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本編
暗闇と光の部屋
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上下左右、真四角の石のブロックを敷き詰めた形の通路を、コツコツとブーツの底を鳴らしながら歩く。
明かりは一つもなく、コツコツと響く足音が石の壁に跳ね、反響の末に暗闇に消えていく。少々急な下り坂でもあるようで、緋眼が無ければ転んで大惨事になっていたかもしれない。
それと、穴の中に入り、歩き続けて分かったのだが、どうやら通路は螺旋状になっているらしく、緩いカーブを延々と歩き続けているようだ。
穴の中は冬である事も相まって一段とひんやりとしており、歩くだけで体温と体力を奪い、俺を疲弊させて行く。
……不味いな。
身体にのしかかる疲労感。不眠不休で魔獣を狩り続け、四十キロ以上走り、次は神経と体力を削る暗闇の中。心も身体も限界に近い。
一度壁に寄りかかり、目を閉じて自問自答してみる。
……一度休むか?いや、その間に逃げられる可能性もある。それに…恐らくここは既に相手の腹の中だと思っていていいだろう。
答えはやはり一つ。進むしかない。
進むしかないのだ。
「………っ」
目を開き、壁から離れ、再び歩き始める。
『大丈夫か?』
大丈夫じゃないさ。だが、だからといって止まる理由にはならない。
時折、水や干し肉を口に含みながら歩き進み、延々と坂道を回りながら下る作業。それが終わったのは、本当に唐突だった。
ふっ、と。
突然視界が開け、目を潰さんばかりに光が差し込む。
「痛っ……!?」
思わず瞼を閉じ、すぐに目を開く。
「あーびっくりした」
スキルの関係上、明るさには慣れやすい。すぐさまあたりを見まわしてみると……
「…なんだここ」
暗闇の末、出たのはそれとは対極にあるような、白く明るい部屋。
明かりがあるわけではない。ただこの部屋そのものが光っているのだ。
見たところ、これまで歩いてきた暗闇の壁や床と同じ材質らしいが…こんなに明るいのに、ここへ踏み入るまで全く気付かなかった。やはり魔法か何かの力が働いているのだろうか。
部屋はそれなりに広く……そうだな、金剣銀剣を振るには少し高さが足りないだろうが、横の広さはかなりある感じか。
そして正面にはこの部屋には似つかわしくない、ボロボロになった木製の扉が。
「………。」
近づいて耳を澄ませてみるが、音はない。ひとまずこの扉の向こうには誰もいないようだ。
確認をしてからそっと音が鳴らないように細心の注意をはらって開く。
「おぉ、ララ、帰ったか」
はず、だったのに。
扉の向こうに、美しいとさえ思える白髪を持った筋骨隆々の大男がいた。
「うん?お前さんは誰だ?」
明かりは一つもなく、コツコツと響く足音が石の壁に跳ね、反響の末に暗闇に消えていく。少々急な下り坂でもあるようで、緋眼が無ければ転んで大惨事になっていたかもしれない。
それと、穴の中に入り、歩き続けて分かったのだが、どうやら通路は螺旋状になっているらしく、緩いカーブを延々と歩き続けているようだ。
穴の中は冬である事も相まって一段とひんやりとしており、歩くだけで体温と体力を奪い、俺を疲弊させて行く。
……不味いな。
身体にのしかかる疲労感。不眠不休で魔獣を狩り続け、四十キロ以上走り、次は神経と体力を削る暗闇の中。心も身体も限界に近い。
一度壁に寄りかかり、目を閉じて自問自答してみる。
……一度休むか?いや、その間に逃げられる可能性もある。それに…恐らくここは既に相手の腹の中だと思っていていいだろう。
答えはやはり一つ。進むしかない。
進むしかないのだ。
「………っ」
目を開き、壁から離れ、再び歩き始める。
『大丈夫か?』
大丈夫じゃないさ。だが、だからといって止まる理由にはならない。
時折、水や干し肉を口に含みながら歩き進み、延々と坂道を回りながら下る作業。それが終わったのは、本当に唐突だった。
ふっ、と。
突然視界が開け、目を潰さんばかりに光が差し込む。
「痛っ……!?」
思わず瞼を閉じ、すぐに目を開く。
「あーびっくりした」
スキルの関係上、明るさには慣れやすい。すぐさまあたりを見まわしてみると……
「…なんだここ」
暗闇の末、出たのはそれとは対極にあるような、白く明るい部屋。
明かりがあるわけではない。ただこの部屋そのものが光っているのだ。
見たところ、これまで歩いてきた暗闇の壁や床と同じ材質らしいが…こんなに明るいのに、ここへ踏み入るまで全く気付かなかった。やはり魔法か何かの力が働いているのだろうか。
部屋はそれなりに広く……そうだな、金剣銀剣を振るには少し高さが足りないだろうが、横の広さはかなりある感じか。
そして正面にはこの部屋には似つかわしくない、ボロボロになった木製の扉が。
「………。」
近づいて耳を澄ませてみるが、音はない。ひとまずこの扉の向こうには誰もいないようだ。
確認をしてからそっと音が鳴らないように細心の注意をはらって開く。
「おぉ、ララ、帰ったか」
はず、だったのに。
扉の向こうに、美しいとさえ思える白髪を持った筋骨隆々の大男がいた。
「うん?お前さんは誰だ?」
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