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第4章
1 握手会②
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ジークス……!!
手前からちるぴこと充琉、次に矢凪、そして一番奥にZee様。
奥の二人の前には握手している女の子が一人ずつ、そして黒服のスタッフが数名。
急に異世界に入った感覚になって、私は思わず立ち止まってしまった。
想像していたよりもずっと近い位置に、すぐ目の前にZYXがいる――!
「こんにちは~!」
ちるぴが私に向かって両手を振りながら笑顔を見せている。
そこに近づいて、差し出された手を握った。
どうしよう、人生で出会ったことないレベルの美人。
ちるぴってこんな美人なの? え、これつけまつげじゃないよね? なっが。そして顔ちっちゃ。しかも私より背が高い。いや当たり前。でもちっちゃくてかわいいと思ってたちるぴが私を見下ろしてるなんて……! あああどうしよう。
「あのっ、私伊月っていうんですけど……」
「いつきさん、こんにちは」
うわぁぁ、ちるぴが名前呼んでくれた! 死んじゃう。
「こんにちは、あの、私、ジークスの絵を描いてプレゼントボックスに入れたので、後で三人で見てください!!」
「え、いつきさんってもしかして、伊月さん?」
「え?」
「SNSで俺たち描いてくれてる人じゃない?」
「か、描いてます……えっ」
「やっぱり! 伊月さん知ってるよ~。いつもありがとうね!」
「えっ、えっ……あっ……、え?」
うろたえている間に、スタッフに促されて次の矢凪のほうに移動させられた。
ああ、ちるぴにお礼言えなかった~。
内心嘆いている間に、ちるぴが後ろから声を掛ける。
「矢凪、伊月さんだって!」
「いつきさん?」
「ほら、この前みんなで見てたイラストの! 町田さんがさ……」
「あ~」
涼しげな眼差しがちるぴからこちらへと移り、バチリと目が合うと同時に指の長い骨ばった手が差し出された。それを、あわあわしながら握る。
「絵の人。ありがとう」
「あっありがとうございますこちらこそ!」
どうしよう、矢凪、生で見ると信じられないくらいかっこいいんですけど……!?
肌サラッサラだし、ライトグレーのカラコンがクールすぎてやばい。これはもう人外。目がつぶれる。
「あのっ、弟が矢凪くんの大ファンでっ」
「まじで? 男性ファン嬉しい」
「いつも一緒に観てます! 応援してます!」
「弟さんなんて名前?」
「あっ、瑞月です」
「みづきくんによろしくね」
そう言いながら見せた矢凪の笑顔の破壊力が凄すぎて、倒れそうになった。
間近で見るクールな男矢凪のアイドルスマイル――プライスレス。
そして、矢凪との握手を終えて隣を見たら、息の根を止めにきたのかと思うほど突き抜けたオーラを放つZee様が。
「こんにちは~」
後ろだけ結わえられた、ピンクのメッシュが入ったホワイトベージュの髪。
その下に覗く切れ長の瞳が、私を映して微笑んでいる。
差し出された大きな手を両手で握ると、Zee様がその上にもう片方の手を重ねた。
ああ、どうしよう。
Zee様の手が私の手を包んでる。
これは現実なんだろうか。
ずっと画面越しに見てきた麗しい瞳は、まっすぐに私を見つめている。
ああ、だめだ。
伝えたいこと、ちゃんと伝えなきゃいけないのに、言葉が詰まって、キラキラと光を放つ瞳に全身を縛られたまま、動けない。
「伊月さんでしょ? 聞こえてた。いつもかっこよく描いてくれてありがとう」
落ち着いた声。私だけに向けられる、夢のように美しくて神々しい笑顔。
「イラストのお仕事してる人?」
何も言えなくなってるせいで、まさかのZee様に質問させてしまう不覚。
ちゃんとこっちから話さなきゃ。伝えなきゃ。
「あ……いえ、仕事はプロダクトデザイナーで……、あの、私」
「うん」
見守る瞳のあまりの優しさに泣きそうになって、私は思わず俯いた。
「いつもZee様のクリエイションへの姿勢にすごく刺激を受けてて……本当に学ぶことが多くて」
とそこで、スタッフが私の肩に触れた。
時間切れだ。
ああ、最後まで言えなかった。
でも仕方ない。Zee様に圧倒されてすぐに言葉を出せなかった私が悪い。
そう思い、諦めて手を離そうとしたら――。
手が離れない。
Zee様が握ったまま離さない。
驚いて顔を上げると、やわらかな瞳が言葉を促すように合図してる。
私は慌てて声を絞り出した。
「ジャ……ジャンルは違うけど、同じクリエイターとして、いつもすごく支えられてます。尊敬しています! 大好きです!」
言えた――!
