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本編
治療と意地
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軽く身体を動かしながら一人、先程の《勇者》のことを少しだけ振り返る。
彼女がここにいるのはジェルジネン及び《魔王》の居場所を知るためだ。それさえ分かれば一人でも飛び出す。
だが、奴らの居場所は俺とアーネ、あとは学校長ぐらいしか知らず、アーネに状況も伝えてあるので漏れようがない。
だから俺を急かしたのだろうが、まだそのタイミングではない。
近いうちに出ることになるであろう遠征の際に、断黒崖への道案内と、彼女自身の力も利用させて貰う。そのつもりで呼んだのだ。もう少しだけ待ってもらおう。
さて、そろそろ寝るかと欠伸を噛み殺しながら自室へ戻る。
流石に日付を跨ぐと《雷光》は帰ったらしい。それでもしばらく粘ろうとしたらしく、想定よりかは進みが悪い事を伏せつつ、キチンと治療が進んでいることを伝えて何とか帰ったらしい。
一応アーネにも学校長と保健の先生が言っていたことを伝えとこうと思ったのだが、あまりにアーネが眠そうだったので中止。翌日伝えることにして寝た。
で、その翌朝。
《雷光》の部屋を控えめにノックする音で起き、アーネを起こさないように抜け出す。
その際、アーネの寝顔を晒さないようベッドのエリアをマキナで区切って隠し、部屋に招く。
《雷光》が昨日は無かったそれにぎょっとするも、すぐに何事も無かったように「おはよう。今日も頼む」と言って部屋に入った。
それからは昨日と同じだ。
ひたすら俺がレシピ通りに例のお粥を作り、《雷光》が消化する。その合間に自分とアーネの飯を作り、軽く腹も満たす。
アーネが飯を作る時に盗み覚えた程度なので、アーネと比べるとあまり美味しくない。
パンに具を挟むだけなのだが、何が違うのだろうか。
九時を周り、十時には流石に起こすかと考えていると、マキナからアーネが起き、俺を呼んでいると連絡があった。
しばらくなら手が離せるタイミングだったので、呼ばれるままにアーネの方へ。
「おはよう。どうした?」
「おはようですわ。《雷光》は来てますの?」
まだ寝足りないと言う風に、やや眉間に皺を寄せてアーネがそう言う。どうやら寝起きの微睡みタイムは終わっているらしい。
「いる。もう三時間ぐらい経つな」
「昨日と同じでお粥ですの?」
「?、あぁ」
そう言うと、アーネが少し考えた後「すぐ着替えますわね」と言って紙切れを手渡し、出て行けとジェスチャーする。
そそくさとマキナの仕切りから出、代わりに朝食を置いてキッチンに戻る。アイツにゃおやつにもならんだろうが、食わんよりはマシだろう。
手渡された紙切れを開きながら、小さく「あっ」と呟く。
しまった。そういやなんか先生からメモ渡されてたな。食料と一緒にアーネに渡し、その後色々駆り出されていたので忘れていた。
ひょっとしなくても、これがそうか。もしかして何かやらかしたか?と思って開いて見ていく。
『──よって魔力生成量が二十を超えた辺りから魔力の霧散を避ける為、体内の魔力回路の循環を進める必要がある。特に心臓、肺、丹田付近の魔練鍛が上手く出来ない場合は循環が起きず、生成も非常に非効率である。経口摂取した物質を胃で溶かし、吸収する際に魔力を汲みあげ、身体に巡らせ、魔力の双反応で効率を上げる必要がある。鍛錬方法として、以下の方法が望ましい……』
……要はお粥食ってるだけじゃダメって事か?
