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本編
幻術と焦り
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ここに来る直前、デューラがリューズニルに出ている魔獣について教えてくれていたことを思い出した。
「敵の魔獣の正体は不明ですが、幻術を使って攻撃してくる魔獣です。特に注意すべきは幻術であるというのに、ダメージを受けると…」
「関係なくダメージを受けるってか?」
「はい。当然、致命傷を受ければ死ぬこともあります」
まったく理不尽な。まぁいいか。
「範囲もかなり広範囲で……」
「OK、じゃあ送ってくれ」
「……まだお伝えしたい情報が…」
「ユーリアが救援要請ってことはよっぽどの事なんだろ?なら時間が惜しい。頼む」
「…わかりました、しっかり掴まってください」
そう言って飛んできたのだ。デューラは確かに幻術があると言っていた。……だがおかしい。
「……おいシエル。お前、今何が見えてる?」
「………ん、きが…たくさ、ん。もり?」
シエルと俺が見えている光景と同じらしい。デューラにも聞いてみたところ、同じ答えが返ってきた。
しかし俺に幻術の類は効かないはずだ。理屈はよくわからんが、スキルの関係で幻術は一瞬で見破る事が出来る。
「──恐らく海魔の類です。過去の報告によると幻術を扱うタイプの海魔は何体かいたようですがここまで広範囲の個体はいませんでした。ダメージが反映される個体も一体しか存在せず、ダメージがすべて致命傷になることもなかったようです」
「そうか、わかった。了解」
どういうことだ。ちょっと待て、今結構焦ってるから。海魔が何とか知りたいけどそれどころじゃないから。
さわさわと風が木の葉を揺らす。完全に本物としか思えないが、デューラの言葉を信じるのならここは港らしい。
試しにそこらの木をじっと見つめてみるが、変化はない。
『なら答えは簡単だろ。お前が差異を感じないぐらい完璧な幻術って事だな』
シャルが落ち着いた声音で言う。
違いを感じないレベルで完璧ってことは具体的にどういうことなんだ?
『そうだな……多分この場合は、お前自身が既に術にハマってるんだろうな』
?
『相手の力量が化物級ってこともあるだろうが、最初に目にした時、森だと認識した時点でお前にとってここは森になった。だから差異はない。だってお前は森って認識してるんだから、そもそも差異が生まれない。加えて本来のリューズニルの街並みだのなんだのは一度も見たことがないんだ、なおさらかかりやすかっただろうな』
なる…ほど。
「あの……どうかしましたか?」
いきなり黙った俺を不審に思ったのかデューラが声をかけてきた。
「いや、ちょっと考え事をな」
「そうですか…すでにここは敵の手の中です、気を抜かぬよう気をつけてください。加えて、ついさっき私がいた時とは違う幻術になっています。気を付けて」
「そうか。ふむ、とりあえず……そうだな」
………よし、決めた。
「敵がどんな奴かわからんからな、まずはユーリアと合流しよう。デューラ、どっちの方にいるとかわか──」
わからないか?と聞こうと振り返った瞬間だった。
突然真横から何かが飛んできて、デューラを吹き飛ばした。
「なんっ!?」
即座に銀剣を抜き、俺にも飛んできたそれをカウンター気味に刃のついた面で切り飛ばす。
「ふッ‼」
金属同士がぶつかったような不協和音が響き、銀剣が飛行物体を切り落とした。
「………これは…」
落ちたものを見ると、何か硬く鋭いものの破片のようだった。はて、どこかで見たことがあるような。
鈍く武骨な輝きを放つそれを拾い上げようとした時、僅かに表面が濡れていることに気づく。
『毒だな』
俺と同じ答えを出したらしいシャルがそう言う。
そして、毒がついた鉄片なんてものは攻撃以外の用途で使われるわけがないもので。
「!!」
顔を上げた時には、既に無数の鉄片が毒と共に飛んできていた。
「敵の魔獣の正体は不明ですが、幻術を使って攻撃してくる魔獣です。特に注意すべきは幻術であるというのに、ダメージを受けると…」
「関係なくダメージを受けるってか?」
「はい。当然、致命傷を受ければ死ぬこともあります」
まったく理不尽な。まぁいいか。
「範囲もかなり広範囲で……」
「OK、じゃあ送ってくれ」
「……まだお伝えしたい情報が…」
「ユーリアが救援要請ってことはよっぽどの事なんだろ?なら時間が惜しい。頼む」
「…わかりました、しっかり掴まってください」
そう言って飛んできたのだ。デューラは確かに幻術があると言っていた。……だがおかしい。
「……おいシエル。お前、今何が見えてる?」
「………ん、きが…たくさ、ん。もり?」
シエルと俺が見えている光景と同じらしい。デューラにも聞いてみたところ、同じ答えが返ってきた。
しかし俺に幻術の類は効かないはずだ。理屈はよくわからんが、スキルの関係で幻術は一瞬で見破る事が出来る。
「──恐らく海魔の類です。過去の報告によると幻術を扱うタイプの海魔は何体かいたようですがここまで広範囲の個体はいませんでした。ダメージが反映される個体も一体しか存在せず、ダメージがすべて致命傷になることもなかったようです」
「そうか、わかった。了解」
どういうことだ。ちょっと待て、今結構焦ってるから。海魔が何とか知りたいけどそれどころじゃないから。
さわさわと風が木の葉を揺らす。完全に本物としか思えないが、デューラの言葉を信じるのならここは港らしい。
試しにそこらの木をじっと見つめてみるが、変化はない。
『なら答えは簡単だろ。お前が差異を感じないぐらい完璧な幻術って事だな』
シャルが落ち着いた声音で言う。
違いを感じないレベルで完璧ってことは具体的にどういうことなんだ?
『そうだな……多分この場合は、お前自身が既に術にハマってるんだろうな』
?
『相手の力量が化物級ってこともあるだろうが、最初に目にした時、森だと認識した時点でお前にとってここは森になった。だから差異はない。だってお前は森って認識してるんだから、そもそも差異が生まれない。加えて本来のリューズニルの街並みだのなんだのは一度も見たことがないんだ、なおさらかかりやすかっただろうな』
なる…ほど。
「あの……どうかしましたか?」
いきなり黙った俺を不審に思ったのかデューラが声をかけてきた。
「いや、ちょっと考え事をな」
「そうですか…すでにここは敵の手の中です、気を抜かぬよう気をつけてください。加えて、ついさっき私がいた時とは違う幻術になっています。気を付けて」
「そうか。ふむ、とりあえず……そうだな」
………よし、決めた。
「敵がどんな奴かわからんからな、まずはユーリアと合流しよう。デューラ、どっちの方にいるとかわか──」
わからないか?と聞こうと振り返った瞬間だった。
突然真横から何かが飛んできて、デューラを吹き飛ばした。
「なんっ!?」
即座に銀剣を抜き、俺にも飛んできたそれをカウンター気味に刃のついた面で切り飛ばす。
「ふッ‼」
金属同士がぶつかったような不協和音が響き、銀剣が飛行物体を切り落とした。
「………これは…」
落ちたものを見ると、何か硬く鋭いものの破片のようだった。はて、どこかで見たことがあるような。
鈍く武骨な輝きを放つそれを拾い上げようとした時、僅かに表面が濡れていることに気づく。
『毒だな』
俺と同じ答えを出したらしいシャルがそう言う。
そして、毒がついた鉄片なんてものは攻撃以外の用途で使われるわけがないもので。
「!!」
顔を上げた時には、既に無数の鉄片が毒と共に飛んできていた。
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