異世界で俺はチーター

田中 歩

文字の大きさ
上 下
40 / 124

{第三十八話} 「測定不可」

しおりを挟む
昨日、オレが吐いた事で騒ぎが起きたのが楽しかったのか、今日はオレを吐かせようと腹部を集中的に狙ってきた。

「今日も吐くのか?w」

「オラ!」
腹を数発殴られた。

「グッハ...」
殴られたオレは床に崩れ落ちる。

「ぜんぜん、吐かねぇぞ!」
吐きたく無かったオレは、その日の給食をあまり食べなかったのがよかったのか昨日より吐き気があまりしなかった。

「あ~、もうめんどくせぇ!」

「死なない程度に痛みつけるぞ」
そんななかなか吐かないのが気に食わなかったのか、全体的に殴り始めた。

「オラ!」

「グハッ」
痛すぎてどこが痛いのか分からない。

「も、もう十分だろ...?」

「それを決めるのはお前じゃねぇ~よ!」
強いけりが入ったのを機に意識が遠のいていくのが分かった。

(俺の出番がついに来たか...)

そんな声が聞こえた気がした...幻聴か...?「どうやらオレは死ぬな」と悟った...
そこからの記憶が無く気がついたら、俺は保健室のベットに居た。
目を開けると見覚えの無い天井で、最初はびっくりしたが部屋を見回すと、身体測定で来た覚えのある保健室だと分かった。
横を見ると、母が涙目でイスに座っていた。

「しょう、大丈夫なの?何があったの?」
どうやらオレがいじめられた事を聞いたようだ。

「クラスのヤツにやられたよ...」

「そう...一言でも相談してくれればよかったのに...」

「できねぇよ...そんなこと...」
気まずい雰囲気が流れたところに担任が校長と一緒にやってきた。

「今回は、こうなる前に気づかなくてすいませんでした」
何を言っている?オレは何回も先生に言ったぞ?そのたびに「冗談だろ?」「遊びだろ?」とか言って聞く耳を持たなかったし、挙句の果てには「しょうが本気で嫌がらないからいけないじゃないか?」と、オレが悪いみたいな事まで言われた。
先生達は面倒ごとはかかわりたくないのだろう、いじめを注意するのは先生の仕事の一つだろ。
しかも、今はまるで「私は気づかなかったんです。気づけばもちろん注意しましたよ?」みたいなオーラを放っていた。
一方校長は、この問題を大きくしたくないのか「どうか穏便に...」とか言ってる。
その日は学校を早退した。
車に乗って家に帰る途中

「あんな学校には無理して行かなくていいから」
どうやら校長達の対応を見て察したらしい。
その一言を理由にして次の日から学校を休んだ。
後日ほかのクラス友人に聞いた話だが、オレは一度気を失った後すぐに起き上がってまるで別人のように政宗達をボコボコにしたらしい。
中学二年生の一学期の時の話だ。

中一のころはみんな中学に慣れていなかったのもあるが、特にオレとぶつかる人間がクラス居なかったのが大きな理由だろう。
それでも学年には何人かいた。
中二になると、そんなヤツらが全員クラスメイトになった瞬間オレは「オレの中学校生活終わったな」とつぶやいたほどだ。
しかも最悪なことに、そのオレと中の悪いヤツら同士は中がよかった。
その中でもリーダー的な存在が「政宗」だった。
彼はクラスの中心的存在でもあった。

政宗とは小学校から一緒で、当時はいろんなことをオレのせいにする程度で済んでいたが、中学生になって少し知識を得るとそれをいじめに使うようになっていった。
いじめの標的にオレが選ばれたのは小学生だった時の事もあるのだろう。
不登校になったオレは暇な毎日を過ごしていた。

よく不登校や引きこもりは、ゲームやテレビばかりを見ていると言われるがオレはちがった。
確かに最初の数日はゲームばかりしていたがさすがに飽きが来て、最終的には家事をしていた。
そして、生活リズムが崩れて昼夜逆転するらしいが、夜10時に寝て朝6時に起きると言うしっかりした生活リズムを刻んでいた。
部屋が汚い事も無く、毎日掃除機を掛けたりしていたおかげで比較的に綺麗だった。
そんな事をしていくうちに家事全般がかなり上達していた。
上達していくにつれ家事のスピードが上がっていき、また暇になってくる。
そんなオレがアニメを見始めるのは必然だったのかもしれない。