「うん、ありがとう」
包み込むような笑顔を見せるZee様。
スタッフがいよいよ私の肩を押して、手が離れる。
「伊月さん、またイラスト描いてね~」
Zee様は両腕で大きなハートを作って、私を見送ってくれた。
その姿を最後に、私の握手会は終わった。
神対応すぎ死んだ――。
手前からちるぴこと充琉、次に矢凪、そして一番奥にZee様。
奥の二人の前には握手している女の子が一人ずつ、そして黒服のスタッフが数名。
急に異世界に入った感覚になって、私は思わず立ち止まってしまった。
想像していたよりもずっと近い位置に、すぐ目の前にZYXがいる――!
「こんにちは~!」
ちるぴが私に向かって両手を振りながら笑顔を見せている。
そこに近づいて、差し出された手を握った。
どうしよう、人生で出会ったことないレベルの美人。
ちるぴってこんな美人なの? え、これつけまつげじゃないよね? なっが。そして顔ちっちゃ。しかも私より背が高い。いや当たり前。でもちっちゃくてかわいいと思ってたちるぴが私を見下ろしてるなんて……! あああどうしよう。
「あのっ、私伊月っていうんですけど……」
「いつきさん、こんにちは」
うわぁぁ、ちるぴが名前呼んでくれた! 死んじゃう。
「こんにちは、あの、私、ジークスの絵を描いてプレゼントボックスに入れたので、後で三人で見てください!!」
「え、いつきさんってもしかして、伊月さん?」
「え?」
「SNSで俺たち描いてくれてる人じゃない?」
「か、描いてます……えっ」
「やっぱり! 伊月さん知ってるよ~。いつもありがとうね!」
「えっ、えっ……あっ……、え?」
うろたえている間に、スタッフに促されて次の矢凪のほうに移動させられた。
ああ、ちるぴにお礼言えなかった~。
内心嘆いている間に、ちるぴが後ろから声を掛ける。
「矢凪、伊月さんだって!」
「いつきさん?」
「ほら、この前みんなで見てたイラストの! 町田さんがさ……」
「あ~」
涼しげな眼差しがちるぴからこちらへと移り、バチリと目が合うと同時に指の長い骨ばった手が差し出された。それを、あわあわしながら握る。
「絵の人。ありがとう」
「あっありがとうございますこちらこそ!」
どうしよう、矢凪、生で見ると信じられないくらいかっこいいんですけど……!?
肌サラッサラだし、ライトグレーのカラコンがクールすぎてやばい。これはもう人外。目がつぶれる。
「あのっ、弟が矢凪くんの大ファンでっ」
「まじで? 男性ファン嬉しい」
「いつも一緒に観てます! 応援してます!」
「弟さんなんて名前?」
「あっ、瑞月です」
「みづきくんによろしくね」
そう言いながら見せた矢凪の笑顔の破壊力が凄すぎて、倒れそうになった。
間近で見るクールな男矢凪のアイドルスマイル――プライスレス。
そして、矢凪との握手を終えて隣を見たら、息の根を止めにきたのかと思うほど突き抜けたオーラを放つZee様が。
「こんにちは~」
後ろだけ結わえられた、ピンクのメッシュが入ったホワイトベージュの髪。
その下に覗く切れ長の瞳が、私を映して微笑んでいる。
差し出された大きな手を両手で握ると、Zee様がその上にもう片方の手を重ねた。
ああ、どうしよう。
Zee様の手が私の手を包んでる。
これは現実なんだろうか。
ずっと画面越しに見てきた麗しい瞳は、まっすぐに私を見つめている。
ああ、だめだ。
伝えたいこと、ちゃんと伝えなきゃいけないのに、言葉が詰まって、キラキラと光を放つ瞳に全身を縛られたまま、動けない。
「伊月さんでしょ? 聞こえてた。いつもかっこよく描いてくれてありがとう」
落ち着いた声。私だけに向けられる、夢のように美しくて神々しい笑顔。
「イラストのお仕事してる人?」
何も言えなくなってるせいで、まさかのZee様に質問させてしまう不覚。
ちゃんとこっちから話さなきゃ。伝えなきゃ。
「あ……いえ、仕事はプロダクトデザイナーで……、あの、私」
「うん」
見守る瞳のあまりの優しさに泣きそうになって、私は思わず俯いた。
「いつもZee様のクリエイションへの姿勢にすごく刺激を受けてて……本当に学ぶことが多くて」
とそこで、スタッフが私の肩に触れた。
時間切れだ。
ああ、最後まで言えなかった。
でも仕方ない。Zee様に圧倒されてすぐに言葉を出せなかった私が悪い。
そう思い、諦めて手を離そうとしたら――。
手が離れない。
Zee様が握ったまま離さない。
驚いて顔を上げると、やわらかな瞳が言葉を促すように合図してる。
私は慌てて声を絞り出した。
「ジャ……ジャンルは違うけど、同じクリエイターとして、いつもすごく支えられてます。尊敬しています! 大好きです!」
言えた――!
「うん、ありがとう」
包み込むような笑顔を見せるZee様。
スタッフがいよいよ私の肩を押して、手が離れる。
「伊月さん、またイラスト描いてね~」
Zee様は両腕で大きなハートを作って、私を見送ってくれた。
その姿を最後に、私の握手会は終わった。
神対応すぎ死んだ――。
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