My hero, the world's villain

my hero

に

あれから数年。

貴族様に引き取られた私は、最低限の礼儀だけを教えられて貴族学校に入れられた。



「イサーク王子、ダンスは歓迎ですが…その…婚約者の方と踊らなくて良いのですか…？」



王子様にはオドオドとした態度で上目遣い。



「エドガルド様、貴方のひたむきな努力を、私は素晴らしいと思います」



騎士を目指す王子様の護衛には目を見てハッキリと。



「ティトさん、顔色が悪いですよ？魔術の研究ばかりでなく、たまには気分転換でもしましょうよ！」



天才魔導士には明るい笑顔で。



「ブラン様ぁ、次はいつお会いになってくださるのかしら」



公爵子息には媚びるような態度と甘えるような声を。



平民上がりの私の存在はもともと異質で。

それなのに学園で会う男性に、コロコロと態度を変えては頬を染める私の評判は最悪だった。



「やあねぇ。男性に媚びてばっかり」

「本当に。平民上がりで礼儀を知らないからって、何でも許されると思わないで欲しいわ」

「少し魔力が強いからって調子に乗って」

「あんなのに多くの殿方が骨抜きにされてしまうなんて」



廊下を歩いているだけの今でさえ、ヒソヒソと囁く声が聞こえる。

その囁きの中に、男性の声は1つも聞き取れない。

その不自然さに気付いている者は少なくないだろう。

私の破滅まで、もうそんなに時間は残っていない。