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8.竜の災厄
準備
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サーモンド王国は西光大陸にあります。
リンドガイア王国とシレジア王国は中央大陸。なのでサーモンドに行くにあたりシレジアと合流してからのほうが合理的です。
その打ち合わせと顔合わせを兼ねてシレジアとの国境にある宿場町ベンノタウンで晩餐会が開かれました。
「シャーロット!」
「エドモン様」
久しぶりの逢瀬。お二人とも嬉しそう。
「リスティア様、紹介しますわ。こちらがシレジア王国宰相バンダボワヌ侯爵の嫡男エドモン様。こちらが我が国王太子の婚約者、ミリュー公爵令嬢リスティア様です」
実物で見るエドモン様は本当に優しげで素敵な方。
「はじめまして、リスティア=ミリューです」
「はじめまして、お噂はかねがね。お会いできて光栄です」
そこへシレジア王女セシリア様がルーク様と一緒に来られました。
「リスティア!」
「ルーク様。セシリア王女様ですよね。はじめまして、リスティア=ミリューと申します。今回はよろしくお願いいたします」
「ルーク様の婚約者のリスティア公女?まぁ、お噂はかねがね」
隣国にどんな噂がいってるんだろ?聴くの怖いです。
「『白き聖女』『神竜の愛娘』と呼ばれ、魔法はもちろん剣技も優れる『ドラゴンスレイヤー』の女傑。どのような女丈夫かと思っていたらこれ程たおやかで愛らしい少女とは。ルーク様が自慢される訳ですね」
え?私、そんなイメージ?
「全くです、セシリア王女」
エドモン様まで? シレジアでは女傑扱い?
もしかしてサーモンドも?
何てコッタイ!
そんなイメージを覆すべく今日は色々交流します。
「 私、普通の可愛らしい女の子ですよ?」
「普通? ごめん。私もキミは『規格外』と思うよ」
あうぅ…。ルーク様は味方と思ったのに。
「良かったじゃないですか? リスティア様。殿下は少なくとも『可愛らしい女の子』は否定しなかったですよ」
ちょ? シャーロット?
そんなこんなで結構楽しい一時を過ごしました。
またリンドガイアが誇る魔導帆船軍艦『プリンス・オブ・ルーク』号で、サーモンドに向かう事も決まりました。
帆に絡む風を自身で自在に興せる、魔法防御と雷撃砲をもつ唯一無二の戦艦です。
造ったのは王立魔法工房の元所長トマス=シャーリー子爵。お母様の父上、私のお祖父様。小柄で長い白髭、工房の腕からまるでドワーフと呼ばれた方。いや、この世界にはドワーフもエルフも亜人種はいませんけど。
そんなこんなで着々と準備はすすんでいきます。
その一方で『使徒モルド』への対応策も色々検討されていました。
しばらく来れなくなるので、久しぶりに施薬院で奉仕作業です。五年目にもなるとかって知ったる何とやら。すっかりスタッフの一員です。制服ももらい名札もあります。ただ名札に『主任代理』とはいっているのはどういう事ですの?ダイアナ様?
たまに治療しているのが私と知って畏れ多いと恐縮される方もいてバタバタしたりします。
「仕方ないわね。公爵令嬢で王太子の婚約者。平民からすると天上人よ?普通は接する事ないわね」
あうぅ…。慣れてくださいぃ!
そんな治療も一段落してダイアナ院長とお茶の時間です。
「貴女と知りあってもう五年か。本当に助かってるわ!ありがとうね、リスティア嬢」
「いえ、私こそ我が儘を通させてもらいました。感謝しています」
医療実習の名の元に思う存分奉仕作業が出来ました。心地好い疲れとやりきった感で本当に充実していたのです。
「いつまで出来るかしら?」
「我が儘を通させてもらえるのならまだまだ先、王太子妃処か王妃になっても!」
「あきれた!」
ダイアナ院長は笑い飛ばしてくれました。
最も、後年それが実現する時「頭が痛いのは次の院長だから」ということらしかったですけど。
出発の三日前、王都で旅立ちの宴がありました。
何せいくだけで一ヶ月の船旅です。何やかんやで三ヶ月半も休学することになっています。
「いよいよね、リスティア。頑張って、そして楽しんでおいで」
「はい!お母様。お父様、お兄様も」
笑顔のお母様やお兄様と違いとっても寂しげなお父様。そう言えばこんなに離ればなれなのは学校入学以来四年振りです。
小さい時はお父様だけ王都って事が多かったのですが、今は家族全員が王都別宅にいます。だからかな?お母様が「嫁入り時は大泣きするかも」と言ってるけど、これは現実味を帯びてきたなぁ。五年後、卒業したらって決まってるんだけどなぁ。
「海の藻屑と消えな!忌々しいお節介焼きめ!おい!準備はいいな‼︎」
王都を望む小高い丘。
きらびやかな王都を見つめ、この近くから追われた男が一人。
「サーモンドなんかで待ってられるか! 手メェ等だけは絶対に俺の手で」
そして、さらに遠くから見つめる男が。
「まずはヴォルコニアだといっているのですがね。我等にとっても使えない男です。それであなたの準備はO.K.ですか?」
「もちろんです『使徒モルド』。ヴォルコニアの名で三国同盟にチョッカイを。うまくいけば世界的戦乱になりますよ」
「どうですかね?あの小娘を甘く見ない事。いいですね! くくく、けけけけけけけけけけけ!それにしてもレベッカと協調するとは、こちらの想定を常に超えてくる!そろそろ目障りになってはきましたね」
色んな思惑をのせ、交流会が始まろうとしています。
リンドガイア王国とシレジア王国は中央大陸。なのでサーモンドに行くにあたりシレジアと合流してからのほうが合理的です。
その打ち合わせと顔合わせを兼ねてシレジアとの国境にある宿場町ベンノタウンで晩餐会が開かれました。
「シャーロット!」
「エドモン様」
久しぶりの逢瀬。お二人とも嬉しそう。
「リスティア様、紹介しますわ。こちらがシレジア王国宰相バンダボワヌ侯爵の嫡男エドモン様。こちらが我が国王太子の婚約者、ミリュー公爵令嬢リスティア様です」
実物で見るエドモン様は本当に優しげで素敵な方。
「はじめまして、リスティア=ミリューです」
「はじめまして、お噂はかねがね。お会いできて光栄です」
そこへシレジア王女セシリア様がルーク様と一緒に来られました。
「リスティア!」
「ルーク様。セシリア王女様ですよね。はじめまして、リスティア=ミリューと申します。今回はよろしくお願いいたします」
「ルーク様の婚約者のリスティア公女?まぁ、お噂はかねがね」
隣国にどんな噂がいってるんだろ?聴くの怖いです。
「『白き聖女』『神竜の愛娘』と呼ばれ、魔法はもちろん剣技も優れる『ドラゴンスレイヤー』の女傑。どのような女丈夫かと思っていたらこれ程たおやかで愛らしい少女とは。ルーク様が自慢される訳ですね」
え?私、そんなイメージ?
