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第二章 首を突っ込み過ぎた?
第12話 わぁい!男の娘だらけの格闘大会 大将戦
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時はさかのぼる事少し前…
「まぁ~!!とっても良く似合っているわ~カワイイわよ~アキラちゃん」
真っ白いヘッドドレスにヒラヒラの凄いエプロンドレス、絶対領域が眩しいオーバーニーソックス。
メイド服を着たフワフワの短めツインテールが似合う少女が立っている。
映っているのが男の僕だと言う現実を除けば…
母さん…息子がカワイイと言われて嬉しい訳が無いだろう…
「ああ~!とうとう一線を越えてしまった~!」
心底落ち込む僕、終わった…僕の人生オワタ。
格好はこれでいいかも知れないが肝心の格闘能力の問題は解決されていない、そこの所はどうするんだ?
「さっきも言ったが、お前は生まれながらの男の娘、トランスファイターニャ!体の動きをイメージするだけでイツキ並みの凄い力が引き出せるはずニャ」
「僕が…イツキ並みに…強い?」
にわかには信じがたいが…
「大丈夫!ワシを信じるのニャ!」
いや!一番信じられないんですけど…
「準備も整ったし~戻りましょうか~」
「ええ?このカッコでみんなの前に出るの?嫌だよ僕!」
狼狽える僕。
「何を言っているニャ!試合に出るためのメイド服じゃニャいか!」
「い~や~だ~!恥ずかしくて死んでしまう~!」
柱にしがみ付く僕をカグラが引っ張る。
「もぉ~仕方ないわね~」
そう言って母さんはバッグからサングラスとマスクを取り出す。
「アキラちゃん~これを付けなさい~あ、そうだ~いっそ別人って事にしない~?バラ組に通りすがりのメイドさんが助っ人に現れた事にして~名前はそうね~アキラちゃんからアを取ってキラ…キララちゃんなんてどう~?」
「…分かったよ、それで妥協するよ…」
僕はマスクとサングラスを受け取った。
「ほれ!お前さんがグズグズしてるからすっかり遅くなったじゃニャいか!」
「あ~悪うございましたよ!」
僕らは試合会場まで走っていた。
「ジュンが心配だ!急がないと副将戦が始まってしまう!」
試合会場まであとわずかと言う所まで来た時、物凄い激突音と火花が見えた。
「勝負あり!副将戦勝者 ユリ組 仰木カナメ!」
みんながジュンを介抱している!そんな…間に合わなかった…!?
「しまったニャ!副将戦に間に合わなかったニャ!」
「もう!遅いですよカグラ様!たった今ジュンが負けてしまいました!」
ぐったりしたジュンの姿が見える…僕は少し離れた所で立ち止まってしまった、恐怖で足が震えてそれ以上前に進めなくなっていたのだ、これから僕はトランスアーツの試合に出なければならないのだ。
カグラとイツキ達のやり取りも頭に入ってこない。
僕が呆然としていると、カグラにグイッ!と腕を掴まれ、
「さっ…さすらいのメイド用心棒キララちゃんニャ!たまたま近くまで来ていたから雇ったニャ~」
おい!何だそのふざけた設定は!
思わず声を出しそうになったが堪える、声色でキララが僕であるとバレたら困るからだ!
ゴホゴホ!咳払いする僕、
「今日は~キララちゃん、のどの調子が悪いらしいの~だからしゃべれないけど仲良くしてあげてね~?」
「そう言う事なら…よろしくね!キララさん」
イツキが手を差し出して来たので思わず掴んでしまった!
「……あれ?」
イツキが小首を傾げる、まさか気付かれた?
「キララさん…手がとても冷たいのね」
あ、そっちですか?…ふぅ…心臓に悪い…え?イツキが僕の手を両手で包み込んで来る。
「でも何故かこうしていると凄く安心します、何ででしょうね…」
イツキ…ごめん…もの凄い罪悪感に襲われる僕。
「よく手が冷たい人は心が温かいって言いますよね、あなたは心が温かいから、きっと優しくて強い人、大将戦…お任せしますね」
僕は心の中で泣いていた、恥ずかしいとか、カッコ悪いとか、そんな事ばかり考えていた自分が情けない…
ここはダメで元々!やれるだけの事はやってやろうじゃないか!
