60 / 90
10.ともに、生きる未来
恋慕
しおりを挟む
サーモンド王国王都、迎賓館。
奥にあるシレジア王国用宿泊場のテラスデッキ。
セシリア王女が、一人で夜空を見ていました。
ここは、魔法の灯りがともり、薄暗くはない場所。もちろん、怪しい人物など入れないはずでした。
「あなたは? まさかこんな所に現れるとはね、『使徒モルド』。今度は何をするつもり」
「今言った通りですよ。ルーク王太子への恋慕の情。このまま封じ込めるつもりですか? くくく、けけけけけけけけけけけけ!」
「何を…、私の……、想い………。ルーク殿下への……?」
「けけけけけけけけけけけけ!」
高笑いとともに、モルドは消えました。
「私の…想い………、ルーク殿下…………」
そのまま、ヴォルコニア竜帝国の宿泊場へ。
テラスデッキに、同じようにミューク皇太子が、何故か一人でいらしたのです。
「『竜の姫』は、竜帝国の皇妃にこそ相応しくはありませんか? ミューク皇太子」
「あぁ、伝説の『光神竜姫』。我国に来てくれれば」
「皇室の権威は、益々上がりますよ。国に、連れて帰りましょう。国民も望んでいます」
「国民…も……、のぞ……んで………。私の…ものに………」
「けけけけけけけけけけけけ!」
そして、私達リンドガイア王国用宿泊場。
実は、港の魔導帆船『プリンス・オブ・ルーク』号に戻っていました。本来はシレジアの隣だったのです。急遽一国増えたので、私達は船に戻ることにしました。
サーモンドは大慌てだったのですが、ルーク王太子の強い希望ということで。
で、私の部屋に、ルーク様がいます。
ソファーに座る私の膝枕で、寝てらっしゃるのです。
フフ、こんな寝顔、見ること出来るの、私の特権です。
最近はメイド達も察して、この部屋に来るの遠慮がち。
「うん? あ、ごめん。寝てしまったんだ?」
「ルーク様、交流会では、他国の方と色々語らってましたから」
「あれ? ほっといてごめん!」
「いえ、そんなつもりはありませんよ? 私も女子会楽しかったですので」
ホッとしたように微笑むルーク様。
「ありがとう、リスティア。私は、いつも君に甘えてばかりだ」
「あら、私は嬉しいんですよ? ルーク様が甘えてくださるの。結構幸せ感じてます」
「私もだ。君が側にいてくれる事、支えてくれる事、甘えさせてくれる事、本当に感謝してるし、幸せに思ってる。後五年、卒業し成人したら、私達は結婚できる。それまでは、頑張らないとね。『光神竜姫』に相応しい王太子に、王になれるよう、頑張らないと」
「ルーク様?」
ルーク様は起き上がると、私を見つめて、
「洗礼で知り合い、同じ学校に入った。スタートは一緒だった。でも、君は『白き聖女』、『神竜の愛娘』、『光神竜姫』。世界が危機に陥る度に活躍して、全ての人の敬愛を得ていく。私は、君の横にいていいのか? 王太子という立場だけで、君に釣り合うのか、思い悩むんだ…。ハハッ、こんなヘタレじゃダメだね。わ? リスティア?」
私、ルーク様をしっかりと、この胸に抱き締めました。
「ヘタレじゃありません。本当に弱い人って、そういうの隠します。ルーク様は、全部正直に出してます。私、全部話してもらえる事、甘えてこられる事、本当に嬉しいんです。ルーク様を支えられるよう、安らげる存在になれるよう、頑張ってきたつもりです。だから、その、これからもお側にいさせてくださいね」
「ありがとう、リスティア」
久しぶりの二人っきり。幸せな時間。
翌朝。
交流の続きともいえる朝食。
一人一人が、自由に好きな卓で食べられるようになっています。とは言え、大概は国通しで固まるのです。
雑談しながらの朝食。
ちょっとお行儀悪いかな?
そこへ、シャーロットがセシリア王女達とやって来ました。
「おはようございます、ルーク王太子殿下。リスティア様」
「おはようございます。セシリア王女様、バンダボアヌ公子にシャーロット嬢」
え?セシリア王女様、ルーク様の隣に座った?
向かい合わせに私がいる以上、一つ席を空けるのが暗黙の了解なのに?