「全くです、セシリア王女」
エドモン様まで? シレジアでは女傑扱い?
もしかしてサーモンドも?
何てコッタイ!
そんなイメージを覆すべく今日は色々交流します。
「 私、普通の可愛らしい女の子ですよ?」
「普通? ごめん。私もキミは『規格外』と思うよ」
あうぅ…。ルーク様は味方と思ったのに。
「良かったじゃないですか? リスティア様。殿下は少なくとも『可愛らしい女の子』は否定しなかったですよ」
ちょ? シャーロット?
そんなこんなで結構楽しい一時を過ごしました。
またリンドガイアが誇る魔導帆船軍艦『プリンス・オブ・ルーク』号で、サーモンドに向かう事も決まりました。
帆に絡む風を自身で自在に興せる、魔法防御と雷撃砲をもつ唯一無二の戦艦です。
造ったのは王立魔法工房の元所長トマス=シャーリー子爵。お母様の父上、私のお祖父様。小柄で長い白髭、工房の腕からまるでドワーフと呼ばれた方。いや、この世界にはドワーフもエルフも亜人種はいませんけど。
そんなこんなで着々と準備はすすんでいきます。
その一方で『使徒モルド』への対応策も色々検討されていました。
しばらく来れなくなるので、久しぶりに施薬院で奉仕作業です。五年目にもなるとかって知ったる何とやら。すっかりスタッフの一員です。制服ももらい名札もあります。ただ名札に『主任代理』とはいっているのはどういう事ですの?ダイアナ様?
たまに治療しているのが私と知って畏れ多いと恐縮される方もいてバタバタしたりします。
「仕方ないわね。公爵令嬢で王太子の婚約者。平民からすると天上人よ?普通は接する事ないわね」
あうぅ…。慣れてくださいぃ!
そんな治療も一段落してダイアナ院長とお茶の時間です。
「貴女と知りあってもう五年か。本当に助かってるわ!ありがとうね、リスティア嬢」
「いえ、私こそ我が儘を通させてもらいました。感謝しています」
医療実習の名の元に思う存分奉仕作業が出来ました。心地好い疲れとやりきった感で本当に充実していたのです。
「いつまで出来るかしら?」
「我が儘を通させてもらえるのならまだまだ先、王太子妃処か王妃になっても!」
「あきれた!」
ダイアナ院長は笑い飛ばしてくれました。
最も、後年それが実現する時「頭が痛いのは次の院長だから」ということらしかったですけど。
出発の三日前、王都で旅立ちの宴がありました。
何せいくだけで一ヶ月の船旅です。何やかんやで三ヶ月半も休学することになっています。
「いよいよね、リスティア。頑張って、そして楽しんでおいで」
「はい!お母様。お父様、お兄様も」
笑顔のお母様やお兄様と違いとっても寂しげなお父様。そう言えばこんなに離ればなれなのは学校入学以来四年振りです。
小さい時はお父様だけ王都って事が多かったのですが、今は家族全員が王都別宅にいます。だからかな?お母様が「嫁入り時は大泣きするかも」と言ってるけど、これは現実味を帯びてきたなぁ。五年後、卒業したらって決まってるんだけどなぁ。
「海の藻屑と消えな!忌々しいお節介焼きめ!おい!準備はいいな‼︎」
王都を望む小高い丘。
きらびやかな王都を見つめ、この近くから追われた男が一人。
「サーモンドなんかで待ってられるか! 手メェ等だけは絶対に俺の手で」
そして、さらに遠くから見つめる男が。
「まずはヴォルコニアだといっているのですがね。我等にとっても使えない男です。それであなたの準備はO.K.ですか?」
「もちろんです『使徒モルド』。ヴォルコニアの名で三国同盟にチョッカイを。うまくいけば世界的戦乱になりますよ」
「どうですかね?あの小娘を甘く見ない事。いいですね! くくく、けけけけけけけけけけけ!それにしてもレベッカと協調するとは、こちらの想定を常に超えてくる!そろそろ目障りになってはきましたね」
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