格闘技経験は無くとも、格闘ゲームで培ったカンと格闘漫画で得た知識で挑んでやる!僕は腹を決めた。
「何だか得体の知れないのが出て来たピョンね…ユウ!大将戦は任せるピョン!」
「はっ!仰せのままに」
ルナが呼んだのはあの高飛車な銀髪赤ビキニ、ユウと言う名前なのか…
やっと名前が判明したな(笑)
「まさか大将戦までもつれ込むとは思ってなかった…一応褒めて差し上げるわね!」
相変わらずの上から目線である。
これまでの試合で得た情報を分析すると、ユリ組は一人目、先鋒戦で実力が一番下のチアキで様子を見、次鋒、中堅、副将で三連勝、あわよくばチアキが勝ちそのまま次の二人で連勝を狙っていたはずだ、現に次鋒からの試合に出て来た三人は異常な強さだった。
もしかするとだが、この赤ビキニのユウはさほど強くないのでは?リーダー気取りなのはこちらを欺く芝居である可能性がある。
だからと言って素人同然の僕が勝てるかどうかは全くの別問題だが…
「両者、中央へ!」
審判長が呼んでいる、大丈夫だ!さっきイツキから勇気を分けてもらった…もう怖くない!
「大将戦、ファイト!」
運命の大将戦が始まった!
「この団体戦もいい加減飽き飽きてきたわね、一気に決めさせてもらうわ!」
ユウは勢いを付けて倒立すると同時に開脚し回転しながら鋭いキックを繰り出した!
慌てて上体を反らし避ける僕、見える…見えるぞ…相手の動きが…
実はここに来る途中にカグラから受けたアドバイスがもう一つあった、
「アニマの使い方は工夫次第で無限大ニャ、攻撃力と防御力をアップするのが一般的ニャが、ハルカの様に治癒力に使えたり、視力や聴力等の五感の能力アップ等にも応用が利くニャ!」
僕はこの五感の能力向上にアニマを集中する事にしてみたのだ。
それが功を奏し、僕は次々と繰り出されるユウの逆さ蹴りを難なくかわしていった。
「何なのよあなた!私の攻撃が当たらないなんて…!」
ユウの格闘スタイルはカポエイラがベースの様だ、カポエイラとは蹴り技が主体の格闘技で、逆立ちしながらの蹴り技などもあり実にトリッキーだ。
まさかこんなにも自分が動けるとは思いもしなかった、カグラが僕をおだてたのは社交辞令的な物では無かったのか…
しかしここで問題なのはいかにしてユウに勝つかと言う事。
回避はこれで何とかなっているが、攻撃はどうしたらいいものか…
攻撃を避け続けていても相手を倒さない限り試合は終わらない訳で…
執拗にカポエイラの逆立ち状態で攻めて来るユウ、地面に着いている両腕をまるで足の様に使い前進しながら蹴りを放ってくる、何て腕力だ!
ユウの長い脚が丁度背の低い僕の顔辺りに来るのでリーチ的に僕が不利だ、それを踏まえての戦法なのだろう、ただ同じ事を長く続け過ぎては相手に対策を取られる事に気付くべきだ。
僕は、ユウが逆立ち状態で大股を開き大回転させる蹴りを出して来たのに合わせて素早くしゃがみ込み、足払いの要領で右足を地面スレスレで振り回すと
回転するために捻っている最中のユウの両手首を思い切り薙ぎ払った。
「きゃっ?」
半回転して地面に尻もちを付くユウ、チャンス!僕は思い切りアニマを集中させた両の掌でユウの胸元に掌底を叩き込んだ。
ドォン!
衝撃で吹き飛ばされるユウ!数メートル程地面を滑っていく。
ゲームならこの掌から気弾とか飛び出す所だ、もしトランスアーツを極めれば僕にも可能だろうか。
「おお!凄いぞ!謎のメイド戦士!」
ミナミが拳を突き挙げながら興奮気味に叫ぶ!
