68 / 90
11.王太子妃 (ほぼ確定) の日常
感触
しおりを挟む
施薬院での治療・介護活動。
ちょっとした事件が起こってしまいました。
「お嬢! 無自覚過ぎ。この『たゆん、ぷに事件』。周りが大騒ぎ!」
「お嬢様、私もカイルと同意見です。存在の影響力が大き過ぎるし、他と違い過ぎます」
馬鹿馬鹿しい事件名で、ピンと来る方もいると思います。
確かに初等部の時も、私が介護奉仕すると『公爵令嬢にしていただく訳には』『王太子妃殿下、畏れ多い事です』と拒否や恐縮される方がいたのです。
でも、今度のはそれプラス『王太子妃殿下に欲情してしまった? なんという不敬! 私は万死に値します』と言う方や、『王太子妃殿下のオッパイを味わえる』目当てでケガをする方が出てきたのです。
他と比べて、並以上に大きいとは思えないのですが、白い介護服の胸が、今は『たゆん、プク』って膨らんでいて、介護治療の時、『ぷに、ぽよん』と頭や肩、場合によっては顔に当たります。
「女性スタッフは他にもいるし? 皆も一緒でしょう? 私だけ特別というの変じゃない? そんな大きい訳ではないし…」
「お嬢!不敬な言い方…ですけど、…その『王太子妃殿下のオッパイ』は特別って思います」
「普通はあり得ない状況です、お嬢様」
施薬院の一室。
『万死』騒ぎのオジさんを、他の男性スタッフが宥め、安堵させて帰らせてから、私はカイルやチェレンから猛抗議プラスお叱りを受けているところです。
そこへダイアナ院長が入ってきました。
「リスティア様、ご苦労様。その、ごめんなさいね、貴女が悪くないのは分かるのですけど」
「私の立場が、もう皆さんにご迷惑掛けてる訳ですよね。院長の方が遥かに豊かだと思うのですが?」
「伯爵夫人とは言え子供も大きいオバサンと、うら若い『公爵令嬢』『王太子妃』とではね。それに貴女は、この国、いえ世界中で一番人気のある女性なのよ?」
ふぇ? 一番人気って?
ちょ? カイル?チェレン? 頷かないで! 恥ずかしいよ!
「潮時かもしれないわね。リスティア様、おそらく色々な行事や公務が増えてくると思います。ここでの活動を減らす時期に来ていたのかもしれません」
「やむを得ず、ですか? 私が納得できる理由を見つけてくださり、ありがとうございます。それにクビでは無いのですよね」
「ずっと続けたい。そう仰有ってましたわね。何とか空いた時間があれば、お願いしたいと思います」
ダイアナ院長、本当にありがとうございます。
施薬院からの帰宅後、左手首にある腕輪の装飾の宝石が、チカチカ光りました。
「五回? 直ぐ来い? ルーク様?」
初等部修了のお祝いにルーク様から貰った腕輪。
ついている宝石は、点滅する事で、ちょっとした合図・ルーク様からの連絡を教えてくれます。
あ、その、『王太子妃』の立場で公務の時は左薬指に指輪してます。婚約指輪、ルーク様の瞳と同じグレイブルーの魔法石がついているもの。
ちなみに、ルーク様が嵌めているのは私の瞳と同じライトグリーンの魔法石の指輪です。
急いで身仕度して王城へ。
案内されたのは、ルーク様の私室でした。
「ごめん、急に呼び出したりして」
「いえ、何か御用でしょうか? ルーク様」
あれ? 何か言いにくそう?
「その、聞いたんだ、…『たゆん、ぷに』事件」
ふぇ? 恥ずかしいよ! しかもそれが正式名なの?
「…申し訳ありません、ルーク様。私が軽率なばかりに要らぬ騒ぎになってしまいました」
「ダイアナ院長から聞いた。だから君の気持ちは分かる。困惑してる、納得できないのも…。でも、その、ごめん」
抱き締められ、胸に顔を埋められました。
「全部分かってる。でも、ごめん…、君の胸…、いや君を独り占めしたくて、つい呼び出した」
うわぁ、ルーク様? 正直過ぎです。
「ごめ…」
謝るルーク様の言葉を遮る方法。口を塞ぐ大胆なやり方。女神様、光神銀竜様! 私に勇気をください!