しかも、随分胸の開いたドレス。スタイルのいいセシリア様に、とてもお似合いです。でも、何か違和感があります。うん? 迫ってる?何か釈然としません。
会話は日常の、たわいもない事でした。
そして食事も終わり、私達は席を立とうとした時、
「ルーク殿下? ちょっとよろしいかしら?」
「ええ、セシリア王女」
王女様がルーク様を呼び止めました。なんだろう?妙に違和感があるのです。
二人で談話室に行かれるのを見送っていると、シャーロットが近付いて来ました。
「リスティア様、本来はこのような事、どうかと思うのですが…」
「ありがとう、シャーロット様。何となく言いたい事分かります」
「実は夕べから、思い悩んでいるような…、その、恋する乙女の雰囲気が出始めて」
「昨日言われたルーク様への想い、やはり本物なのでしょうね。想いが溢れ始めたのではないでしょうか?」
困りました。
外交を考えると、正式にシレジア王国から申し込まれた場合、断る訳にはいかないと思うのです。ルーク様の意向に関係無く、私は身を引くべき。
でも、ルーク様は下手すると出奔してしまうかもしれません。自惚れかもしれませんが、私、それくらい愛されてるって思えるのです。
シャーロットに、そう言ってみたところ、
「自惚れなものですか! 昨日も言いましたよ? 殿下はリスティア様にゾッコンです! 身を引くなんて言ったら、太子の座さえ棄ててしまいますわ!そして、キャアー! 駆け落ちですわ!!」
「え~と、楽しんでる?シャーロット様」
「失礼、リスティア様。と、あれは? ミューク皇太子様?」
思い詰めた顔で、やって来たミューク皇太子様は、私に求愛したのでした。
「くくく、恋のキューピッドは、これ程楽しいものなのですね。けけけけけけけけけけけけ!」
奥にあるシレジア王国用宿泊場のテラスデッキ。
セシリア王女が、一人で夜空を見ていました。
ここは、魔法の灯りがともり、薄暗くはない場所。もちろん、怪しい人物など入れないはずでした。
「あなたは? まさかこんな所に現れるとはね、『使徒モルド』。今度は何をするつもり」
「今言った通りですよ。ルーク王太子への恋慕の情。このまま封じ込めるつもりですか? くくく、けけけけけけけけけけけけ!」
「何を…、私の……、想い………。ルーク殿下への……?」
「けけけけけけけけけけけけ!」
高笑いとともに、モルドは消えました。
「私の…想い………、ルーク殿下…………」
そのまま、ヴォルコニア竜帝国の宿泊場へ。
テラスデッキに、同じようにミューク皇太子が、何故か一人でいらしたのです。
「『竜の姫』は、竜帝国の皇妃にこそ相応しくはありませんか? ミューク皇太子」
「あぁ、伝説の『光神竜姫』。我国に来てくれれば」
「皇室の権威は、益々上がりますよ。国に、連れて帰りましょう。国民も望んでいます」
「国民…も……、のぞ……んで………。私の…ものに………」
「けけけけけけけけけけけけ!」
そして、私達リンドガイア王国用宿泊場。
実は、港の魔導帆船『プリンス・オブ・ルーク』号に戻っていました。本来はシレジアの隣だったのです。急遽一国増えたので、私達は船に戻ることにしました。
サーモンドは大慌てだったのですが、ルーク王太子の強い希望ということで。
で、私の部屋に、ルーク様がいます。
ソファーに座る私の膝枕で、寝てらっしゃるのです。
フフ、こんな寝顔、見ること出来るの、私の特権です。
最近はメイド達も察して、この部屋に来るの遠慮がち。
「うん? あ、ごめん。寝てしまったんだ?」
「ルーク様、交流会では、他国の方と色々語らってましたから」
「あれ? ほっといてごめん!」
「いえ、そんなつもりはありませんよ? 私も女子会楽しかったですので」
ホッとしたように微笑むルーク様。
「ありがとう、リスティア。私は、いつも君に甘えてばかりだ」
「あら、私は嬉しいんですよ? ルーク様が甘えてくださるの。結構幸せ感じてます」
「私もだ。君が側にいてくれる事、支えてくれる事、甘えさせてくれる事、本当に感謝してるし、幸せに思ってる。後五年、卒業し成人したら、私達は結婚できる。それまでは、頑張らないとね。『光神竜姫』に相応しい王太子に、王になれるよう、頑張らないと」
「ルーク様?」
ルーク様は起き上がると、私を見つめて、
「洗礼で知り合い、同じ学校に入った。スタートは一緒だった。でも、君は『白き聖女』、『神竜の愛娘』、『光神竜姫』。世界が危機に陥る度に活躍して、全ての人の敬愛を得ていく。私は、君の横にいていいのか? 王太子という立場だけで、君に釣り合うのか、思い悩むんだ…。ハハッ、こんなヘタレじゃダメだね。わ? リスティア?」
私、ルーク様をしっかりと、この胸に抱き締めました。
「ヘタレじゃありません。本当に弱い人って、そういうの隠します。ルーク様は、全部正直に出してます。私、全部話してもらえる事、甘えてこられる事、本当に嬉しいんです。ルーク様を支えられるよう、安らげる存在になれるよう、頑張ってきたつもりです。だから、その、これからもお側にいさせてくださいね」
「ありがとう、リスティア」
久しぶりの二人っきり。幸せな時間。
翌朝。
交流の続きともいえる朝食。
一人一人が、自由に好きな卓で食べられるようになっています。とは言え、大概は国通しで固まるのです。
雑談しながらの朝食。
ちょっとお行儀悪いかな?