「キララはん!ジュンの無念、晴らしてんか~!」
アイも叫ぶ!珍しくいつもより語気が荒い気がする。
応援されるのは悪い気はしない、何だか照れくさいけど、調子に乗って軽く手を振り声援に応える。
「キララちゃん気を付けて!彼女はまだダウンしてないわ!」
「!」
土煙を裂いてユウが猛スピードで僕に襲い掛かる!虚を突かれたせいで対応が遅れ、左の掌に顔を掴まれてしまった!プロレス技にあるアイアンクローだ!
瞬時に後ろに転がる様に退避するも、僕の掛けていたサングラスは跡形も無く握りつぶされた、
ユウの掌からこぼれ落ちる黒い破片、危ない危ない!あの握力で顔を掴まれたら頭蓋骨がグシャグシャだ、さすが逆立ちで鍛えているだけあって腕力や握力は伊達ではない。
これで目を隠す物が無くなってしまった、一応こんな事もあろうかと母さんにメイクしてもらっていたが正体はバレてないかな?!
「よくもやってくれたわね~!!」
今までの余裕の表情はどこへやら、鬼の形相で僕を睨みつけるユウ。
あの掌底、僕としては会心の攻撃だったのだがユウを仕留めるには力不足だった様だ、やはり付け焼刃が通じる程甘くは無かったか…
怒り心頭のユウは、さっきまでとは打って変わって、腕力に物を言わせてなりふり構わず熊手の様に折り曲げた指を振りかざし襲い掛かって来た。
速い!怒りでパワーアップしているのか?アニマに依る五感ブーストを使っている僕でも先程の様に避けきる事が出来ない!ユウの爪がかする度に少しずつ破かれていく僕のメイド服!
やむなく腕でガードするも、攻撃を受けた箇所に激痛が走る!
「くぅ!」
痛い!たまらず声を上げてしまった、イツキ達はいつもこんな痛みに耐えて戦った来たのか?
「さっきまでの勢いはどうしたのかしら?!ちびっ子メイドさん!」
今がチャンスと見るやユウも攻撃の手を緩めようとはしなかった、次々と繰り出されるクロー攻撃
これは完全に経験の差が出たのだと思う、僕は明らかに集中力が低下しアニマの制御がまま成らなくなって来ている、もう相手の攻撃がどこから来るのか察知出来ない。
一か月前からトランスアーツの修行を開始していたあのイツキでさえ女性化維持が出来る様になったのがついさっきなのだ、ほんの数分前からトランスアーツを始めた僕が長時間続けるのは無理と言うもの、遂にダメージの蓄積が膝に来てガクガクと震えだし、そのまま片膝をついてしまった。
「もうお遊びはお終いよ!」
僕の眼前でユウが思い切り両腕を左右に振りかぶる!
万事休す!もはやこれまで…ゴメンみんな!
と…覚悟を決めた次の瞬間、ユウに異変が起こった。
決め技の予備動作、両腕を左右方向からやや後ろに振った際に、胸の赤ビキニのカップ部分の中央の留め具がはじけ飛んだのだ!
ぷるんっ!と盛大に踊るユウのたわわな二つの果実…おっ大きい!みんなの視線がその一点に集中する。
「いっ…いやあああああああああああっ?」
慌ててその大きな胸を両腕で覆い隠すユウ、しかし殆ど隠しきれてない…羞恥の表情で顔をブンブン振り、身をよじる。
そうか!僕がユウの胸に向けて放ったダブル掌底がビキニの生地にダメージを与えていたのか!
突然訪れたラッキースケベ状態を無駄にはしない!
次の瞬間、僕はユウ目がけて飛び込んでいた、一度だけ…あと一度だけ僕のアニマよ力を見せろ!
飛び膝蹴りの体制のまま宙に舞い右膝に全アニマを集中する!光輝く僕の膝!
よぉ~し!この攻撃に全てを賭ける!
「行っけ~!!!」
ハッと我に返るユウだが時すでに遅し、僕の膝が視界の一番近い所まで迫っている、
もう回避もガードも間に合わない。
ゴゴンッ!
ユウの顎を僕の右膝が捉える!そのまま横っ飛びにすっ飛んでいくユウ!
地面で何度かバウンドし、そのままフィールドに横たわる…やったか…?
宮野審判長がユウの状態を確認しに走る、ここに居るみんなが固唾を呑んでその様子を見守る、
顔を覗き込みすぐに両腕が大きく振られた!
