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12.その名は滅亡

魔戦

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 復活した邪神ザラードは、世界を砂と塩に、死の世界に変えながら移動しています。
 その姿は禍々しき黒き蜥蜴? 羽根のない竜神!
 回りに『滅びの力』を纏わせながら、ゆっくり進んで行く。なので、近づくと砂と塩にされてしまいます。

 魔族の遠距離魔法攻撃が効いているのか?
 歩みが、想像以上に遅い!

 「直接攻撃は? 現時点では無理ですか?」
 私の問いかけに、皆が頷く。
 「滅びの力が邪神を包んでいて、近づくと塩になるので」
 「ホーリーシールド!」
 竜語魔法の神聖属性魔法。各属性の攻撃魔法や防御魔法があって、流石は最高位の魔法体系。これで近づけるはず! 光神竜剣を構えて、いきます!!

 グッ! ザザッ、グサッ!
 私の剣はザラードの手を、伸びてきた右手を斬りつけ、そこから黒き血が吹き出しました。

 「斬った!斬りつけた!!」
 挙がる歓声。魔族の士気も上がります。
 
 「くくく、やりますね。ですが?」
 血が止まる。でも!
 剣に竜気功を込めて!
 「ドラゴニック・オーラ・スラッシュ!」
 オーラが太刀筋になる! その剣気が、邪神の腕を断つ!

 ボトリ。落ちる左腕。
 「今度は? そんな…」
 死の砂が巻き上げられ、左腕に纏わりつき再生されていく!
 「この身体は、滅びの力で出来た砂や塩で出来ています。斬るのは無意味! 言ったはず! 我を滅せ、と」
 「直接攻撃は無意味…。なら、これなら!」
 風、水、聖属性複合! 
 「ホーリー・ウォータースパウト!」
 剣先より現れる、聖なる輝きを持つ渦巻!

 「グッギャアアアアアアァァァ!」

 砂で出来ているなら、聖水を掛けて、一粒一粒浄化する!邪神ザラード! 滅してください!!

 聖なる渦巻はザラードを完全に包み込みました。土塊の身体に聖水が染み込んでいく!
 「凄い! あの邪神をお一人で追い込んでいく? これが『光神竜姫』?」
 魔族すら感嘆していて。

 よろめきながらも、渦から出ようとする邪神。そうはさせません!
 「足留めを!」
 「あ? あぁ、わかった! ロック・ウォール!」
 魔王レベッカが、大地属性魔法を唱える。
 大地が競り上がり、壁となって邪神を囲む!

 ボトリ。ボトッ、ボトッ!
 皮膚が、背びれが、指先が落ちていく。浄化されて、身体の形成が維持出来なくなっていく。

 「ギャアアアアアア?! こんな、こんな方法が…。まさか、身体…の一粒…一粒を浄化す…るとは…。光神…竜…姫……、おの…れ…、何故…? 我…は邪神…ザラード…何故滅せられ…る? いく…ら竜…語魔法…といえ…、我に…ここまで…効く?…何故?…」
 「女神が、貴様の力を押さえ込んでいるのだ」
 「そして、我等が竜姫の力を増幅している」

 天空に現れたのは『光神銀竜ゼルメイド』と『暗黒竜ボスコーン』。光と闇を守護神竜が、私の力を後押ししてくれている。
 そして女神様も、力を貸してくれている!

 「何故滅…せら…れ…る…。前は…こんな…こ…とは……なかった…。こんな…」
 「前は女神のみで戦ったからな」
 「こんな規格外の竜戦士はいなかった!」

 ? ?!
 あれ? 私って神竜からも規格外って思われている?

 やがて崩れ落ちるザラードの身体。そして現れたのは、コア?
 「あれは?」
 「あれが邪神の本体。核水晶の中に、本体の生命体がある」
 ありがとうございます、ゼルメイド様。

 中にいるのは、脳と神経組織のみの物体。あの脳が、邪神だと言うの?

 「邪神は器に過ぎぬ。人々の恨み妬み嫉み。負の感情の強い者が、世界を恨み滅ぼさんと願う。器に入るのだ」
 「では、あれはモルドの脳? 喰われたって、あの姿になること?」
 コアのみになったからか、邪神は、モルドは何も語らない。
 「脳が残っているなら、モルドも復活出来るかも。ドリスティアの…あうっ!」
 コアが輝き、私は酷い頭痛に襲われた。
 「モルド? まだ? え? 貴方は?」

 『言ったはず! 貴女が勝てば世界が一つになる。我が勝てば世界は滅ぶ、と。我より復活させるのは大地。死の世界のままでいいのですか? くくく、これまでのようです。もう、我が世界をどうこうすることはない。さらばです。けけけけけけけけけけけ!』

 頭に直接? あ? コアが!?

 ピシャッ! パリン!!

 コアが砕け散りました。脳が、塩になって消えていく?消えていきました…。

 沸き上がる大歓声!
 確かに邪神は滅しました。でもモルドの言う通り、大地は死の世界のまま。これでは人々は住めない。魔族は、生きる大地を失ったまま。

 大地を甦らす方法。
 長い年月を掛けて手を入れれば、多分緑は戻る。いつか、住める大地になる。
 ダメ! 
 年月は掛けられない! なら、何か…。

 あった! 一つだけ、多分私に出来る? ううん、私にしか出来ない事があった。
 竜語魔法を全て使えて、魔力も並外れて多い私なら出来る魔法がある。
 竜語…、というよりもう、女神魔法と言った方がいいものが!

 全魔力 +α を使う『女神の祈り』という魔法。
 生き返り以外の、どんな望みでも叶うもの。但し、使う魔力量で叶う願いは変わる。
 まだ、魔力は充分にある。多分、大地を甦らす事も出来る。でも…。

 +α 、全生命力を使う…。魔力と生命力を失った私は、この世界から消失する…。


 「頼む。魔族を救ってくれ」
 「私、助けてって言われたら、任せてって言っちゃうんだ」

 そう…だよね。私だけが出来る魔法があるのだから。
 左手薬指を見る。ついはめてきた指輪。ルーク様の瞳と同じ色の婚約指輪。

 ごめんなさい、ルーク様。
「ルーク様の元に、必ず帰ります!」
 約束守れそうにありません。

「私は願う! 全てを糧に叶えたまわん事を!」

 気付いたのは、知っていたのは魔王レベッカだけでした。
 「まさか? いかん! リスティア! 止めろ!! それは禁呪だ!!」

 「女神の祈り『オラシオン』!」

 私の身体が、金色の光に包まれていく。
 その輝きが、金色の粒子が大地に降り注いで! 
 死の世界が、大地が甦る!!

 出来た。良かった…。

 私の身体が、粒子となって大地に降り注いでいく。

 「リスティア!」

 本当にごめんなさい、ルーク様。


 魔族の、魔王レベッカの前で、光神竜姫リスティアは、光の粒子となって消えた。
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