1,015 / 2,028
本編
救出と二階
しおりを挟む
俺とシステナ、二人がドアの先に見たのは遠近感が狂いそうなほど真っ白な部屋。
そしてその中で折り重なるようにして倒れ伏しているのは人影。
数は五つ、間違いない。
「見つけた」
「あれが貴様の仲間か?」
「あぁ」
ラウクムくん、クアイちゃん、リザ、シエル、そしてアーネ。
全員いる。
手を首にあて、もう一度一人ひとり呼吸を確認すると、ちゃんと息がある。
「よかった、生きてる」
「…いや、生きてはいるが…」
システナが言い淀む。それもそうだろう、俺も一目見て分かった。
身体中の魔力の大部分が抜かれ、ほぼ全員が魔力枯渇、あるいはその一歩手前まで来ていた。
「《勇者》、この部屋は中にいるだけで魔力を吸い上げる仕組みのようだ。貴様は大丈夫だろうが……その者達はそのせいで気を失っておるようだな」
「ちっ、これじゃあ助け出してもすぐには起きれないか」
ひとまず髪で二人、金剣を咥えて底上げされた腕力で二人抱え、シエルを髪で背中に縛る。
その光景を不思議そうに見る神サマ。血界を使えとでも思っているのだろうか。
血呪でも使えれば楽なんだが、これ以上血を使えば今度はこっちが疲労と貧血でぶっ倒れる。
システナと会ってから連続して休みもなく血界を使いすぎたせいで、とっくの昔に血のストックは底をついてる。ついでに逆探知でもかなり消耗したし。
「大丈夫か?」
金剣を咥えているので、喋る事が出来ないので頷いて答える。というか、実際は首を振りたいが、小さな少女の姿をした彼女が誰か一人でも担げるようにも思えない。
「ひとまずこの者達をこの部屋の上へ運び出せ。この魔法陣の部屋は気味が悪い故好かん。上の部屋で余が治療しよう」
流石神サマ、この人数の魔力枯渇をどうにか出来るらしい。
小さく頷き、金剣を咥えたまま階段を上り、五人をそっと降ろす。
クソ、顎が痛い。
「よくやった《勇者》。暫く時間を…そうだな、十五分で全員を起こしてやろう。それまで貴様は寝るなりなんなりしておけ」
「……いや、いい」
一分ほど座り込んだ後、再び金剣を手に取って立ち上がる。
「ちょっと…行ってくる」
「む?厠か?行ってこい」
そういう訳ではないのだが、適当に手を振って誤魔化した後、ついさっき上ってきた階段のすぐ側にある上へと通じる階段を上る。
階段は十秒とかからず上りきり、もう一つの音源の方へとたどり着く。
キノコ型の建物のカサにあたる部分、そこは一際広く、さらに何も無い部屋だった。
唯一あったのは豪奢な椅子──否、玉座。
そしてそこに腰掛ける妖艶な魔の女。
「久しぶり、か?ざっと二ヶ月ぶりだな。産獣師」
「わざわざココに来たの?自分から来なければ見逃してあげるつもりだったのに。あなた馬鹿でしょ」
理解できないと言わんばかりに首を振り、ため息と共にそう返すのは三大魔候の一人、産獣師のエデュシア・ネスティ。
「俺をハメた奴に絶対一撃は入れるって決めてたんでな。たとえそれが神サマだったとしても意地で一撃入れてたよ」
金剣をゆっくり持ち上げ、切っ先を産獣師に向ける。
そして相手が動くより早く。
俺は動いた。
そしてその中で折り重なるようにして倒れ伏しているのは人影。
数は五つ、間違いない。
「見つけた」
「あれが貴様の仲間か?」
「あぁ」
ラウクムくん、クアイちゃん、リザ、シエル、そしてアーネ。
全員いる。
手を首にあて、もう一度一人ひとり呼吸を確認すると、ちゃんと息がある。
「よかった、生きてる」
「…いや、生きてはいるが…」
システナが言い淀む。それもそうだろう、俺も一目見て分かった。
身体中の魔力の大部分が抜かれ、ほぼ全員が魔力枯渇、あるいはその一歩手前まで来ていた。
「《勇者》、この部屋は中にいるだけで魔力を吸い上げる仕組みのようだ。貴様は大丈夫だろうが……その者達はそのせいで気を失っておるようだな」
「ちっ、これじゃあ助け出してもすぐには起きれないか」
ひとまず髪で二人、金剣を咥えて底上げされた腕力で二人抱え、シエルを髪で背中に縛る。
その光景を不思議そうに見る神サマ。血界を使えとでも思っているのだろうか。
血呪でも使えれば楽なんだが、これ以上血を使えば今度はこっちが疲労と貧血でぶっ倒れる。
システナと会ってから連続して休みもなく血界を使いすぎたせいで、とっくの昔に血のストックは底をついてる。ついでに逆探知でもかなり消耗したし。
「大丈夫か?」
金剣を咥えているので、喋る事が出来ないので頷いて答える。というか、実際は首を振りたいが、小さな少女の姿をした彼女が誰か一人でも担げるようにも思えない。
「ひとまずこの者達をこの部屋の上へ運び出せ。この魔法陣の部屋は気味が悪い故好かん。上の部屋で余が治療しよう」
流石神サマ、この人数の魔力枯渇をどうにか出来るらしい。
小さく頷き、金剣を咥えたまま階段を上り、五人をそっと降ろす。
クソ、顎が痛い。
「よくやった《勇者》。暫く時間を…そうだな、十五分で全員を起こしてやろう。それまで貴様は寝るなりなんなりしておけ」
「……いや、いい」
一分ほど座り込んだ後、再び金剣を手に取って立ち上がる。