所々用語が混ざっているので全ては分からない。加えてやや堅苦しく、迂遠な書き方をしているので読みにくいが、何度か読み直して何となく概要は分かった。
要は『これ以上は今までのお粥食ってるだけの方法でも生成が上がらなくは無いけど、効率悪いから別のアプローチもしよう』って話だな。
いや面倒くせぇ。ハナからこういう資料全部寄越せよ。小分けにすんな。
何となく理解が出来た所で、丁度アーネも支度を終えたらしい。
「何するか分かりましたの?」
「いやほぼわかんね。でもまぁ、今のままだと終わんねぇってのはわかった」
魔力を身体に巡らせて、飯からより効率よく魔力を取り出すらしいが、理屈もやり方もよく分からん。この辺は任せた方が早そうだ。
「俺に出来ることってあるか?」
そう言うと、アーネは少し考えてからこう言った。
「ないですわね」
── ── ── ── ──
という訳で、部屋から出て訓練所へ。
《雷光》の治療でやることが無いと言われても、俺自身が暇になる訳では無い。
……まぁ、正しく言うなら、今現在の聖学が物凄く忙しいというか、二つ名持ちが非常に忙しいと言うか。
西学の生徒達を受け入れている間に起きる様々なトラブルを処理していかなくてはならないのだが、元々忙しかった所に《雷光》の不在、俺とアーネも《雷光》の治療で不在。《臨界点》は最初っから居ない(そもそも姿を見ない)となると、残った二つ名持ちはユーリアだけとなる。
ユーリア自身、元々《ケット・シー》なので別に積極的に関わる必要は無い。
だが、二つ名持ちである以上は生徒達の模範となる必要がある上、本人の気質も相まった結果、昨日は非常に忙しかったらしい。
アーネが起きるまでの間にユーリアからメッセージが入り、アーネが起き次第状況を伝えて、時間がある時にユーリアの手伝いに行こうと思っていたのだが、どうやら予定が空いてしまったので、普通に手伝う事にする。
何かの手助け用に、部屋にマキナの大半を残し、メッセージ用の欠片だけ入れて部屋を出、ユーリアに今の状況を聞きながら訓練所に向かっている所という訳だ。
そこからあとは何か……記憶がやや曖昧だ。
訓練所から学校へ、学校から食堂へ。揉め事が片っ端から起こる。
当たり前の疑問として、先生達が何故出てこないのかと言うと、一つは先生の前ではトラブルを起こさないという事。そしてそもそもウチの先生はそう言うのに首を突っ込まず、自力でどうにかするように言ってくる事。
そして何より、先生が出張っても人手が足りてないからだ。
気づけば夕方。昼を食べた記憶が無い。とりあえず飯を食おうとすると、また呼び出し。今度は訓練所らしい。遠いな。
「またテメェらか!!」
という言葉が何度も飛び出る程あちこちの諍いを仲裁してきた。
今日一日走り回って分かったのだが、何故こんなにあちこちでトラブルが起きるのかと言うと、両校生徒達の持つ馬鹿デカいプライドと、自身の無力さからくる焦燥感が原因だ。
聖学も西学も、過酷な試験を乗り越え、どんどん数を減らす同級生を押しのけ、やっとの思いでそれぞれの学校に居る。
そこから生まれる自身への強いプライド、それ自体は問題ない。
だが、それが本来自分達が倒さなくてはならない魔族に全く歯が立たず、学校が半壊。死傷者多数。片方は更に都市にも被害が出ている状況。
当然生徒の中には三年生も居る。他の下の学年の生徒達より力をつけた彼達でさえ、蹴散らされた。
強いと言われていた生徒達は、現実を思い知らされ、代償に多数の友人を無くした。
しかし、そこで挫けるような生徒は既に学校には居ない。それを乗り越えられるからこの場にいる。
そんな生徒達が、似たような境遇の他校生と会った時、手合わせしてふと漏れる言葉がある。
「なんだ、こんな程度か」
実際に口から出たかどうかではない。態度で分かる。
いや、あるいはそれすらも必要ない。
大事なのは、受け取る側がどう受け取るか。
高過ぎたプライドは一度折れ、それでも過去の自分を肯定するために、歪な形で心を支えた。
滅茶苦茶簡単に言うと、「お前は言ってないけど、そう思ってるだろ。ふざけんじゃねぇ」という言い掛かりだ。
これが西学の生徒が聖学の生徒にキレる時は「だから都市が襲われたと思ってんだろ!?」というニュアンスがつき、聖学の生徒が西学の生徒にキレる時は「運が良かっただけだと思ってんだろ!!」というような感じの言葉がつく。
ただ当り散らしているだけかと思うかもしれない。
だが、英雄になるという夢のために一生を費やしてきた者が多い中、いざ戦ってみれば、その相手達に蹴散らされたのだ。
加えて聖学の時もそうだったのだが、なまじ強い奴から殺される。
自分より強い者が殺され、自分が生き残っている。その理由が「お前は眼中に無い」という意味だと理解出来ない者はいない。
生き残れたのは二つ名持ちのように他の生徒より抜きん出て強かった者と、ただ地べたに這い蹲ることしか出来なかった者達なのだ。
それが理解出来、心の折れた者はとっくの昔に故郷へ帰っている。
この場にいる者達は、そんな賢い選択肢を取れず、それでも愚直に鍛える事を選んだ者達ばかりだ。
そんな者達しかいないのだから、こういうトラブルも起きやすいのは仕方がないのだろう。
もちろん先程も言ったように、この手の話は初日と比べてかなり減った。だが、収まり切ってないのも事実。
加えて、聖学と西学同士で元々仲が悪いのもキツい。ふとした拍子にあっさり爆発する。
何かにつけて競わせていたが、それを敵視する理由になるまで放置した両校の学校長共をまとめてシメてやりたい。
「──以上終わり!!次やったら」
と言いかけて止める。
「次やったら、なんです?」
「いや、何でもない。もうすんなよ」
危ない。「次やったら俺が直にテメェらをボコる」なんて言おうものなら西学の奴らは嬉々としてトラブルを起こしかねない。
二つ名に負けるのは当たり前、万が一勝ったら聖学が情けない生徒の集まりである証明。
そう考えているから気をつけろ、とはユーリアの言葉。本当かどうかは知らないが、万が一を考えると絶対に避けるべきだ。
全く、飯を食いに戻りたいが、ここまで来たら保健室に寄って先生から色々話聞く方が先だな。そっちの方が道順的に楽だ。
アーネにメッセージを飛ばし、現在の状況を聞きながら歩く。
なんでも、治療はかなり順調らしい。
「この調子なら明日には終わりそうですわね」
との事。一日丸投げして悪いと謝りつつ、出来るだけ現状を詳細に聞いていく。
それを頭の中でまとめながら保健室へ。
ガラリと音を立てて保健室に入ると、先生が机にあった書類から目を離し、ゆっくりとこちらを見た。
今日も女か。スキルの影響で気分で性別が変わるらしいが、どういう気分だと女の方になるんだろうか。
ふとそんなことが頭をよぎるが、そのままスルーして本題に入る。
「先生、一応経過報告だ」
「それは結構。でも保健室のドアは静かにね。寝てる人もいるんだから」
そう言われて素直に謝ってから、先程アーネから聞いた情報をまとめて先生に伝える。
とりあえず《雷光》の魔力生成量は三十五まで来たらしい。この調子なら明日の昼か夜にでも終わるだろうとのこと。
