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8.竜の災厄

外遊

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 中等部です。

 とは言え何せエスカレーター式の学校です。クラスメイト、殆ど変わりありません。幾人かが初等部のみで修了され数名が中等部に編入されたくらいです。

 むしろ個々に変化があります。
 カイルは背も伸び脳筋に磨きを掛けました。力はもちろん剣技超一流。カッコよくなった反面、残念さにも磨きがかかりました。

 チェレンも益々博識になりました。相変わらず長く語ります。背は私とあまり変わりません。

 私もちょっと女性らしくキモチ凹凸ある体つきになっています。お母様みたいな『ボッ!キュッ!ボーン!』になると信じて! うん、なれるといいな。


 さて新年度! 新学期なのですが、いきなり休学することになってしまいました。
 
 と言うのも我がリンドガイア王国と同盟国のサーモンド王国、ここに隣国のシレジア王国も入り三国同盟が締結されました。それによる各種交流の一貫として、次の世代の交流会がサーモンド王国で行われます。王太子や宰相の嫡男等が一同に介して交流を深めるのだとか。
  ルーク様やフィリップ先輩が我が国からは行かれるのですが、交流ということもあり婚約者同伴(もし、居るのならば)との要請があったそうです。何てコッタイ!
 おかげで私とシャーロットがついて行く羽目になりました。
 私は王太子の婚約者として、シャーロットは隣国シレジア王国の宰相嫡男エドモン様の婚約者として。
 
 良かった、一人じゃなくて。


 初等部からの習慣である談話室でのお茶会。
 シャーロットに準備とか状況の交流をしてます。

 「で、お二方は新婚旅行の準備とかお済みですか?」
「 ちょ? ローラ? 何言ってんの?」
「婚約者とご旅行でしょう? あぁ!婚前旅行でしたかしら?」
「もしかして一緒に行けない事を拗ねてらっしゃる?」

 シャーロット? そのどや顔は不味くない?

 「別に何で私が拗ねないといけないのですか?」
 「ふ~ん?」

 うわぁ?!挑発してるよね、これ。

 「では、一緒に行かれますか? ひょっとしたらサーモンド王国の王太子に見初められるかもしれませんし? 或いはシレジアの王太子とか」
 「え?」

 シャーロット? 判ってて言ってるよね?
 「サーモンドの王太子ロディマス様には公爵令嬢リルウィン様がいるよ?シレジアは王女様しかいないし」
 「シャーロット様?どういう事ですの?」
 「そうだ! いっそ男装なさったら?シレジアの王女様が惚れるかもしれませんわ? それに、とても似合いそうです」

 やば! 男装が似合うってのはローラのコンプレックスつつくかも?

 「男装…? 私が男みたいな体型って言いたいのですか?」

 あ?シャーロットも地雷踏んだ事に気付いた。

 「そうは言いませんわ。あの、そう聞こえたのなら謝りましょう」

 素直に頭を下げるシャーロット。
 うん、ローラって背が高くてとってもスリム。
 まぁ、スリム過ぎ? ホント男装似合いそう…ごめん。

 「何がちがうのかしら?食べ物?公爵家や伯爵家はやっぱり良いものを食べてるから」

 あの…ローラ?
 「 いや、一番グラマーなのは平民のサリアだよ? 目指せ!一等書記官‼︎で頑張ってる大柄な娘」
 「あの娘も彼氏がいましたわね?やっぱり男性が不可欠?」
 「 いや、発想がやらしくなってるから。それにシャーロットは殆ど会えないのだから」
 「リスティア様と同様、私のお母様もグラマーなのにどうして私だけ?」
 「………」
 「突っ込んで下さらないと、とても虚しいですわ」

 何て言いようもないよ、ローラ?
 疲れた…。

 そこへカイルがやって来ました。
 あれ? 何か慌ててる?

 「お嬢!ドウンが戻りました」
 「レベッカに何かあったの? それとも『使徒モルド』が?」

 ドウンは学生でない為校内には入れません。
 校門横の来客待合室まで急ぎます。

 「ご無沙汰してます、お嬢様」
 「久しぶりです。元気にしてますか?ドウン。何か火急の用が?」
 「『使徒モルド』の動きと言うより回りの動きなのですが、例のキリーとスコットがサーモンド王国に入りました。お嬢様達の交流会に合わせたものと思われます。レベッカ様もサーモンドへ向かいました」
 「この三年間、何の動きもなかったのに」

 考えたくありませんが悪い予感しかしません。
 至急ルーク様にも報告です。

 「ああ。私にも報告が届いた。くそっ!結構大事な交流会だ。国の威信もかかる。今さら延期も中止もできない」

 天を仰ぐルーク様。

 後々『竜の災厄』と呼ばれた動乱の、これが始まりでした。
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