大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

場所と尋問

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そこから更にしばらく歩き続けると、最初の方と比べて明らかに曲がる感覚が短くなって来た。そろそろこのクソ長い廊下ともお別れだが…ここがどこで何がどうなっているのか未だにさっぱり分からない。
さっき遭遇した丸刈りの魔族は、手足を縛ったうえで顎を縛──頭頂部から下顎をぐるりと巻くようにして固定──って、身動きも助けを呼ぶことも出来ないようにして転がしてきた。魔族という事で少し多めに髪を抜いてきたが…まぁ、それぐらいは仕方ないだろう。
え?ライオン頭の方?あいつは気絶したまんま──
「……ッ!!…!………!!…、……!!」
「お、起きた」
気絶したまんま、髪で簀巻きにして猿轡も噛ませて運んで来た。
引っ張って来た理由?もちろん情報が欲しいからだ。
どっちを連れてきても良かったが、俺を女呼ばわりしたからこいつにした。許さねぇからな。
「おはようさん、いい夢みれたか?」
「ぺっ、ぺっ!!糞、下等なヒト如きが俺に触れるな!!」
口に入っていた髪が余程気に入らなかったらしい。髪を完全に解いたら喉に手を突っ込みそうな勢いだ。
「早く解放しろ!さもないと貴様を焼き殺すぞ!」
「その場合、お前も燃えるけどな」
まぁ、魔法なら大体は魔法返しで消せるし、魔術も対処出来なくも無いから大丈夫なんだが。
「くっ、俺を捕らえてどうする気だ!?」
「情報が欲しい。ここはどこだ?」
「はっ!お前なんかに教えるか馬鹿め!!」
「……そうか、言う気がないのか。ところでだな、俺は今尋常じゃなく虫の居所が悪い。お前が何を言わなくても全部自己責任だからな?」
「は?何を言って──」
と余裕を見せるライオン頭をギリギリと締め上げる。
「っぐ!?」
「話したくなったら何時でもいいから言えよ?お前らは変に頑丈だからな、力加減を間違えて握りつぶしちまうかもしれん」
少しずつゆっくりと髪を締め上げ、魔族の身体を潰すように壊していく。
今、男魔族の身体は首から下がすっぽり俺の髪の中に入っている。大蛇が獲物に巻き付き、骨をへし折って行くように。巨人が身体を楽しみながら握り潰すように。
ゆっくり歩きながら、男が耐える声をBGMに角を二つほど曲がる頃、肋が三本と両腕、肩の骨が砕け、さらにもう一本肋が折れるだろうかと言った所で──男が音をあげた。
「わ、わかった!話す、話す!!」
「お、そうか。そりゃよかっ」
「ぐあっ!!」
髪を伝って骨が折れる感覚。肋が一本行ったか。
「そりゃよかった。で、ここはどこだ?」
「て、天空都市、エデュオンの地下だ…」
「そんな事は何となく知ってる。もっと正確に教えろ」
ギッッ!!と強く締め上げると、さらにもう何本か骨が折れる。
「あがっ、っ!!」
「使えないならこのままトマトジュースの出来上がりだ。言わなくても結構。あの丸刈り頭の魔族を引っ張ってこさせれば事足りる。別にお前じゃなくてもいいんだぜ?」
あの男を縛る俺の髪は少し多めにしてある。引きずることになるが、俺のところに来るぐらいなら簡単だろう。
「ぐ、が、エデュシア様のお屋敷、その下──」
くたっ、と男魔族から力が抜ける。気絶したらしい。
「使えねぇ」
一言そう呟いて、道の脇に投げる。
随分と歩いたが──ここが終着点か。
金属質な扉、それを前に俺は一度足を止め、そして開いた。
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