「ちょっと…行ってくる」
「む?厠か?行ってこい」
そういう訳ではないのだが、適当に手を振って誤魔化した後、ついさっき上ってきた階段のすぐ側にある上へと通じる階段を上る。
階段は十秒とかからず上りきり、もう一つの音源の方へとたどり着く。
キノコ型の建物のカサにあたる部分、そこは一際広く、さらに何も無い部屋だった。
唯一あったのは豪奢な椅子──否、玉座。
そしてそこに腰掛ける妖艶な魔の女。
「久しぶり、か?ざっと二ヶ月ぶりだな。産獣師」
「わざわざココに来たの?自分から来なければ見逃してあげるつもりだったのに。あなた馬鹿でしょ」
理解できないと言わんばかりに首を振り、ため息と共にそう返すのは三大魔候の一人、産獣師のエデュシア・ネスティ。
「俺をハメた奴に絶対一撃は入れるって決めてたんでな。たとえそれが神サマだったとしても意地で一撃入れてたよ」
金剣をゆっくり持ち上げ、切っ先を産獣師に向ける。
そして相手が動くより早く。
俺は動いた。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜
ニゲル
ファンタジー
ダンジョン配信×変身ヒーロー×学園ラブコメで送る物語!
低身長であることにコンプレックスを抱える少年寄元生人はヒーローに憧れていた。
ダンジョン配信というコンテンツで活躍しながら人気を得て、みんなのヒーローになるべく日々配信をする。
そんな中でダンジョンオブザーバー、通称DOという正義の組織に所属してダンジョンから現れる異形の怪物サタンを倒すことを任せられる。
そこで社長令嬢である峰山寧々と出会い、共に学園に通いたくさんの時間を共にしていくこととなる。
数多の欲望が渦巻きその中でヒーローなるべく、主人公生人の戦いは幕を開け始める……!!
もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜
雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。
しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。
英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。
顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。
ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。
誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。
ルークに会いたくて会いたくて。
その願いは。。。。。
とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。
他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。
本編完結しました!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ボッチ英雄譚
3匹の子猫
ファンタジー
辺境の村で生まれ育ったロンは15才の成人の儀で「ボッチ」という聞いたこともないジョブを神様から授けられました。
ボッチのジョブはメリットも大きいですが、デメリットも大きかったのです。
彼には3人の幼馴染みと共に冒険者になるという約束がありましたが、ボッチの特性上、共にパーティーを組むことが難しそうです。彼は選択しました。
王都でソロ冒険者になることを!!
この物語はトラブルに巻き込まれやすい体質の少年ロンが、それらを乗り越え、いつの日か英雄と呼ばれるようになるまでを描いた物語です。
ロンの活躍を応援していきましょう!!
どこにでもある異世界転移~第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!
ダメ人間共同体
ファンタジー
第三部 今最後の戦いが始る!!・・・・と思う。 すべてのなぞが解決される・・・・・と思う。 碧たちは現代に帰ることが出来るのか? 茜は碧に会うことが出来るのか? 適当な物語の最終章が今始る。
第二部完結 お兄ちゃんが異世界転移へ巻き込まれてしまった!! なら、私が助けに行くしか無いじゃ無い!! 女神様にお願いして究極の力を手に入れた妹の雑な英雄譚。今ここに始る。
第一部完結 修学旅行中、事故に合ったところを女神様に救われクラスメイトと異世界へ転移することになった。優しい女神様は俺たちにチート?を授けてくれた。ある者は職業を選択。ある者はアイテムを選択。俺が選んだのは『とても便利なキッチンセット【オマケ付き】』 魔王やモンスター、悪人のいる異世界で生き残ることは出来るのか?現代に戻ることは出来るのか?
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる