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外伝

マゼール=レンザー 

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 くっ。流石は実技1位か?

 国立学校へ入り剣術の最初の授業。
 マゼールの前にいるのはカイル=ウォント。確かミリュー公爵令嬢リスティア様の従者で公爵家近衛騎士団団長の嫡男って言ったな。
 立場はほぼ同じ。でも彼は魔力は殆ど無いって言ってた。ならコレは?何の強化魔法も使ってないのか?素のステータスでコレ?

 がむしゃらに感覚的に剣を振っている様に見える。でも此方の剣技に、フェイントすら対応してくる。間違いない。彼は基本をキッチリしっかり押さえた上で自由に剣を操っているんだ。

「はい、そこまで!」

 模擬戦終了の掛け声。
 剣術指導の近衛騎士フリッツ=バーン先生。

「両名ともお見事!もう騎士団に入っても大丈夫な技量です」

 試合が終わり一礼して分かれる。

「実技トップは伊達じゃないね。同じ年に負けるなんて夢にも思わなかった」
「いや、引き分けじゃないか。俺もだ。今まで負け知らずだったんだけどね」

 引き分け…?
 私は身体強化の魔法を使っていた。それを考えると、彼との間には歴然とした差が有るって事だ。
 上には上がいる。
 頑張らないと。私は王太子殿下の護衛なのだから。

 その王太子殿下が模擬戦を行なっている。
 相手は…、ミリュー公爵令嬢リスティア様。

 私の相手だったカイルの父君、つまりミリュー公爵家近衛騎士団長の指導を受けたとの事だが、本当に公爵令嬢なのか?魔法の実力はぶっちぎりで1位。確か母君が『麗しの魔法剣士』と呼ばれた元宮廷魔術師アイラ様。その為幼少の頃から魔法の特訓は受けていらしたご様子だった。
 でも、この剣筋。受け方。
 殿下の太刀筋が見えてる。基本だけと見抜かれておられる。

 同じ指導。
 おそらくカイルとも何度も模擬戦をしたのだろうな。
 お?
 殿下に基本通りでしかないと指摘された?しかも馬鹿正直な基本と…。
 参ったな。本来、これは私の役目だ。

 わかっていて言えなかった。

 私は只の護衛ではない。
 側近として殿下を支えなければならないのに。追従だけしていたとは…。

 その意味でもリスティア様の従者たる2人。
 カイルもチェレンもYesマンではない。
 カイルなんかリスティア様の事を『お嬢!』呼びだし、チェレンも自分の意見を通している。うん、語り過ぎ…。
 それにしてもカイルって、礼儀はアレでいいのか?
 そう思っていたが、彼は護衛としては徹底していた。自身の講義は最低限しか取っておらず、空き時間は全てリスティア様の護衛に付いていたのだ。しかも彼は魔物討伐も参加していたと言う。低レベルとは言え実際にラジスドッグやホーンラビットを狩っていると聞いた。その分ケガも多かった様だが、リスティア様曰く「お陰で回復魔法のレベル上がったんだ」との事。また治癒師薬師顔負けの知識と技量を持ってらっしゃるらしく、「俺、お嬢!の練習台なんだよね」と嘯くのも聞いた。彼は去年からリスティア様と領内巡回もこなしていると…。

 彼に勝ちたい。
 これは秘めたる私の野望だ。

 王太子殿下がリスティア様と急接近されたのに合わせて、私もリスティア様やカイル達と行動を共にする様になった。

 結果、私の価値観は根底から変わった。

 リスティア様は公爵令嬢にも関わらず奉仕作業に熱心で、施薬院での活動のみならず貧民窟スラムでも活動を始めた。その下々目線は最初信じられなかった。
 でも、結果、王都で暗躍していた死霊使いの陰謀~死霊騎士の襲撃を阻止する事が出来た。

 あの時。
 リスティア様は神聖魔法をも行使された。

「カイル!マゼールさん!足止めお願いします‼︎」

「お嬢?」
「リスティア様?」
 何かお考えがあるのか?

 「よし!」
 「わかりました!」
 カイルは勿論、私も只信じる事にした。

「右!」「おう!」

 カイルと大剣を掻い潜って死霊騎士の右足に迫る。必殺剣の二連撃!

「「どうだ!?」」

 足へのダメージを受けて膝をつく死霊騎士!今です‼︎

「自然の法に抗う者よ、女神の御名の下、聖なる光をもって母なる大地に還りなさい!『ターン・アンデッド』‼︎」

 な?神聖魔法Lv2?

 死霊騎士の下、回りのゾンビも巻き込み大地に白い魔法陣が現れる。そこから、すべてを包み込む白い聖なる光!

「ギャアアアアアァァ!」

 ゾンビ達が白い炎に包まれ消滅していく。
 そして死霊騎士も大きい聖なる光に! やった…。

 この偉業を評価され、リスティア様は王太子殿下の婚約者になられた。

 王太子殿下と同様、貴女にも我が忠誠を!

 そして、カイル。私は負けないよ。
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