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本編
小部屋と広間
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金属質の扉、その向こうは個室トイレのように狭い小部屋だった。
中に入った途端、勝手に扉が閉じ、完全な密室が出来上がる。
「!?」
かなり焦り、血刃も出そうかと思いもしたが、ひとまずは特に変わった様子はない。
次の瞬間、下半身にぐっとかかる負荷。罠かと思ったが…これはもしかして、部屋ごと上昇している…?
やがて十秒とかからずに部屋が軽い浮遊感と共に止まると、軽快な音と共に扉が勝手に開く。
「………?」
見上げると首が痛くなりそうなほど高い天井、真っ白な大理石で出来た床、磨き上げられた宝石類をふんだんに使った装飾品の数々、真っ赤で柔らかそうな絨毯が一本の道のようにして、この大きな部屋の奥へと伸びていた。
…いや、(実物は一度も見たことがないが)これはただの部屋というより──
『謁見の間、か?』
「………あえ?シャル?」
思わず声を上げると、頭の中の声が簡単に肯定を返す。
『あぁそうだ。過去の勇者たちを追っかけまわしてたシャルだよ。全く、体力だけは有り余ってる馬鹿ってのは本当に質が悪い』
「シャル、お前、大丈夫なのか?」
『あ?何が?』
「いや、なんてーか、体調的なものが…」
なんと言えばいいか分からず、とりあえず口が言うままに任せてそう言うと、シャルは鼻で笑ってから答えた。
『別に何ともないよ。そもそも、すでに死んじまってる俺に体調もクソもないだろ』
「そう、か………」
シャルの声を聞いた途端、膝から力が抜けそうになるが、どうにか踏ん張って二本の足で立つ。
『おいおい大丈夫か?』
「あぁ大丈夫だ──さて相棒」
『何だ、今代の』
広すぎてか、あるいはまた魔法の要因か、部屋の奥は見えない。明かりは充分以上にあるはずなのに。
「状況はわかってるか?」
『一応な。敵の根城で仲間とはまた離ればなれ。システナもどっかに行っちまった上に学校から支給された袋も盗られた。金剣銀剣とマキナが残っていたのは幸運だった、で合ってるか?』
「そんだけわかってりゃ大丈夫だ。てかほぼ完璧だ」
なら聞こう。
「進むべきか、全部投げて逃げるべきか。どうすればいい?」
『逃げろ。今すぐに。それがこの場では正解だろう。壁でもぶっ壊せば逃げられるだろ?百歩譲って支給された袋を回収するぐらいだな』
答えは即座に返ってきた。
『《勇者》ならな』
「そう言ってくれるって信じてたよ」
少しだけ笑うと、目には見えないがシャルも笑っている気がした。
『お前の名前は?』
「レィアだ。レィア・シィルだ」
間髪入れずに返す。
『よく言った。行こうぜ、レィア』
俺達は赤い絨毯を踏みながら、再び歩き始めた。
中に入った途端、勝手に扉が閉じ、完全な密室が出来上がる。
「!?」
かなり焦り、血刃も出そうかと思いもしたが、ひとまずは特に変わった様子はない。
次の瞬間、下半身にぐっとかかる負荷。罠かと思ったが…これはもしかして、部屋ごと上昇している…?
やがて十秒とかからずに部屋が軽い浮遊感と共に止まると、軽快な音と共に扉が勝手に開く。
「………?」
見上げると首が痛くなりそうなほど高い天井、真っ白な大理石で出来た床、磨き上げられた宝石類をふんだんに使った装飾品の数々、真っ赤で柔らかそうな絨毯が一本の道のようにして、この大きな部屋の奥へと伸びていた。
…いや、(実物は一度も見たことがないが)これはただの部屋というより──
『謁見の間、か?』
「………あえ?シャル?」
思わず声を上げると、頭の中の声が簡単に肯定を返す。
『あぁそうだ。過去の勇者たちを追っかけまわしてたシャルだよ。全く、体力だけは有り余ってる馬鹿ってのは本当に質が悪い』
「シャル、お前、大丈夫なのか?」
『あ?何が?』
「いや、なんてーか、体調的なものが…」
なんと言えばいいか分からず、とりあえず口が言うままに任せてそう言うと、シャルは鼻で笑ってから答えた。
『別に何ともないよ。そもそも、すでに死んじまってる俺に体調もクソもないだろ』
「そう、か………」
シャルの声を聞いた途端、膝から力が抜けそうになるが、どうにか踏ん張って二本の足で立つ。
『おいおい大丈夫か?』
「あぁ大丈夫だ──さて相棒」
『何だ、今代の』
広すぎてか、あるいはまた魔法の要因か、部屋の奥は見えない。明かりは充分以上にあるはずなのに。
「状況はわかってるか?」
『一応な。敵の根城で仲間とはまた離ればなれ。システナもどっかに行っちまった上に学校から支給された袋も盗られた。金剣銀剣とマキナが残っていたのは幸運だった、で合ってるか?』
「そんだけわかってりゃ大丈夫だ。てかほぼ完璧だ」
なら聞こう。
「進むべきか、全部投げて逃げるべきか。どうすればいい?」
『逃げろ。今すぐに。それがこの場では正解だろう。壁でもぶっ壊せば逃げられるだろ?百歩譲って支給された袋を回収するぐらいだな』
答えは即座に返ってきた。
『《勇者》ならな』
「そう言ってくれるって信じてたよ」
少しだけ笑うと、目には見えないがシャルも笑っている気がした。
『お前の名前は?』
「レィアだ。レィア・シィルだ」
間髪入れずに返す。
『よく言った。行こうぜ、レィア』
俺達は赤い絨毯を踏みながら、再び歩き始めた。
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