「ノックアウト!大将戦勝者 バラ組 キララ!!」
「まぁ~!!とっても良く似合っているわ~カワイイわよ~アキラちゃん」
真っ白いヘッドドレスにヒラヒラの凄いエプロンドレス、絶対領域が眩しいオーバーニーソックス。
メイド服を着たフワフワの短めツインテールが似合う少女が立っている。
映っているのが男の僕だと言う現実を除けば…
母さん…息子がカワイイと言われて嬉しい訳が無いだろう…
「ああ~!とうとう一線を越えてしまった~!」
心底落ち込む僕、終わった…僕の人生オワタ。
格好はこれでいいかも知れないが肝心の格闘能力の問題は解決されていない、そこの所はどうするんだ?
「さっきも言ったが、お前は生まれながらの男の娘、トランスファイターニャ!体の動きをイメージするだけでイツキ並みの凄い力が引き出せるはずニャ」
「僕が…イツキ並みに…強い?」
にわかには信じがたいが…
「大丈夫!ワシを信じるのニャ!」
いや!一番信じられないんですけど…
「準備も整ったし~戻りましょうか~」
「ええ?このカッコでみんなの前に出るの?嫌だよ僕!」
狼狽える僕。
「何を言っているニャ!試合に出るためのメイド服じゃニャいか!」
「い~や~だ~!恥ずかしくて死んでしまう~!」
柱にしがみ付く僕をカグラが引っ張る。
「もぉ~仕方ないわね~」
そう言って母さんはバッグからサングラスとマスクを取り出す。
「アキラちゃん~これを付けなさい~あ、そうだ~いっそ別人って事にしない~?バラ組に通りすがりのメイドさんが助っ人に現れた事にして~名前はそうね~アキラちゃんからアを取ってキラ…キララちゃんなんてどう~?」
「…分かったよ、それで妥協するよ…」
僕はマスクとサングラスを受け取った。
「ほれ!お前さんがグズグズしてるからすっかり遅くなったじゃニャいか!」
「あ~悪うございましたよ!」
僕らは試合会場まで走っていた。
「ジュンが心配だ!急がないと副将戦が始まってしまう!」
試合会場まであとわずかと言う所まで来た時、物凄い激突音と火花が見えた。
「勝負あり!副将戦勝者 ユリ組 仰木カナメ!」
みんながジュンを介抱している!そんな…間に合わなかった…!?
「しまったニャ!副将戦に間に合わなかったニャ!」
「もう!遅いですよカグラ様!たった今ジュンが負けてしまいました!」
ぐったりしたジュンの姿が見える…僕は少し離れた所で立ち止まってしまった、恐怖で足が震えてそれ以上前に進めなくなっていたのだ、これから僕はトランスアーツの試合に出なければならないのだ。
カグラとイツキ達のやり取りも頭に入ってこない。
僕が呆然としていると、カグラにグイッ!と腕を掴まれ、
「さっ…さすらいのメイド用心棒キララちゃんニャ!たまたま近くまで来ていたから雇ったニャ~」
おい!何だそのふざけた設定は!
思わず声を出しそうになったが堪える、声色でキララが僕であるとバレたら困るからだ!
ゴホゴホ!咳払いする僕、
「今日は~キララちゃん、のどの調子が悪いらしいの~だからしゃべれないけど仲良くしてあげてね~?」
「そう言う事なら…よろしくね!キララさん」
イツキが手を差し出して来たので思わず掴んでしまった!
「……あれ?」
イツキが小首を傾げる、まさか気付かれた?
「キララさん…手がとても冷たいのね」
あ、そっちですか?…ふぅ…心臓に悪い…え?イツキが僕の手を両手で包み込んで来る。
「でも何故かこうしていると凄く安心します、何ででしょうね…」
イツキ…ごめん…もの凄い罪悪感に襲われる僕。
「よく手が冷たい人は心が温かいって言いますよね、あなたは心が温かいから、きっと優しくて強い人、大将戦…お任せしますね」
僕は心の中で泣いていた、恥ずかしいとか、カッコ悪いとか、そんな事ばかり考えていた自分が情けない…
ここはダメで元々!やれるだけの事はやってやろうじゃないか!
格闘技経験は無くとも、格闘ゲームで培ったカンと格闘漫画で得た知識で挑んでやる!僕は腹を決めた。
「何だか得体の知れないのが出て来たピョンね…ユウ!大将戦は任せるピョン!」
「はっ!仰せのままに」
ルナが呼んだのはあの高飛車な銀髪赤ビキニ、ユウと言う名前なのか…
やっと名前が判明したな(笑)
「まさか大将戦までもつれ込むとは思ってなかった…一応褒めて差し上げるわね!」
相変わらずの上から目線である。
これまでの試合で得た情報を分析すると、ユリ組は一人目、先鋒戦で実力が一番下のチアキで様子を見、次鋒、中堅、副将で三連勝、あわよくばチアキが勝ちそのまま次の二人で連勝を狙っていたはずだ、現に次鋒からの試合に出て来た三人は異常な強さだった。
もしかするとだが、この赤ビキニのユウはさほど強くないのでは?リーダー気取りなのはこちらを欺く芝居である可能性がある。
だからと言って素人同然の僕が勝てるかどうかは全くの別問題だが…
「両者、中央へ!」
審判長が呼んでいる、大丈夫だ!さっきイツキから勇気を分けてもらった…もう怖くない!
「大将戦、ファイト!」
運命の大将戦が始まった!
「この団体戦もいい加減飽き飽きてきたわね、一気に決めさせてもらうわ!」
ユウは勢いを付けて倒立すると同時に開脚し回転しながら鋭いキックを繰り出した!
慌てて上体を反らし避ける僕、見える…見えるぞ…相手の動きが…
実はここに来る途中にカグラから受けたアドバイスがもう一つあった、
「アニマの使い方は工夫次第で無限大ニャ、攻撃力と防御力をアップするのが一般的ニャが、ハルカの様に治癒力に使えたり、視力や聴力等の五感の能力アップ等にも応用が利くニャ!」
僕はこの五感の能力向上にアニマを集中する事にしてみたのだ。
それが功を奏し、僕は次々と繰り出されるユウの逆さ蹴りを難なくかわしていった。
「何なのよあなた!私の攻撃が当たらないなんて…!」
ユウの格闘スタイルはカポエイラがベースの様だ、カポエイラとは蹴り技が主体の格闘技で、逆立ちしながらの蹴り技などもあり実にトリッキーだ。
まさかこんなにも自分が動けるとは思いもしなかった、カグラが僕をおだてたのは社交辞令的な物では無かったのか…
しかしここで問題なのはいかにしてユウに勝つかと言う事。
回避はこれで何とかなっているが、攻撃はどうしたらいいものか…
攻撃を避け続けていても相手を倒さない限り試合は終わらない訳で…
執拗にカポエイラの逆立ち状態で攻めて来るユウ、地面に着いている両腕をまるで足の様に使い前進しながら蹴りを放ってくる、何て腕力だ!
ユウの長い脚が丁度背の低い僕の顔辺りに来るのでリーチ的に僕が不利だ、それを踏まえての戦法なのだろう、ただ同じ事を長く続け過ぎては相手に対策を取られる事に気付くべきだ。
僕は、ユウが逆立ち状態で大股を開き大回転させる蹴りを出して来たのに合わせて素早くしゃがみ込み、足払いの要領で右足を地面スレスレで振り回すと
回転するために捻っている最中のユウの両手首を思い切り薙ぎ払った。
「きゃっ?」
半回転して地面に尻もちを付くユウ、チャンス!僕は思い切りアニマを集中させた両の掌でユウの胸元に掌底を叩き込んだ。
ドォン!
衝撃で吹き飛ばされるユウ!数メートル程地面を滑っていく。
ゲームならこの掌から気弾とか飛び出す所だ、もしトランスアーツを極めれば僕にも可能だろうか。
「おお!凄いぞ!謎のメイド戦士!」
ミナミが拳を突き挙げながら興奮気味に叫ぶ!