そこへ、シャーロットがセシリア王女達とやって来ました。
「おはようございます、ルーク王太子殿下。リスティア様」
「おはようございます。セシリア王女様、バンダボアヌ公子にシャーロット嬢」
え?セシリア王女様、ルーク様の隣に座った?
向かい合わせに私がいる以上、一つ席を空けるのが暗黙の了解なのに?
しかも、随分胸の開いたドレス。スタイルのいいセシリア様に、とてもお似合いです。でも、何か違和感があります。うん? 迫ってる?何か釈然としません。
会話は日常の、たわいもない事でした。
そして食事も終わり、私達は席を立とうとした時、
「ルーク殿下? ちょっとよろしいかしら?」
「ええ、セシリア王女」
王女様がルーク様を呼び止めました。なんだろう?妙に違和感があるのです。
二人で談話室に行かれるのを見送っていると、シャーロットが近付いて来ました。
「リスティア様、本来はこのような事、どうかと思うのですが…」
「ありがとう、シャーロット様。何となく言いたい事分かります」
「実は夕べから、思い悩んでいるような…、その、恋する乙女の雰囲気が出始めて」
「昨日言われたルーク様への想い、やはり本物なのでしょうね。想いが溢れ始めたのではないでしょうか?」
困りました。
外交を考えると、正式にシレジア王国から申し込まれた場合、断る訳にはいかないと思うのです。ルーク様の意向に関係無く、私は身を引くべき。
でも、ルーク様は下手すると出奔してしまうかもしれません。自惚れかもしれませんが、私、それくらい愛されてるって思えるのです。
シャーロットに、そう言ってみたところ、
「自惚れなものですか! 昨日も言いましたよ? 殿下はリスティア様にゾッコンです! 身を引くなんて言ったら、太子の座さえ棄ててしまいますわ!そして、キャアー! 駆け落ちですわ!!」
「え~と、楽しんでる?シャーロット様」
「失礼、リスティア様。と、あれは? ミューク皇太子様?」
思い詰めた顔で、やって来たミューク皇太子様は、私に求愛したのでした。
「くくく、恋のキューピッドは、これ程楽しいものなのですね。けけけけけけけけけけけけ!」
0
お気に入りに追加
1,896
あなたにおすすめの小説
【完結】よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳
キムラましゅろう
恋愛
わたし、ハノン=ルーセル(22)は術式を基に魔法で薬を
精製する魔法薬剤師。
地方都市ハイレンで西方騎士団の専属薬剤師として勤めている。
そんなわたしには命よりも大切な一人息子のルシアン(3)がいた。
そしてわたしはシングルマザーだ。
ルシアンの父親はたった一夜の思い出にと抱かれた相手、
フェリックス=ワイズ(23)。
彼は何を隠そうわたしの命の恩人だった。侯爵家の次男であり、
栄誉ある近衛騎士でもある彼には2人の婚約者候補がいた。
わたし?わたしはもちろん全くの無関係な部外者。
そんなわたしがなぜ彼の子を密かに生んだのか……それは絶対に
知られてはいけないわたしだけの秘密なのだ。
向こうはわたしの事なんて知らないし、あの夜の事だって覚えているのかもわからない。だからこのまま息子と二人、
穏やかに暮らしていけると思ったのに……!?
いつもながらの完全ご都合主義、
完全ノーリアリティーのお話です。
性描写はありませんがそれを匂わすワードは出てきます。
苦手な方はご注意ください。
小説家になろうさんの方でも同時に投稿します。
私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
週3日更新です。
私と離婚して、貴方が王太子のままでいれるとでも?
光子
恋愛
「お前なんかと結婚したことが俺様の人生の最大の汚点だ!」
――それはこちらの台詞ですけど?
グレゴリー国の第一王子であり、現王太子であるアシュレイ殿下。そんなお方が、私の夫。そして私は彼の妻で王太子妃。
アシュレイ殿下の母君……第一王妃様に頼み込まれ、この男と結婚して丁度一年目の結婚記念日。まさかこんな仕打ちを受けるとは思っていませんでした。
「クイナが俺様の子を妊娠したんだ。しかも、男の子だ!グレゴリー王家の跡継ぎを宿したんだ!これでお前は用なしだ!さっさとこの王城から出て行け!」
夫の隣には、見知らぬ若い女の姿。
舐めてんの?誰のおかげで王太子になれたか分かっていないのね。
追い出せるものなら追い出してみれば?
国の頭脳、国を支えている支柱である私を追い出せるものなら――どうぞお好きになさって下さい。
どんな手を使っても……貴方なんかを王太子のままにはいさせませんよ。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる