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第12話 ドラゴンぐらし
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大空を自由に飛ぶ…それがなんと気持ちのいい事だろうか…。
勿論リューノスでも俺は空を飛んでいた…。
しかしこのどこまでも際限のないドラゴニアの大空を飛ぶのは、岩で囲われたリューノスの空では体感できない開放感と爽快感がある…自由であると実感できる。
おっと、空を飛ぶ事に夢中になっている場合ではないな…まずは当面の拠点となる住処を見付けなければ…。
軽くこの辺を飛び回って良さそうな所を見つけるか。
ティアマト母さんからの情報ではここドラゴニアではドラゴンは希少な存在であるらしい…謎の存在からの圧力が掛かっているらしく全ては聞き出せなかったが、ドラゴンは地上に存在してはいけないらしい、一部の例外を除いて…。
その例外が俺達兄弟の様な世界を支えるべく遣わされた『世界を保つ者』だ。
世界の要たる地脈、霊脈、水脈を守り管理する役割を担ったドラゴンたちをそう呼ぶらしい。
当然、俺達が来る前から『世界を保つ者』をしているドラゴンも存在する…所謂前任者って奴だ。
但し俺達新しい『世界を保つ者』が遣わされた時点で寿命を迎えてしまった者、年老いて役目を継続するのが困難な者もいる訳という事。
ここからが問題なのだが、母さん曰く…そのまま前任者と共存してもいいし、実力行使で強制的に役目を奪ってもいいと言う。
まず共存案…これは実質的に円満にテリトリーを譲ってもらえる可能性が高い。
前任者は当然既に年老いているので俺達に比べれば魔力も体力も落ちている…
だから争うまでも無く役割を譲ってもらえる場合がある…但し相手が聞き分けのいいドラゴンに限るが。
次に実力行使案…年老いても尚役目を遂行する事に拘るドラゴンが相手の場合…
そう言う輩は例外なく自分に対しての強い自信と高いプライドを持ち合わせているであろうから質《たち》が悪い。
相対すれば必ず戦闘行為に発展する事間違いなしだ…恐らく命のやり取りに発展するだろう。
今でもこの左手に感触として残っているが、同族をその手にかけると言うのはあまり気持ちの良いものでは無い…俺はなるべくこっちの手段は取りたくない。
だからまずは誰にも支配されていない土地を探してねぐらを造って落ち着きたいのだ。
「さてと…どこかに洞窟がある岩場は無いかな?」
空を飛行しながら様々な地形を物色する…しかし今飛んでいる場所は鬱蒼とした森林地帯で、その手の岩場は見つからない…もう少し行動範囲を広げてみようか。
幸い俺の前方にはぼんやりだが山岳が見えていた…あちらの方へ行ってみよう。
しかしあまり悠長にはしていられない…さっきも言ったように俺たちドラゴンは希少な存在だ…あまりその姿を長時間晒す訳にはいかない。
力のある存在は必ず畏怖の対象になり忌み嫌われる…もし人間やエルフなどに見つかれば要らぬ騒ぎが起こるかも知れない…最悪、討伐の対象にされかねないのだ。
少し移動したら一度地上に降りて身を隠した方がいいかも知れない…そんな事を考えながら飛行していると突然素早い何かが身体に中った感触があり、強烈に痺れるのを感じた。
「うわああああっ…!!一体何だ…!?」
俺は飛行を維持できず急降下、森に茂る樹木の中に落下して突っ込んでいった。
「いてててててて…!!」
バキバキと枝をへし折りながら暫く止まらず、太い木の幹に衝突する事でやっと止まる事が出来た。
「何だったんだ今のは…?」
あの痺れ具合は雷?電気? それに近い何かが俺に向かって放たれたのは確かだ…これは紛れもなく俺に敵意を持った者の仕業に違いない。
ドラゴンであるこの俺にここまでのダメージを負わせたんだ、それもかなりの力を持った者だろう…だとしたら人間やエルフの高位の魔導士か、或は考えたくはないが最悪の相手であることも考えなければならないだろう。
さて、こうなったからには俺もこのままやられっぱなしという訳にはいかない…
犯人を見つけて然るべき対処をしなければ俺のドラゴニア生活が脅かされるからな。
となればまず相手を探さねばならない…しかし空を飛ぶのは危険だ、また狙い撃ちされる恐れがある。
ここはこの森林の中を進むしかないな…偶然落下したとはいえこれだけ樹木が生えているんだ、遮蔽物代わりになって安全に進行できる。
俺は謎の攻撃が飛んで来たと思しき方向へと歩みを進めた。
しかしあの攻撃は速度といい、当たってからの感電効果といい、雷系の攻撃魔法の可能性が高い。
雷属性と言うと真っ先に俺の妹であるドラミを思い出すが、あいつが俺を狙ってくるとは考えられないしありえない。
暫く森の中を進むと遠くから葉や枝が擦れる音がする…森自体が騒めいている感じだ。
「なっ…これは…危ない!!」
空気の流れが乱れたのを大気中の水分から感じ取り咄嗟に身体を翻す…すると今まで俺が居た場所を光の束が目にも留まらぬ速さで通り抜けていった。
それが周りにプラズマをまき散らしながら進んでいったせいで、掠っても居ないのに身体が僅かに痺れた。
「何だ…!?これではまるでビーム砲じゃないか!!」
危なかった…さっきの様に空気中の水分の揺らぎを探知できるのが水属性である俺の固有能力だ。
しかし障害物があるのにどういう訳か相手は確実にこちらを狙ってくる。
どうなっているんだこれは?なぜ俺の位置が分かる?
相手がどうやって俺の位置を割り出しているのかを解明できなければやられる… このままの状態が長引けばいつか狙い打たれてジ・エンドだ。
冷静になれ…相手がこちらの位置を感知する方法はいくつかある、取り敢えず一つずつ検証して突き止めていこう。
まず前世で言う所の双眼鏡などの遠くを見通せる道具を使っている説…さすがにそれらがこの世界に存在する訳はないので、それに近い目を持っているか魔法で千里眼的な能力を増幅している場合だな。
だがこの説は検証するまでも無く除外だ…これだけ樹々が鬱蒼と茂っている時点でいくら遠くを見通せようとこちらを見付ける事は不可能だからだ。
次は音…こちらが移動する時に出る草を踏む音や枝が揺れる音を探知している説…これは大いにあり得る。
俺は一旦息を潜め、近くにある大樹に身を隠す…そして右手で右側に『水刃斬』を放った…音を頼りにしているのならば『水刃斬』が進んだ方向に攻撃してくるはず…さてどう出る?
暫くするとまた大気中の水分が騒めく…次の瞬間俺が隠れている大樹に光の束がヒット…俺が咄嗟にそこから離れた途端、光弾が通り抜けていく…少しでも避けるのが遅かったら俺の身体は大樹ごと貫かれる所であった。
「あっ…危ねぇ…」
俺は心の中で冷や汗を掻いた…ドラゴンは汗掻かないからな…。
となるとお次は温度…俺の体温を感知している説…しかしドラゴンはそもそも体温がすこぶる低い。
とはいえ樹木よりは熱を発している訳で…だからそいつを試すにはこれを使う…温度を司る魔法『温度操作』。
この魔法は今朝起きた時に発動したばかりの覚えたてほやほやの魔法だ。
しかしまさかこんな使いどころを限定するような魔法をすぐさま使う事になろうとは…世の中何が起こるか分からないな。
俺は早速『温度操作』を唱えた…見る見る下がる俺の体温…心なしか周りの気温が上がった気がしたがそれは全くの錯覚で、身体が冷えているから周りが熱く感じるのだ。
音で感知していないのは検証済みだから今度はこのままの状態で前に進む。
原因解明に時間を取られた遅れを取り返すべく少し走った…これならどうだ?
すると三度大気中の水が揺らめくのを感じた…マズいこのパターンは…。
俺はすぐさま地面に伏せた…すると光弾が俺の背中の表皮をかすめて通り過ぎて行ったではないか。
「あつっ…!!」
ちょっぴり背中に火傷が出来てしまった…まあこの程度ならじきに回復するから問題ない。
しかしこれは弱ったぞ…目視でもない、音でもない、温度でもない…一体相手はどんな能力を持って俺の居場所を正確に把握して攻撃しているのだ?