「キララはん!ジュンの無念、晴らしてんか~!」
アイも叫ぶ!珍しくいつもより語気が荒い気がする。
応援されるのは悪い気はしない、何だか照れくさいけど、調子に乗って軽く手を振り声援に応える。
「キララちゃん気を付けて!彼女はまだダウンしてないわ!」
「!」
土煙を裂いてユウが猛スピードで僕に襲い掛かる!虚を突かれたせいで対応が遅れ、左の掌に顔を掴まれてしまった!プロレス技にあるアイアンクローだ!
瞬時に後ろに転がる様に退避するも、僕の掛けていたサングラスは跡形も無く握りつぶされた、
ユウの掌からこぼれ落ちる黒い破片、危ない危ない!あの握力で顔を掴まれたら頭蓋骨がグシャグシャだ、さすが逆立ちで鍛えているだけあって腕力や握力は伊達ではない。
これで目を隠す物が無くなってしまった、一応こんな事もあろうかと母さんにメイクしてもらっていたが正体はバレてないかな?!
「よくもやってくれたわね~!!」
今までの余裕の表情はどこへやら、鬼の形相で僕を睨みつけるユウ。
あの掌底、僕としては会心の攻撃だったのだがユウを仕留めるには力不足だった様だ、やはり付け焼刃が通じる程甘くは無かったか…
怒り心頭のユウは、さっきまでとは打って変わって、腕力に物を言わせてなりふり構わず熊手の様に折り曲げた指を振りかざし襲い掛かって来た。
速い!怒りでパワーアップしているのか?アニマに依る五感ブーストを使っている僕でも先程の様に避けきる事が出来ない!ユウの爪がかする度に少しずつ破かれていく僕のメイド服!
やむなく腕でガードするも、攻撃を受けた箇所に激痛が走る!
「くぅ!」
痛い!たまらず声を上げてしまった、イツキ達はいつもこんな痛みに耐えて戦った来たのか?
「さっきまでの勢いはどうしたのかしら?!ちびっ子メイドさん!」
今がチャンスと見るやユウも攻撃の手を緩めようとはしなかった、次々と繰り出されるクロー攻撃
これは完全に経験の差が出たのだと思う、僕は明らかに集中力が低下しアニマの制御がまま成らなくなって来ている、もう相手の攻撃がどこから来るのか察知出来ない。
一か月前からトランスアーツの修行を開始していたあのイツキでさえ女性化維持が出来る様になったのがついさっきなのだ、ほんの数分前からトランスアーツを始めた僕が長時間続けるのは無理と言うもの、遂にダメージの蓄積が膝に来てガクガクと震えだし、そのまま片膝をついてしまった。
「もうお遊びはお終いよ!」
僕の眼前でユウが思い切り両腕を左右に振りかぶる!
万事休す!もはやこれまで…ゴメンみんな!
と…覚悟を決めた次の瞬間、ユウに異変が起こった。
決め技の予備動作、両腕を左右方向からやや後ろに振った際に、胸の赤ビキニのカップ部分の中央の留め具がはじけ飛んだのだ!
ぷるんっ!と盛大に踊るユウのたわわな二つの果実…おっ大きい!みんなの視線がその一点に集中する。
「いっ…いやあああああああああああっ?」
慌ててその大きな胸を両腕で覆い隠すユウ、しかし殆ど隠しきれてない…羞恥の表情で顔をブンブン振り、身をよじる。
そうか!僕がユウの胸に向けて放ったダブル掌底がビキニの生地にダメージを与えていたのか!
突然訪れたラッキースケベ状態を無駄にはしない!
次の瞬間、僕はユウ目がけて飛び込んでいた、一度だけ…あと一度だけ僕のアニマよ力を見せろ!
飛び膝蹴りの体制のまま宙に舞い右膝に全アニマを集中する!光輝く僕の膝!
よぉ~し!この攻撃に全てを賭ける!
「行っけ~!!!」
ハッと我に返るユウだが時すでに遅し、僕の膝が視界の一番近い所まで迫っている、
もう回避もガードも間に合わない。
ゴゴンッ!
ユウの顎を僕の右膝が捉える!そのまま横っ飛びにすっ飛んでいくユウ!
地面で何度かバウンドし、そのままフィールドに横たわる…やったか…?
宮野審判長がユウの状態を確認しに走る、ここに居るみんなが固唾を呑んでその様子を見守る、
顔を覗き込みすぐに両腕が大きく振られた!
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