルンが拮抗し、ミリシアが第3国としてのし上がって結果三国志の様相の情勢になっていたんだ。
だから記憶より現帝国の国土が広い事の違和感。解消出来た事はスッキリするんだけど、コレで確実に歴史の本筋から離れていく。その事の自問自答を何度も繰り返した。
開き直る気になったのはゲームのオープニングの一節。
「世界を変えよ」
そう言われてオレ達は世界に送り込まれた。イレギュラーな存在の筈の異世界人を導入する意味。
思いっきり変えてやっからな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
とある国の、貴き者の居館にて。
「そろそろ邪魔な存在になってきましたね」
「では?」
「消してしまいましょう。貴方達なら可能ですよね?」
「無論。我等に消せぬ者等存在しない。どの様な存在、どの様な魔物を連れていても」
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