一方で、その事を《雷光》に伝えると、魔力生成量をもっと増やしたいという希望を聞いたとのこと。
それ自体は可能だが、現状の魔力の最大量を大きく超える魔力生成量にしても身体に害は無いかどうか聞いてきて欲しいと言われた。
「なるほどねぇ。上限を増やしたい理由って聞いてもいいのかしら」
「アーネの目標は五十ぐらいって話だったが、普通の魔法使いレベルまで生成量を上げときたいらしい」
というかこの治療って一人でできねぇのか?と思っていると、先生から「それなら今のうちにやっときたいわよねぇ。二人以上居ないと効率悪いし」と言う言葉を貰った。顔に出てただろうか。
「七十位までなら大丈夫よ。魔力最大量の倍以上の生成量になると、今度は魔力が身体から溢れちゃって危ないけれど、それぐらいならね。けれど、魔力のコントロールは今以上に難しくなるから、それも考えて、最適な量を模索してね」
「分かった。伝えとく」
よく分かんねぇけど、とりあえず伝えときゃ伝わるだろ。多分。
「それとコレ。また一応出しとくね。あとはこれも」
と言って渡されたのはまたもや紙切れ。何かしらの指示が書かれているのだろう。それともうひとつ渡されたのは小脇に挟める程度の小袋。
「中身は薬よ。使用方法も書いてあるから、キチンと読んで使ってね」
「分かった。ってか、なんか薬とか貰って初めて治療って実感が湧くな」
「薬がある事が治療では無いわよ。治すために薬が必要なことが多いだけ。あまり使うと、こういうのは毒にもなるしね」
「だとしても、薬らしい薬ってあんまり見ねぇ気がすんだよな……」
そう言うと、先生はケラケラと笑いながら答えた。
「そもそもここの生徒さん達、外傷ばっかりじゃない。薬より回復魔法や治癒魔法の方がよっぽど使うわよ」
「そりゃそうか」
紙切れを髪の中にしまい込み、袋を片手に保健室を出る。
「サンキューな先生」
「元々こちらの依頼よ。手伝うのは当然でしょう?」
実際、俺はほとんど何もしてないんだがなぁ。本当に《雷光》を説得するためだけに俺が呼ばれたんだろう。実質的に今回の依頼はアーネのお陰で達成出来そうだ。本当に助かる。
そう思いながら先生との話を終え、保健室を出、自室に帰る途中、黒い髪の女生徒とすれ違う。
うん?あんな生徒居たか?
聖学にはもちろん、ここ最近の西学連中の顔触れにも見覚えがなかった。
何となく気になって振り返ると、その女生徒も振り返り、こちらをじっと見ていた。
「………あー、何だ?なんか用か?」
小柄な身体に真っ黒な長い髪。ともすれば十代前半にも見えるだろうか。しかし顔をしっかりと見れば、もっと年齢を重ねた大人であることがすぐに分かる。
「アンタが《緋眼騎士》やんね?」
「あ?あぁ。そうだが」
そう言うと、彼女はテコテコと歩いてこちらへ向かってくる。
「ふぅん、なるほどなぁ」
俺の周りを歩いてじっくり観察するようにした後、ひょいと離れる。
「強いんやね」
「一応な」
何だこの人。変な奴だな。
そう思うと同時に、よく分からない緊張感が背筋に走り続けている。
この感覚、前にもあったな。
確かそう、初めてジェルジネンと会った時の感覚。
尋常ではない強者が、興味を持っているだけで、未だ戦意はない状態の空気。
先程までは気づかなかった。気にしていなかった。
だが、一度気づいてしまえば、これ程恐ろしいものも中々ない。
「怖いなぁ、アンタと何回かやったら、流石にウチも一回ぐらいは負けそうやわ」
「高評価どうも。それで、一体何用で?」
「うん?特に何もないけど?」
そう言って、女はそのまま廊下を曲って消えていった。
……なんだったんだ?今の?