「主人公最強系アニメ」にはまったのは、いじめられる弱い自分が嫌いで「異世界物」が好きなのはこの世界が嫌いだからだろう。
そうして、オレの中学二年生は終わった。

中学三年生になってクラスが変わったのを機にオレは学校に行くことにした。
何かが変わった様な気がしたからだ。
幸いにことに、政宗達とは別のクラスで人間関係に問題は無かったのだが、学校に行かないことの効果は大きかったらしく、新たな壁が出来ていた。
勉強についていけなくなってたのだ。
中二の勉強をぜんぜんしていなかったオレが中三の勉強についけるわけも無く、不登校とまでは行かなかったが毎日遅刻して学校に行っていた。
しかし3学期は、4時間目終わりに学校に行って給食を食べ5、6時間目は寝ていた。
結果、通信表の英語や数学、国語の欄には「測定不可」と書かれていた。
そんなオレが高校入試を一発合格できたのは奇跡だろう。
受験前に塾に行ったおかげの方が大きいだろうが...


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


「...さ...ん...」
「ショ..さ...ん...」
「ショ...ウ...さん...」
目を開けるとネラが心配そうな顔でオレを見ていた。
どうやら、オレは気を失って倒れて、今はネラのひざの上に居るらしい。
一瞬、ここは天国かと思ってしまった。
女性のひざの上は天国だと言っても過言では無いだろう...
そんなことはさておき...

「なにが起こった?状況は?さっきの敵は?」
普通に起き上がったオレを見て安心したのか、落ち着いたいつもの様子で質問に答えた。

「敵は全員ショウさんが倒されました。もう敵は来ないようです」

「そうか...オレは?どうしてここに?」
立ち上がったが体中が筋肉痛みたいに痛いし数箇所切り傷や打撲がある。

「森から逃げて来た敵を倒してこの場で倒れたので私が様子を見ていました」

「その時のオレの様子はどんな感じだった?」

「まるで別人のようでした」
そうか...やっぱり彼が...
どうやら、記憶とともに彼まで出てきたようだ。

「そういえば、姫様達は無事か?」

「はい」

「分かった、ネラは引き続き姫様達の護衛を頼む」

「分かりました」
ネラと一緒に姫様のところに行くとそこにはオレの出したシールドの中にミニメイドと一緒に居た。

「ショウさん、怪我は無いですか?」

「大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」
ふと、ミニメイドを見るとドヤ顔をして「ちゃんと守りましたよ!」「どうですか?」みたいなオーラを出している。
かわいい!実にかわいい!
取り合えず、ミニメイドを褒め頭をなでなですると満足したらしくピョンピョン飛び跳ねて消えていった。

「じゃ、オレは王のところに行ってくるから...」

「待ってください!回復魔法を掛けますので」

「おう、悪いな」
回復魔法を掛けてもらうと先ほどまでの筋肉痛のような痛みは無くなり、切り傷は消えたし体が軽くなったような気がした。

「ありがとう、楽になったよ」

「この場は頼んだぞ!」
この場はネラに任せて王の居る書斎へと急ぐ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界のんびり冒険者ギルド生活

みやび
ファンタジー
竜のお姫様に転生した少女と、冒険者ギルドの受付の人と、冒険者ギルドのおっさんの話 短編連作です。 基本的に毎日更新

愛する家族を勇者パーティーに惨殺された少年、【最強の魔剣】と【七大魔人の仲間】を手に入れ、勇者パーティーと世界の全てにざまぁ復讐していく

ハーーナ殿下
ファンタジー
 少年ラインは改心した魔族の元王女と、人族男性の間に生まれた子。人里離れた山奥で、美しい母親と幸せに暮らしていた。  だが合法の《魔族狩り》に来た残虐な六人の勇者によって、幸せな生活は一瞬で崩壊。辛うじて生き残ったラインは、見るも無残な母の亡骸の前で血の涙を流す。魔族公爵の叔父に拾われ、復讐のため魔界の七大試練に挑む。  時は流れ十四歳になったラインは、勇者育成学園に身分を隠し入学。目的は教師となった六人の勇者への完全な復讐。  これは最強の魔の力を会得した少年が、勇者候補を演じながら、勇者と世界を相手に復讐していく物語である。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...