こちらも水分の揺らぎで危機を感知できるが、一瞬も気が抜けない以上こちらが相当不利だ。
考えろ…考えるんだ…まだ何か見落としがあるはずだ。
しかし焦れば焦る程頭の中は混乱し考えが纏まらなくなる。
言いようのない恐怖に俺は徐々に追い詰められていった。
勿論リューノスでも俺は空を飛んでいた…。
しかしこのどこまでも際限のないドラゴニアの大空を飛ぶのは、岩で囲われたリューノスの空では体感できない開放感と爽快感がある…自由であると実感できる。
おっと、空を飛ぶ事に夢中になっている場合ではないな…まずは当面の拠点となる住処を見付けなければ…。
軽くこの辺を飛び回って良さそうな所を見つけるか。
ティアマト母さんからの情報ではここドラゴニアではドラゴンは希少な存在であるらしい…謎の存在からの圧力が掛かっているらしく全ては聞き出せなかったが、ドラゴンは地上に存在してはいけないらしい、一部の例外を除いて…。
その例外が俺達兄弟の様な世界を支えるべく遣わされた『世界を保つ者』だ。
世界の要たる地脈、霊脈、水脈を守り管理する役割を担ったドラゴンたちをそう呼ぶらしい。
当然、俺達が来る前から『世界を保つ者』をしているドラゴンも存在する…所謂前任者って奴だ。
但し俺達新しい『世界を保つ者』が遣わされた時点で寿命を迎えてしまった者、年老いて役目を継続するのが困難な者もいる訳という事。
ここからが問題なのだが、母さん曰く…そのまま前任者と共存してもいいし、実力行使で強制的に役目を奪ってもいいと言う。
まず共存案…これは実質的に円満にテリトリーを譲ってもらえる可能性が高い。
前任者は当然既に年老いているので俺達に比べれば魔力も体力も落ちている…
だから争うまでも無く役割を譲ってもらえる場合がある…但し相手が聞き分けのいいドラゴンに限るが。
次に実力行使案…年老いても尚役目を遂行する事に拘るドラゴンが相手の場合…
そう言う輩は例外なく自分に対しての強い自信と高いプライドを持ち合わせているであろうから質《たち》が悪い。
相対すれば必ず戦闘行為に発展する事間違いなしだ…恐らく命のやり取りに発展するだろう。
今でもこの左手に感触として残っているが、同族をその手にかけると言うのはあまり気持ちの良いものでは無い…俺はなるべくこっちの手段は取りたくない。
だからまずは誰にも支配されていない土地を探してねぐらを造って落ち着きたいのだ。
「さてと…どこかに洞窟がある岩場は無いかな?」
空を飛行しながら様々な地形を物色する…しかし今飛んでいる場所は鬱蒼とした森林地帯で、その手の岩場は見つからない…もう少し行動範囲を広げてみようか。
幸い俺の前方にはぼんやりだが山岳が見えていた…あちらの方へ行ってみよう。
しかしあまり悠長にはしていられない…さっきも言ったように俺たちドラゴンは希少な存在だ…あまりその姿を長時間晒す訳にはいかない。
力のある存在は必ず畏怖の対象になり忌み嫌われる…もし人間やエルフなどに見つかれば要らぬ騒ぎが起こるかも知れない…最悪、討伐の対象にされかねないのだ。
少し移動したら一度地上に降りて身を隠した方がいいかも知れない…そんな事を考えながら飛行していると突然素早い何かが身体に中った感触があり、強烈に痺れるのを感じた。
「うわああああっ…!!一体何だ…!?」
俺は飛行を維持できず急降下、森に茂る樹木の中に落下して突っ込んでいった。
「いてててててて…!!」
バキバキと枝をへし折りながら暫く止まらず、太い木の幹に衝突する事でやっと止まる事が出来た。
「何だったんだ今のは…?」
あの痺れ具合は雷?電気? それに近い何かが俺に向かって放たれたのは確かだ…これは紛れもなく俺に敵意を持った者の仕業に違いない。
ドラゴンであるこの俺にここまでのダメージを負わせたんだ、それもかなりの力を持った者だろう…だとしたら人間やエルフの高位の魔導士か、或は考えたくはないが最悪の相手であることも考えなければならないだろう。
さて、こうなったからには俺もこのままやられっぱなしという訳にはいかない…
犯人を見つけて然るべき対処をしなければ俺のドラゴニア生活が脅かされるからな。
