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本編
脱出と千変
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追っ手はとりあえず撒けたようだ。身体を半ば引き摺るようにして来たというのに、どうして撒けたのかよくわからないが、シャル曰くこちらを追う気配が消えたとの事だ。
「よくよく考えればさぁ」
『おう』
ふらふらと、物陰から物陰へとさ迷うようにして移りながらボソボソと呟く。そうでもしないと気を失いそうだ。
シャルもそれが分かっているのだろう、相槌を打ってくれている。
「乗り込むのはともかくとして、脱出するのは割と簡単だったよな。特に考えなくても」
『ってーと?』
「単純に飛び降りればさぁ、終わりじゃね?いや、転落事故を防ぐために魔法なり魔術なり仕込んであるのかも知んねぇけどさ」
『…お前さ、頭に血が回らなくて馬鹿になってんじゃねぇの?阿呆の極みみたいな事言ってんじゃねぇか。ついさっき落ちたら地上のシミになるって結論が出たばっかりじゃねぇか』
「そうなんだがな、一つ思いついたことがある」
『思いついたって…まさかぶっつけ本番か?』
当たり前。俺の十八番だ。
『マスター・全個体集結しました・アイテムも・こちらです』
その時、姿は見えないがマキナの声がした。
その直後、一つひとつは砂粒のような大きさをした《千変》が、ザアッ!と音を立てて一気に集まる。
「あぁ、助かる」
『肩をお貸ししましょうか』
「頼む」
マキナに支えられつつ、外縁へと進んで行く。
「マキナ、お前には最後のひと踏ん張りをしてもらう。任せて大丈夫か?」
『それがマスターの命令なら・たとえ可能性が絶無であっても・私が必ず可能性を生み出します』
そりゃ頼もしいな。
「やって欲しいことはたった二つ。限界まで面積を増やす事と、お前の重量を出来るだけ軽くしてくれって事だ」
『了解しました』
『おいおい今代の、まさかお前、本当に落ちる気なのか?』
「木の葉とか鳥の羽とかさ、ああいうのって落ちる時、緩やかに落ちるじゃん。紙とかもそうだな。つまりそういうこと、だ」
『そういう事って…』
もう少しで外縁だ。だが……ここから先に遮蔽物がない。ついでに、さっき懸念していた外縁から落下を防ぐような魔法があるのなら、飛び降りるのも失敗するだろう。
その辺はもう賭けるしかない。
距離は……十メートルぐらいか。
「マキナ、落下の勢いとか安定性とか、全部お前に任せる。多分俺はそろそろ限界なんでな」
『了解しました・ゆっくりとお休みください』
今いる物陰、そこの取っかかりを髪で掴んで──
「頼んだぞ」
一気に引き寄せ、マキナとアーネも含めて弾丸のように飛ぶ。そして外縁にある申し訳程度の手摺をさらに掴んでもう一度跳躍。
「マキナ!開け!!」
『《千変鎧》・全開放』
ばっ!と《千変》が開き、視界いっぱいに銀の輝きが広がる。
俺が見えたのはそこまで。あとはマキナが上手く着地出来ることを願うだけだ。
「よくよく考えればさぁ」
『おう』
ふらふらと、物陰から物陰へとさ迷うようにして移りながらボソボソと呟く。そうでもしないと気を失いそうだ。
シャルもそれが分かっているのだろう、相槌を打ってくれている。
「乗り込むのはともかくとして、脱出するのは割と簡単だったよな。特に考えなくても」
『ってーと?』
「単純に飛び降りればさぁ、終わりじゃね?いや、転落事故を防ぐために魔法なり魔術なり仕込んであるのかも知んねぇけどさ」
『…お前さ、頭に血が回らなくて馬鹿になってんじゃねぇの?阿呆の極みみたいな事言ってんじゃねぇか。ついさっき落ちたら地上のシミになるって結論が出たばっかりじゃねぇか』
「そうなんだがな、一つ思いついたことがある」
『思いついたって…まさかぶっつけ本番か?』
当たり前。俺の十八番だ。
『マスター・全個体集結しました・アイテムも・こちらです』
その時、姿は見えないがマキナの声がした。
その直後、一つひとつは砂粒のような大きさをした《千変》が、ザアッ!と音を立てて一気に集まる。
「あぁ、助かる」
『肩をお貸ししましょうか』
「頼む」
マキナに支えられつつ、外縁へと進んで行く。
「マキナ、お前には最後のひと踏ん張りをしてもらう。任せて大丈夫か?」
『それがマスターの命令なら・たとえ可能性が絶無であっても・私が必ず可能性を生み出します』
そりゃ頼もしいな。
「やって欲しいことはたった二つ。限界まで面積を増やす事と、お前の重量を出来るだけ軽くしてくれって事だ」
『了解しました』
『おいおい今代の、まさかお前、本当に落ちる気なのか?』
「木の葉とか鳥の羽とかさ、ああいうのって落ちる時、緩やかに落ちるじゃん。紙とかもそうだな。つまりそういうこと、だ」
『そういう事って…』
もう少しで外縁だ。だが……ここから先に遮蔽物がない。ついでに、さっき懸念していた外縁から落下を防ぐような魔法があるのなら、飛び降りるのも失敗するだろう。
その辺はもう賭けるしかない。
距離は……十メートルぐらいか。
「マキナ、落下の勢いとか安定性とか、全部お前に任せる。多分俺はそろそろ限界なんでな」
『了解しました・ゆっくりとお休みください』
今いる物陰、そこの取っかかりを髪で掴んで──
「頼んだぞ」
一気に引き寄せ、マキナとアーネも含めて弾丸のように飛ぶ。そして外縁にある申し訳程度の手摺をさらに掴んでもう一度跳躍。
「マキナ!開け!!」
『《千変鎧》・全開放』
ばっ!と《千変》が開き、視界いっぱいに銀の輝きが広がる。
俺が見えたのはそこまで。あとはマキナが上手く着地出来ることを願うだけだ。
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