Chu!
「…私は、何時だってルーク様のものです。だから、今、世界中で一番幸せな女なんです」
「…リスティア?」
「はい、ルーク様」
微笑む、幸せな二人。
「君からキスされるとは思わなかったな」
ふわぁーん! やっぱり大胆過ぎですか?
「ありがとう。本当に君に甘えてばかりだな、私は」
「嬉しく思います。私も、フフ、ルーク様にヤキモチ妬かれるとは思いませんでした」
逆襲!って、ルーク様?
「そういうことを言うのは、この可愛い口かな?」
Chu!
だめです。やっぱりルーク様に勝てません。
落ち着いて、ソファに座る二人。
「ヤキモチは妬くよ。私もそこまで聖人君子ではないし。それに、君は『前科アリ』だし」
「ふぇ? ルーク様!」
「その唇を許そうとした事、私はショックだったんだ」
「わ、忘れてください!」
四年前、施薬院での治療作業中に近所の男性が溺れて担ぎ込まれた時、蘇生行為の為、私は人工呼吸をしようとしました。
途端に大騒ぎ!
婚約者のいる女性が、他の男性にキスしようとした!
婚約解消にも匹敵する大痴態。皆に怒られ、ルーク様はショックを受け、数日間学校を休まれ、本当に大事だったのです。
「忘れられないよなぁ。本当に…」
Chu!
「ここ、本当にルーク様独占ですから。お父様にもお兄様にも許していませんから!」
こんなにいっぱいキスしたの初めてです。
頭ぐるぐる。恥ずかしいよ!
「うん、安心した」
「…意地悪ですぅ、ルーク様」
カイル達に知られたら「バカップルですか?」って絶対言われそう。そんな幸せな一時。
この頃は私も、世界も平穏無事だったのです。
ちょっとした事件が起こってしまいました。
「お嬢! 無自覚過ぎ。この『たゆん、ぷに事件』。周りが大騒ぎ!」
「お嬢様、私もカイルと同意見です。存在の影響力が大き過ぎるし、他と違い過ぎます」
馬鹿馬鹿しい事件名で、ピンと来る方もいると思います。
確かに初等部の時も、私が介護奉仕すると『公爵令嬢にしていただく訳には』『王太子妃殿下、畏れ多い事です』と拒否や恐縮される方がいたのです。
でも、今度のはそれプラス『王太子妃殿下に欲情してしまった? なんという不敬! 私は万死に値します』と言う方や、『王太子妃殿下のオッパイを味わえる』目当てでケガをする方が出てきたのです。
他と比べて、並以上に大きいとは思えないのですが、白い介護服の胸が、今は『たゆん、プク』って膨らんでいて、介護治療の時、『ぷに、ぽよん』と頭や肩、場合によっては顔に当たります。
「女性スタッフは他にもいるし? 皆も一緒でしょう? 私だけ特別というの変じゃない? そんな大きい訳ではないし…」
「お嬢!不敬な言い方…ですけど、…その『王太子妃殿下のオッパイ』は特別って思います」
「普通はあり得ない状況です、お嬢様」
施薬院の一室。
『万死』騒ぎのオジさんを、他の男性スタッフが宥め、安堵させて帰らせてから、私はカイルやチェレンから猛抗議プラスお叱りを受けているところです。
そこへダイアナ院長が入ってきました。
「リスティア様、ご苦労様。その、ごめんなさいね、貴女が悪くないのは分かるのですけど」
「私の立場が、もう皆さんにご迷惑掛けてる訳ですよね。院長の方が遥かに豊かだと思うのですが?」
「伯爵夫人とは言え子供も大きいオバサンと、うら若い『公爵令嬢』『王太子妃』とではね。それに貴女は、この国、いえ世界中で一番人気のある女性なのよ?」
ふぇ? 一番人気って?
ちょ? カイル?チェレン? 頷かないで! 恥ずかしいよ!