となればまず相手を探さねばならない…しかし空を飛ぶのは危険だ、また狙い撃ちされる恐れがある。
ここはこの森林の中を進むしかないな…偶然落下したとはいえこれだけ樹木が生えているんだ、遮蔽物代わりになって安全に進行できる。
俺は謎の攻撃が飛んで来たと思しき方向へと歩みを進めた。
しかしあの攻撃は速度といい、当たってからの感電効果といい、雷系の攻撃魔法の可能性が高い。
雷属性と言うと真っ先に俺の妹であるドラミを思い出すが、あいつが俺を狙ってくるとは考えられないしありえない。
暫く森の中を進むと遠くから葉や枝が擦れる音がする…森自体が騒めいている感じだ。
「なっ…これは…危ない!!」
空気の流れが乱れたのを大気中の水分から感じ取り咄嗟に身体を翻す…すると今まで俺が居た場所を光の束が目にも留まらぬ速さで通り抜けていった。
それが周りにプラズマをまき散らしながら進んでいったせいで、掠っても居ないのに身体が僅かに痺れた。
「何だ…!?これではまるでビーム砲じゃないか!!」
危なかった…さっきの様に空気中の水分の揺らぎを探知できるのが水属性である俺の固有能力だ。
しかし障害物があるのにどういう訳か相手は確実にこちらを狙ってくる。
どうなっているんだこれは?なぜ俺の位置が分かる?
相手がどうやって俺の位置を割り出しているのかを解明できなければやられる… このままの状態が長引けばいつか狙い打たれてジ・エンドだ。
冷静になれ…相手がこちらの位置を感知する方法はいくつかある、取り敢えず一つずつ検証して突き止めていこう。
まず前世で言う所の双眼鏡などの遠くを見通せる道具を使っている説…さすがにそれらがこの世界に存在する訳はないので、それに近い目を持っているか魔法で千里眼的な能力を増幅している場合だな。
だがこの説は検証するまでも無く除外だ…これだけ樹々が鬱蒼と茂っている時点でいくら遠くを見通せようとこちらを見付ける事は不可能だからだ。
次は音…こちらが移動する時に出る草を踏む音や枝が揺れる音を探知している説…これは大いにあり得る。
俺は一旦息を潜め、近くにある大樹に身を隠す…そして右手で右側に『水刃斬』を放った…音を頼りにしているのならば『水刃斬』が進んだ方向に攻撃してくるはず…さてどう出る?
暫くするとまた大気中の水分が騒めく…次の瞬間俺が隠れている大樹に光の束がヒット…俺が咄嗟にそこから離れた途端、光弾が通り抜けていく…少しでも避けるのが遅かったら俺の身体は大樹ごと貫かれる所であった。
「あっ…危ねぇ…」
俺は心の中で冷や汗を掻いた…ドラゴンは汗掻かないからな…。
となるとお次は温度…俺の体温を感知している説…しかしドラゴンはそもそも体温がすこぶる低い。
とはいえ樹木よりは熱を発している訳で…だからそいつを試すにはこれを使う…温度を司る魔法『温度操作』。
この魔法は今朝起きた時に発動したばかりの覚えたてほやほやの魔法だ。
しかしまさかこんな使いどころを限定するような魔法をすぐさま使う事になろうとは…世の中何が起こるか分からないな。
俺は早速『温度操作』を唱えた…見る見る下がる俺の体温…心なしか周りの気温が上がった気がしたがそれは全くの錯覚で、身体が冷えているから周りが熱く感じるのだ。
音で感知していないのは検証済みだから今度はこのままの状態で前に進む。
原因解明に時間を取られた遅れを取り返すべく少し走った…これならどうだ?
すると三度大気中の水が揺らめくのを感じた…マズいこのパターンは…。
俺はすぐさま地面に伏せた…すると光弾が俺の背中の表皮をかすめて通り過ぎて行ったではないか。
「あつっ…!!」
ちょっぴり背中に火傷が出来てしまった…まあこの程度ならじきに回復するから問題ない。
しかしこれは弱ったぞ…目視でもない、音でもない、温度でもない…一体相手はどんな能力を持って俺の居場所を正確に把握して攻撃しているのだ?
こちらも水分の揺らぎで危機を感知できるが、一瞬も気が抜けない以上こちらが相当不利だ。
考えろ…考えるんだ…まだ何か見落としがあるはずだ。
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