感覚からして魔族という風ではない。だが不審者ではある。
今から追おうにも、既に姿は跡形もなく。
「……共有と警戒だけしとくか」
そう言ってメッセージを
「あ、せや」
「うぉおおおあ!?」
正面に振り向いて帰ろうとした瞬間、目の前に今の女がいた。
どうやったら俺に気付かれず正面に回り込めるんだ?そんな疑問も吹き飛ぶぐらいに驚き、思わず絶叫する。
「そんなびっくりせんといてーな。あんな、ウチがここにおるって誰にも話さんといてな。安心しーや。この事学校長は知っとるし」
「……ならなんで二つ名持ちの俺は知らねぇんだ?」
「そらウチが学校長に頼んで、生徒さんらには隠してもらってるからやね。そんでもアンタに会ったんはウチのワガママやわ」
それだけ言うと、女は俺の横を素通りし、廊下を曲ってあっさりと姿を消した。
「……何だったんだ?」
とりあえず、あの不審者の報告を学校長にはしておこう。
あの女も学校長は知ってるとか言ってたし、確認も取れる。そう言う意味も含めてあの女も言ったんだろうし。
いや本当に変な汗かいた。今日は早く部屋に戻って風呂入って寝よう。
彼女がここにいるのはジェルジネン及び《魔王》の居場所を知るためだ。それさえ分かれば一人でも飛び出す。
だが、奴らの居場所は俺とアーネ、あとは学校長ぐらいしか知らず、アーネに状況も伝えてあるので漏れようがない。
だから俺を急かしたのだろうが、まだそのタイミングではない。
近いうちに出ることになるであろう遠征の際に、断黒崖への道案内と、彼女自身の力も利用させて貰う。そのつもりで呼んだのだ。もう少しだけ待ってもらおう。
さて、そろそろ寝るかと欠伸を噛み殺しながら自室へ戻る。
流石に日付を跨ぐと《雷光》は帰ったらしい。それでもしばらく粘ろうとしたらしく、想定よりかは進みが悪い事を伏せつつ、キチンと治療が進んでいることを伝えて何とか帰ったらしい。
一応アーネにも学校長と保健の先生が言っていたことを伝えとこうと思ったのだが、あまりにアーネが眠そうだったので中止。翌日伝えることにして寝た。
で、その翌朝。
《雷光》の部屋を控えめにノックする音で起き、アーネを起こさないように抜け出す。
その際、アーネの寝顔を晒さないようベッドのエリアをマキナで区切って隠し、部屋に招く。
《雷光》が昨日は無かったそれにぎょっとするも、すぐに何事も無かったように「おはよう。今日も頼む」と言って部屋に入った。
それからは昨日と同じだ。
ひたすら俺がレシピ通りに例のお粥を作り、《雷光》が消化する。その合間に自分とアーネの飯を作り、軽く腹も満たす。
アーネが飯を作る時に盗み覚えた程度なので、アーネと比べるとあまり美味しくない。
パンに具を挟むだけなのだが、何が違うのだろうか。
九時を周り、十時には流石に起こすかと考えていると、マキナからアーネが起き、俺を呼んでいると連絡があった。
しばらくなら手が離せるタイミングだったので、呼ばれるままにアーネの方へ。
「おはよう。どうした?」
「おはようですわ。《雷光》は来てますの?」
まだ寝足りないと言う風に、やや眉間に皺を寄せてアーネがそう言う。どうやら寝起きの微睡みタイムは終わっているらしい。
「いる。もう三時間ぐらい経つな」
「昨日と同じでお粥ですの?」
「?、あぁ」
そう言うと、アーネが少し考えた後「すぐ着替えますわね」と言って紙切れを手渡し、出て行けとジェスチャーする。
そそくさとマキナの仕切りから出、代わりに朝食を置いてキッチンに戻る。アイツにゃおやつにもならんだろうが、食わんよりはマシだろう。
手渡された紙切れを開きながら、小さく「あっ」と呟く。
しまった。そういやなんか先生からメモ渡されてたな。食料と一緒にアーネに渡し、その後色々駆り出されていたので忘れていた。
ひょっとしなくても、これがそうか。もしかして何かやらかしたか?と思って開いて見ていく。
『──よって魔力生成量が二十を超えた辺りから魔力の霧散を避ける為、体内の魔力回路の循環を進める必要がある。特に心臓、肺、丹田付近の魔練鍛が上手く出来ない場合は循環が起きず、生成も非常に非効率である。経口摂取した物質を胃で溶かし、吸収する際に魔力を汲みあげ、身体に巡らせ、魔力の双反応で効率を上げる必要がある。鍛錬方法として、以下の方法が望ましい……』
……要はお粥食ってるだけじゃダメって事か?
