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本編
救出と二階
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俺とシステナ、二人がドアの先に見たのは遠近感が狂いそうなほど真っ白な部屋。
そしてその中で折り重なるようにして倒れ伏しているのは人影。
数は五つ、間違いない。
「見つけた」
「あれが貴様の仲間か?」
「あぁ」
ラウクムくん、クアイちゃん、リザ、シエル、そしてアーネ。
全員いる。
手を首にあて、もう一度一人ひとり呼吸を確認すると、ちゃんと息がある。
「よかった、生きてる」
「…いや、生きてはいるが…」
システナが言い淀む。それもそうだろう、俺も一目見て分かった。
身体中の魔力の大部分が抜かれ、ほぼ全員が魔力枯渇、あるいはその一歩手前まで来ていた。
「《勇者》、この部屋は中にいるだけで魔力を吸い上げる仕組みのようだ。貴様は大丈夫だろうが……その者達はそのせいで気を失っておるようだな」
「ちっ、これじゃあ助け出してもすぐには起きれないか」
ひとまず髪で二人、金剣を咥えて底上げされた腕力で二人抱え、シエルを髪で背中に縛る。
その光景を不思議そうに見る神サマ。血界を使えとでも思っているのだろうか。
血呪でも使えれば楽なんだが、これ以上血を使えば今度はこっちが疲労と貧血でぶっ倒れる。
システナと会ってから連続して休みもなく血界を使いすぎたせいで、とっくの昔に血のストックは底をついてる。ついでに逆探知でもかなり消耗したし。
「大丈夫か?」
金剣を咥えているので、喋る事が出来ないので頷いて答える。というか、実際は首を振りたいが、小さな少女の姿をした彼女が誰か一人でも担げるようにも思えない。
「ひとまずこの者達をこの部屋の上へ運び出せ。この魔法陣の部屋は気味が悪い故好かん。上の部屋で余が治療しよう」
流石神サマ、この人数の魔力枯渇をどうにか出来るらしい。
小さく頷き、金剣を咥えたまま階段を上り、五人をそっと降ろす。
クソ、顎が痛い。
「よくやった《勇者》。暫く時間を…そうだな、十五分で全員を起こしてやろう。それまで貴様は寝るなりなんなりしておけ」
「……いや、いい」
一分ほど座り込んだ後、再び金剣を手に取って立ち上がる。
「ちょっと…行ってくる」
「む?厠か?行ってこい」
そういう訳ではないのだが、適当に手を振って誤魔化した後、ついさっき上ってきた階段のすぐ側にある上へと通じる階段を上る。
階段は十秒とかからず上りきり、もう一つの音源の方へとたどり着く。
キノコ型の建物のカサにあたる部分、そこは一際広く、さらに何も無い部屋だった。
唯一あったのは豪奢な椅子──否、玉座。
そしてそこに腰掛ける妖艶な魔の女。
「久しぶり、か?ざっと二ヶ月ぶりだな。産獣師」
「わざわざココに来たの?自分から来なければ見逃してあげるつもりだったのに。あなた馬鹿でしょ」
理解できないと言わんばかりに首を振り、ため息と共にそう返すのは三大魔候の一人、産獣師のエデュシア・ネスティ。
「俺をハメた奴に絶対一撃は入れるって決めてたんでな。たとえそれが神サマだったとしても意地で一撃入れてたよ」
金剣をゆっくり持ち上げ、切っ先を産獣師に向ける。
そして相手が動くより早く。
俺は動いた。
そしてその中で折り重なるようにして倒れ伏しているのは人影。
数は五つ、間違いない。
「見つけた」
「あれが貴様の仲間か?」
「あぁ」
ラウクムくん、クアイちゃん、リザ、シエル、そしてアーネ。
全員いる。
手を首にあて、もう一度一人ひとり呼吸を確認すると、ちゃんと息がある。
「よかった、生きてる」
「…いや、生きてはいるが…」
システナが言い淀む。それもそうだろう、俺も一目見て分かった。
身体中の魔力の大部分が抜かれ、ほぼ全員が魔力枯渇、あるいはその一歩手前まで来ていた。
「《勇者》、この部屋は中にいるだけで魔力を吸い上げる仕組みのようだ。貴様は大丈夫だろうが……その者達はそのせいで気を失っておるようだな」
「ちっ、これじゃあ助け出してもすぐには起きれないか」
ひとまず髪で二人、金剣を咥えて底上げされた腕力で二人抱え、シエルを髪で背中に縛る。
その光景を不思議そうに見る神サマ。血界を使えとでも思っているのだろうか。
血呪でも使えれば楽なんだが、これ以上血を使えば今度はこっちが疲労と貧血でぶっ倒れる。
システナと会ってから連続して休みもなく血界を使いすぎたせいで、とっくの昔に血のストックは底をついてる。ついでに逆探知でもかなり消耗したし。
「大丈夫か?」
金剣を咥えているので、喋る事が出来ないので頷いて答える。というか、実際は首を振りたいが、小さな少女の姿をした彼女が誰か一人でも担げるようにも思えない。
「ひとまずこの者達をこの部屋の上へ運び出せ。この魔法陣の部屋は気味が悪い故好かん。上の部屋で余が治療しよう」
流石神サマ、この人数の魔力枯渇をどうにか出来るらしい。
小さく頷き、金剣を咥えたまま階段を上り、五人をそっと降ろす。
クソ、顎が痛い。
「よくやった《勇者》。暫く時間を…そうだな、十五分で全員を起こしてやろう。それまで貴様は寝るなりなんなりしておけ」
「……いや、いい」
一分ほど座り込んだ後、再び金剣を手に取って立ち上がる。
「ちょっと…行ってくる」
「む?厠か?行ってこい」
そういう訳ではないのだが、適当に手を振って誤魔化した後、ついさっき上ってきた階段のすぐ側にある上へと通じる階段を上る。
階段は十秒とかからず上りきり、もう一つの音源の方へとたどり着く。
キノコ型の建物のカサにあたる部分、そこは一際広く、さらに何も無い部屋だった。
唯一あったのは豪奢な椅子──否、玉座。
そしてそこに腰掛ける妖艶な魔の女。
「久しぶり、か?ざっと二ヶ月ぶりだな。産獣師」
「わざわざココに来たの?自分から来なければ見逃してあげるつもりだったのに。あなた馬鹿でしょ」
理解できないと言わんばかりに首を振り、ため息と共にそう返すのは三大魔候の一人、産獣師のエデュシア・ネスティ。
「俺をハメた奴に絶対一撃は入れるって決めてたんでな。たとえそれが神サマだったとしても意地で一撃入れてたよ」
金剣をゆっくり持ち上げ、切っ先を産獣師に向ける。
そして相手が動くより早く。
俺は動いた。
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