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10.ともに、生きる未来

相思

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 「あの? ミューク皇太子様?」
 「『竜の姫』を、我が竜帝国に迎え入れたいのです」

 求愛って言うか、もうプロポーズです。

 「私が、リンドガイア王国ルーク王太子殿下の婚約者だと、御存知ですよね?」
 多少失礼な物言いですが、念のため。

 「四国交流の前の話です。状況は変わりました。外交親善は、婚約破棄の大義名分となり得ます」

 正論で来られました。

 「本日は帰ります。後日、我が国より正式な申し入れがあると思います」

 そう言って、ミューク皇太子様は帰られました。
 そこへ、ルーク様が来られました。

 「うん?どうした? リスティア」

 あれ? そう聞くルーク様も、何か思い詰めた表情。
 悩んだ末、私はミューク皇太子様からプロポーズを受けた事を話しました。

 「実は私も、セシリア王女から結婚を申し込まれた」

 王女様は一人娘。ですが、この新年に、現王陛下の姉君の息子、ゼラン公爵嫡男アルバート様が、王位継承権を授かっています。セシリア王女は降嫁できる状況になられてはいます。

 「取り敢えず、本国に相談しよう」

 ルーク様の言に頷く私。頭ぐるぐるです。と、シャーロットもいたんだ…。

 「殿下、夕べ黒いローブの男が、王女と話していたとの噂があります。まさかとは思っていたのですが…。」
 「『言の葉』? そういうことか? だが、催眠ではないわけだ。想いを増幅されてしまった…。ありがとう、シャーロット嬢。兎に角、本国へ連絡しよう。表沙汰になる前に対処できればいいけど…」

 船に戻ろうと港へ向かっていた時です。

 「号外! 大スクープ! 大スキャンダル!!ミューク皇太子様の略奪愛!」
 ミューク皇太子様が、私に求愛したことがニュースになっています。

 うわぁ! なんで?

 急いで船に戻りました。フィリップ先輩も戻ってます。
 「殿下、ヴォルコニアの動きが…」
 「あぁ。シレジアの方は?」
 「シャーロット嬢も止めているようですし、バンダボアヌ公子もです。その為表沙汰になっていません。純愛だとしても略奪愛と見られると、シレジアはセシリア王女の説得に入っています。ですが…」
 「ヴォルコニアは、何と言われようとも、と言うことか? 竜帝国としては『光神竜姫』が、それほどまでに欲しい訳だ」

 そう言いながら、水晶球を起動します。
 一部の人間しか使えない通信魔導具。ルーク様は、一部の一人。


 「状況はわかった。シレジアは大丈夫だろう。冗談で済ます形で調整できつつある。セシリア王女には辛いだろうがな。だが、ヴォルコニアは…、フム」
 国王陛下も悩んでいます。

 後日、シレジア王国から密かな謝罪と、ヴォルコニア竜帝国から正式な婚姻の申し入れがありました。
 リンドガイア王国としては、やはりこれは受け入れられない旨を返答したとの事。
 略奪愛! であるからなのか、ヴォルコニアの使者は、断られても激昂もせず、納得して帰られたそうです。

 で、私は改めてセシリア王女様から謝罪を受けました。二人っきりで話す機会をもらったのです。

 「本当にごめんなさい。悪いのは判ってる。判ってるんだけど…。乗せられたのも判ってるんだけど…」
 「本当に心からルーク様が好き、ですよね? セシリア王女様」
 「そう…ね。うん。学校に入る前、ルーク殿下とお会いして、それ以来。殿下が王太子になられて、『あ、結婚はない』って思ったのだけどね。私も女王になる立場になってたし。そして、四年前、ルーク殿下が婚約したって聞いてね。泣いたなぁ」
 セシリア様は、今は笑い飛ばしてくれてる。

 「七歳で神聖魔法を使った天才魔法使いの公爵令嬢。あの『麗しの魔法剣士』の娘。王太子妃になる方って、そんな凄い人なんだって聞いてね。成る程私じゃ敵わない、そう思った。その娘、竜も倒したって。『ドラゴン・スレイヤー』、『神竜の愛娘』って聞いて、凄い女剣士のイメージ出来ちゃってね。その、王国軍司令官の娘とも聞いていたし。ルーク殿下には、女剣士は似合わないのにって思ったりもして」

 そう言って、私を見る。

 「会ってびっくり。どこが女剣士? って思った。殿下にお似合いの、愛くるしい美少女」

 うわぁ! 何か恐縮です。

 「貴女は私に勝てないって、こないだは言ってたわよね? でも、私もそう思った。全く勝てそうもない、なんてお似合いな二人! だから、なおのこと想いを押し込めてしまった。それを『モルド』につけこまれてしまった。ごめんなさいね。うん、やっと踏ん切りが付いた」
 「セシリア王女様?」
 「私ね、貴女も大好きなのよ、リスティア公女。だから、今後ともよろしく。ずっとね」
「はい。セシリア王女様」
「で、ヴォルコニアには? 行くの?」
「公式訪問はします。その、王太子妃の立場で、ですけど」

 セシリア様と、ずっと友達。
 私、それが本当に嬉しかったんです。

 そして、ヴォルコニア竜帝国へ、いざ行かん!
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