所々用語が混ざっているので全ては分からない。加えてやや堅苦しく、迂遠な書き方をしているので読みにくいが、何度か読み直して何となく概要は分かった。
要は『これ以上は今までのお粥食ってるだけの方法でも生成が上がらなくは無いけど、効率悪いから別のアプローチもしよう』って話だな。
いや面倒くせぇ。ハナからこういう資料全部寄越せよ。小分けにすんな。
何となく理解が出来た所で、丁度アーネも支度を終えたらしい。
「何するか分かりましたの?」
「いやほぼわかんね。でもまぁ、今のままだと終わんねぇってのはわかった」
魔力を身体に巡らせて、飯からより効率よく魔力を取り出すらしいが、理屈もやり方もよく分からん。この辺は任せた方が早そうだ。
「俺に出来ることってあるか?」
そう言うと、アーネは少し考えてからこう言った。
「ないですわね」
── ── ── ── ──
という訳で、部屋から出て訓練所へ。
《雷光》の治療でやることが無いと言われても、俺自身が暇になる訳では無い。
……まぁ、正しく言うなら、今現在の聖学が物凄く忙しいというか、二つ名持ちが非常に忙しいと言うか。
西学の生徒達を受け入れている間に起きる様々なトラブルを処理していかなくてはならないのだが、元々忙しかった所に《雷光》の不在、俺とアーネも《雷光》の治療で不在。《臨界点》は最初っから居ない(そもそも姿を見ない)となると、残った二つ名持ちはユーリアだけとなる。
ユーリア自身、元々《ケット・シー》なので別に積極的に関わる必要は無い。
だが、二つ名持ちである以上は生徒達の模範となる必要がある上、本人の気質も相まった結果、昨日は非常に忙しかったらしい。
アーネが起きるまでの間にユーリアからメッセージが入り、アーネが起き次第状況を伝えて、時間がある時にユーリアの手伝いに行こうと思っていたのだが、どうやら予定が空いてしまったので、普通に手伝う事にする。
何かの手助け用に、部屋にマキナの大半を残し、メッセージ用の欠片だけ入れて部屋を出、ユーリアに今の状況を聞きながら訓練所に向かっている所という訳だ。
そこからあとは何か……記憶がやや曖昧だ。
訓練所から学校へ、学校から食堂へ。揉め事が片っ端から起こる。
当たり前の疑問として、先生達が何故出てこないのかと言うと、一つは先生の前ではトラブルを起こさないという事。そしてそもそもウチの先生はそう言うのに首を突っ込まず、自力でどうにかするように言ってくる事。
そして何より、先生が出張っても人手が足りてないからだ。
気づけば夕方。昼を食べた記憶が無い。とりあえず飯を食おうとすると、また呼び出し。今度は訓練所らしい。遠いな。
「またテメェらか!!」
という言葉が何度も飛び出る程あちこちの諍いを仲裁してきた。
今日一日走り回って分かったのだが、何故こんなにあちこちでトラブルが起きるのかと言うと、両校生徒達の持つ馬鹿デカいプライドと、自身の無力さからくる焦燥感が原因だ。
聖学も西学も、過酷な試験を乗り越え、どんどん数を減らす同級生を押しのけ、やっとの思いでそれぞれの学校に居る。
そこから生まれる自身への強いプライド、それ自体は問題ない。
だが、それが本来自分達が倒さなくてはならない魔族に全く歯が立たず、学校が半壊。死傷者多数。片方は更に都市にも被害が出ている状況。
当然生徒の中には三年生も居る。他の下の学年の生徒達より力をつけた彼達でさえ、蹴散らされた。
強いと言われていた生徒達は、現実を思い知らされ、代償に多数の友人を無くした。
しかし、そこで挫けるような生徒は既に学校には居ない。それを乗り越えられるからこの場にいる。
そんな生徒達が、似たような境遇の他校生と会った時、手合わせしてふと漏れる言葉がある。
「なんだ、こんな程度か」
実際に口から出たかどうかではない。態度で分かる。
いや、あるいはそれすらも必要ない。
大事なのは、受け取る側がどう受け取るか。
高過ぎたプライドは一度折れ、それでも過去の自分を肯定するために、歪な形で心を支えた。
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これが西学の生徒が聖学の生徒にキレる時は「だから都市が襲われたと思ってんだろ!?」というニュアンスがつき、聖学の生徒が西学の生徒にキレる時は「運が良かっただけだと思ってんだろ!!」というような感じの言葉がつく。
ただ当り散らしているだけかと思うかもしれない。
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加えて聖学の時もそうだったのだが、なまじ強い奴から殺される。
自分より強い者が殺され、自分が生き残っている。その理由が「お前は眼中に無い」という意味だと理解出来ない者はいない。
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そんな者達しかいないのだから、こういうトラブルも起きやすいのは仕方がないのだろう。
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「次やったら、なんです?」
「いや、何でもない。もうすんなよ」
危ない。「次やったら俺が直にテメェらをボコる」なんて言おうものなら西学の奴らは嬉々としてトラブルを起こしかねない。
二つ名に負けるのは当たり前、万が一勝ったら聖学が情けない生徒の集まりである証明。
そう考えているから気をつけろ、とはユーリアの言葉。本当かどうかは知らないが、万が一を考えると絶対に避けるべきだ。
全く、飯を食いに戻りたいが、ここまで来たら保健室に寄って先生から色々話聞く方が先だな。そっちの方が道順的に楽だ。
アーネにメッセージを飛ばし、現在の状況を聞きながら歩く。
なんでも、治療はかなり順調らしい。
「この調子なら明日には終わりそうですわね」
との事。一日丸投げして悪いと謝りつつ、出来るだけ現状を詳細に聞いていく。
それを頭の中でまとめながら保健室へ。
ガラリと音を立てて保健室に入ると、先生が机にあった書類から目を離し、ゆっくりとこちらを見た。
今日も女か。スキルの影響で気分で性別が変わるらしいが、どういう気分だと女の方になるんだろうか。
ふとそんなことが頭をよぎるが、そのままスルーして本題に入る。
「先生、一応経過報告だ」
「それは結構。でも保健室のドアは静かにね。寝てる人もいるんだから」
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とりあえず《雷光》の魔力生成量は三十五まで来たらしい。この調子なら明日の昼か夜にでも終わるだろうとのこと。
一方で、その事を《雷光》に伝えると、魔力生成量をもっと増やしたいという希望を聞いたとのこと。
それ自体は可能だが、現状の魔力の最大量を大きく超える魔力生成量にしても身体に害は無いかどうか聞いてきて欲しいと言われた。
「なるほどねぇ。上限を増やしたい理由って聞いてもいいのかしら」
「アーネの目標は五十ぐらいって話だったが、普通の魔法使いレベルまで生成量を上げときたいらしい」
というかこの治療って一人でできねぇのか?と思っていると、先生から「それなら今のうちにやっときたいわよねぇ。二人以上居ないと効率悪いし」と言う言葉を貰った。顔に出てただろうか。
「七十位までなら大丈夫よ。魔力最大量の倍以上の生成量になると、今度は魔力が身体から溢れちゃって危ないけれど、それぐらいならね。けれど、魔力のコントロールは今以上に難しくなるから、それも考えて、最適な量を模索してね」
「分かった。伝えとく」
よく分かんねぇけど、とりあえず伝えときゃ伝わるだろ。多分。
「それとコレ。また一応出しとくね。あとはこれも」
と言って渡されたのはまたもや紙切れ。何かしらの指示が書かれているのだろう。それともうひとつ渡されたのは小脇に挟める程度の小袋。
「中身は薬よ。使用方法も書いてあるから、キチンと読んで使ってね」
「分かった。ってか、なんか薬とか貰って初めて治療って実感が湧くな」
「薬がある事が治療では無いわよ。治すために薬が必要なことが多いだけ。あまり使うと、こういうのは毒にもなるしね」
「だとしても、薬らしい薬ってあんまり見ねぇ気がすんだよな……」
そう言うと、先生はケラケラと笑いながら答えた。
「そもそもここの生徒さん達、外傷ばっかりじゃない。薬より回復魔法や治癒魔法の方がよっぽど使うわよ」
「そりゃそうか」
紙切れを髪の中にしまい込み、袋を片手に保健室を出る。
「サンキューな先生」
「元々こちらの依頼よ。手伝うのは当然でしょう?」
実際、俺はほとんど何もしてないんだがなぁ。本当に《雷光》を説得するためだけに俺が呼ばれたんだろう。実質的に今回の依頼はアーネのお陰で達成出来そうだ。本当に助かる。
そう思いながら先生との話を終え、保健室を出、自室に帰る途中、黒い髪の女生徒とすれ違う。
うん?あんな生徒居たか?
聖学にはもちろん、ここ最近の西学連中の顔触れにも見覚えがなかった。
何となく気になって振り返ると、その女生徒も振り返り、こちらをじっと見ていた。
「………あー、何だ?なんか用か?」
小柄な身体に真っ黒な長い髪。ともすれば十代前半にも見えるだろうか。しかし顔をしっかりと見れば、もっと年齢を重ねた大人であることがすぐに分かる。
「アンタが《緋眼騎士》やんね?」
「あ?あぁ。そうだが」
そう言うと、彼女はテコテコと歩いてこちらへ向かってくる。
「ふぅん、なるほどなぁ」
俺の周りを歩いてじっくり観察するようにした後、ひょいと離れる。
「強いんやね」
「一応な」
何だこの人。変な奴だな。
そう思うと同時に、よく分からない緊張感が背筋に走り続けている。
この感覚、前にもあったな。
確かそう、初めてジェルジネンと会った時の感覚。
尋常ではない強者が、興味を持っているだけで、未だ戦意はない状態の空気。
先程までは気づかなかった。気にしていなかった。
だが、一度気づいてしまえば、これ程恐ろしいものも中々ない。
「怖いなぁ、アンタと何回かやったら、流石にウチも一回ぐらいは負けそうやわ」
「高評価どうも。それで、一体何用で?」
「うん?特に何もないけど?」
そう言って、女はそのまま廊下を曲って消えていった。
……なんだったんだ?今の?
感覚からして魔族という風ではない。だが不審者ではある。
今から追おうにも、既に姿は跡形もなく。
「……共有と警戒だけしとくか」
そう言ってメッセージを
「あ、せや」
「うぉおおおあ!?」
正面に振り向いて帰ろうとした瞬間、目の前に今の女がいた。
どうやったら俺に気付かれず正面に回り込めるんだ?そんな疑問も吹き飛ぶぐらいに驚き、思わず絶叫する。
「そんなびっくりせんといてーな。あんな、ウチがここにおるって誰にも話さんといてな。安心しーや。この事学校長は知っとるし」
「……ならなんで二つ名持ちの俺は知らねぇんだ?」
「そらウチが学校長に頼んで、生徒さんらには隠してもらってるからやね。そんでもアンタに会ったんはウチのワガママやわ」
それだけ言うと、女は俺の横を素通りし、廊下を曲ってあっさりと姿を消した。
「……何だったんだ?」
とりあえず、あの不審者の報告を学校長にはしておこう。
あの女も学校長は知ってるとか言ってたし、確認も取れる。そう言う意味も含めてあの女も言ったんだろうし。
いや本当に変な汗かいた。今日は早く部屋に戻って風呂入って寝よう。
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しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
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