「潮時かもしれないわね。リスティア様、おそらく色々な行事や公務が増えてくると思います。ここでの活動を減らす時期に来ていたのかもしれません」
「やむを得ず、ですか? 私が納得できる理由を見つけてくださり、ありがとうございます。それにクビでは無いのですよね」
「ずっと続けたい。そう仰有ってましたわね。何とか空いた時間があれば、お願いしたいと思います」
ダイアナ院長、本当にありがとうございます。
施薬院からの帰宅後、左手首にある腕輪の装飾の宝石が、チカチカ光りました。
「五回? 直ぐ来い? ルーク様?」
初等部修了のお祝いにルーク様から貰った腕輪。
ついている宝石は、点滅する事で、ちょっとした合図・ルーク様からの連絡を教えてくれます。
あ、その、『王太子妃』の立場で公務の時は左薬指に指輪してます。婚約指輪、ルーク様の瞳と同じグレイブルーの魔法石がついているもの。
ちなみに、ルーク様が嵌めているのは私の瞳と同じライトグリーンの魔法石の指輪です。
急いで身仕度して王城へ。
案内されたのは、ルーク様の私室でした。
「ごめん、急に呼び出したりして」
「いえ、何か御用でしょうか? ルーク様」
あれ? 何か言いにくそう?
「その、聞いたんだ、…『たゆん、ぷに』事件」
ふぇ? 恥ずかしいよ! しかもそれが正式名なの?
「…申し訳ありません、ルーク様。私が軽率なばかりに要らぬ騒ぎになってしまいました」
「ダイアナ院長から聞いた。だから君の気持ちは分かる。困惑してる、納得できないのも…。でも、その、ごめん」
抱き締められ、胸に顔を埋められました。
「全部分かってる。でも、ごめん…、君の胸…、いや君を独り占めしたくて、つい呼び出した」
うわぁ、ルーク様? 正直過ぎです。
「ごめ…」
謝るルーク様の言葉を遮る方法。口を塞ぐ大胆なやり方。女神様、光神銀竜様! 私に勇気をください!
Chu!
「…私は、何時だってルーク様のものです。だから、今、世界中で一番幸せな女なんです」
「…リスティア?」
「はい、ルーク様」
微笑む、幸せな二人。
「君からキスされるとは思わなかったな」
ふわぁーん! やっぱり大胆過ぎですか?
「ありがとう。本当に君に甘えてばかりだな、私は」
「嬉しく思います。私も、フフ、ルーク様にヤキモチ妬かれるとは思いませんでした」
逆襲!って、ルーク様?
「そういうことを言うのは、この可愛い口かな?」
Chu!
だめです。やっぱりルーク様に勝てません。
落ち着いて、ソファに座る二人。
「ヤキモチは妬くよ。私もそこまで聖人君子ではないし。それに、君は『前科アリ』だし」
「ふぇ? ルーク様!」
「その唇を許そうとした事、私はショックだったんだ」
「わ、忘れてください!」
四年前、施薬院での治療作業中に近所の男性が溺れて担ぎ込まれた時、蘇生行為の為、私は人工呼吸をしようとしました。
途端に大騒ぎ!
婚約者のいる女性が、他の男性にキスしようとした!
婚約解消にも匹敵する大痴態。皆に怒られ、ルーク様はショックを受け、数日間学校を休まれ、本当に大事だったのです。
「忘れられないよなぁ。本当に…」
Chu!
「ここ、本当にルーク様独占ですから。お父様にもお兄様にも許していませんから!」
こんなにいっぱいキスしたの初めてです。
頭ぐるぐる。恥ずかしいよ!
「うん、安心した」
「…意地悪ですぅ、ルーク様」
カイル達に知られたら「バカップルですか?」って絶対言われそう。そんな幸せな一時。
この頃は私も、世界も平穏無事だったのです。
23
お気に入りに追加
2,044
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ダラダラ異世界学校に行く
ゆぃ♫
ファンタジー
「ダラダラ異世界転生」を前編とした
平和な主婦が異世界生活から学校に行き始める中編です。
ダラダラ楽しく生活をする話です。
続きものですが、途中からでも大丈夫です。
「学校へ行く」完結まで書いてますので誤字脱字修正しながら週1投稿予定です。
拙い文章ですが前編から読んでいただけると嬉しいです。エールもあると嬉しいですよろしくお願いします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる