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本編
壁と罠
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ドッ、ドッ、ドッ、と。
走るというより、水面を跳ねる小石のように、俺も砂の上を跳ぶようにして突き進んでいた。
途中、よく魔獣を見かけたが、大半は無視して来た。向こうが反応出来なかったってのもあるが。
それでも文字通り食らいついてきた奴らはもれなく寸断してる。もちろん足は止めず、突き進み続けながら。
『もうすぐ・反応地点です』
マキナが小さく答え、俺がそれに小さく返す。
しかし……と、一人心の中で呟く。
緋眼で強化された目で辺りを見回すが、それらしき人物も無ければ、その姿を隠すような遮蔽物もロクにない。当然、小屋のようなものも無い。
これは………
「またハメられたか?」
逆探知にはよく対策が取られる。
実に様々な対策があるが、その中で特に簡単で効果がある対策と言えば、間違った位置を探知させるものだ。
「いや、よく見るがいい、《勇者》よ。貴様ならよく良く見ればわかるであろう?方向はもう少し左だの」
「………?」
じっ、と見続けていると、僅かに揺らぐ光の壁…の様なものが見えた。距離的にはここから二キロぐらい先か。
「なんだありゃ…」
「なにやら魔力が怪しく渦巻いておる」
魔力が怪しく渦巻いてる…?まぁいい。
「とりあえず──ぶっ壊してみるか」
何度か跳んだ後、光の壁に到着してそう呟く。
大体大きさは…そうだな、高さも横幅もちょうど人が一人がギリギリ通り抜けられる分ぐらい。
『壊すなら…《血刃》じゃないか?』
了解。
「第三血界──《血刃》」
一瞬だけ展開した血の刃。
あらゆる物を断ち切る、絶対切断の刃が右の手のひらから出現。それと同時に、強化された瞬発力で血刃をめちゃくちゃに振り、一秒にも満たない内に血刃を仕舞う。
「こんなもん、か」
「む?切れておらんぞ?貴様しくじったか?」
「いや──切れてるよ」
手応えはあった。
トン、と触れると、光の壁が儚い音をたてて崩れ去る。
「な?」
光の壁が崩れ去った後、そこにあったのは、下向きの穴。これを隠すためにさっきの壁があったのか?
「………。」
『どうした、今代の?』
「罠の可能性を考えてた」
率直にそう言ってみる。
俺をハメた相手は余程用意周到だったのだろう、どうやってかは分からないが結界から出る際に仲間と離れ離れにし、メッセージで嘘の地点におびき寄せて魔獣の群れの真っ只中に放り込んだりしてきた。
そいつが今度は地下へ来いと行っている。それも向こうは間違いなく気づいているだろう。
罠が仕込まれていないわけがない。
『仮に罠だからって、お前は止まるのか?』
「馬鹿言え、今は突き進むしかないだろ」
反射的に口からその言葉が出た。
『なら聞く必要は無いだろ』
「まぁ、そうなんだがな。それでも…分かってても罠の中に飛び込むってのは気分の良いもんじゃない」
舌打ちを一つし、少女に中に入るかどうか聞くと、「大兄の領域を踏み荒らすつもりは無いのでな。余はここで待つ」との事だ。自衛が出来るなら大丈夫だろう。
『さぁ──』
「──いくか」
走るというより、水面を跳ねる小石のように、俺も砂の上を跳ぶようにして突き進んでいた。
途中、よく魔獣を見かけたが、大半は無視して来た。向こうが反応出来なかったってのもあるが。
それでも文字通り食らいついてきた奴らはもれなく寸断してる。もちろん足は止めず、突き進み続けながら。
『もうすぐ・反応地点です』
マキナが小さく答え、俺がそれに小さく返す。
しかし……と、一人心の中で呟く。
緋眼で強化された目で辺りを見回すが、それらしき人物も無ければ、その姿を隠すような遮蔽物もロクにない。当然、小屋のようなものも無い。
これは………
「またハメられたか?」
逆探知にはよく対策が取られる。
実に様々な対策があるが、その中で特に簡単で効果がある対策と言えば、間違った位置を探知させるものだ。
「いや、よく見るがいい、《勇者》よ。貴様ならよく良く見ればわかるであろう?方向はもう少し左だの」
「………?」
じっ、と見続けていると、僅かに揺らぐ光の壁…の様なものが見えた。距離的にはここから二キロぐらい先か。
「なんだありゃ…」
「なにやら魔力が怪しく渦巻いておる」
魔力が怪しく渦巻いてる…?まぁいい。
「とりあえず──ぶっ壊してみるか」
何度か跳んだ後、光の壁に到着してそう呟く。
大体大きさは…そうだな、高さも横幅もちょうど人が一人がギリギリ通り抜けられる分ぐらい。
『壊すなら…《血刃》じゃないか?』
了解。
「第三血界──《血刃》」
一瞬だけ展開した血の刃。
あらゆる物を断ち切る、絶対切断の刃が右の手のひらから出現。それと同時に、強化された瞬発力で血刃をめちゃくちゃに振り、一秒にも満たない内に血刃を仕舞う。
「こんなもん、か」
「む?切れておらんぞ?貴様しくじったか?」
「いや──切れてるよ」
手応えはあった。
トン、と触れると、光の壁が儚い音をたてて崩れ去る。
「な?」
光の壁が崩れ去った後、そこにあったのは、下向きの穴。これを隠すためにさっきの壁があったのか?
「………。」
『どうした、今代の?』
「罠の可能性を考えてた」
率直にそう言ってみる。
俺をハメた相手は余程用意周到だったのだろう、どうやってかは分からないが結界から出る際に仲間と離れ離れにし、メッセージで嘘の地点におびき寄せて魔獣の群れの真っ只中に放り込んだりしてきた。
そいつが今度は地下へ来いと行っている。それも向こうは間違いなく気づいているだろう。
罠が仕込まれていないわけがない。
『仮に罠だからって、お前は止まるのか?』
「馬鹿言え、今は突き進むしかないだろ」
反射的に口からその言葉が出た。
『なら聞く必要は無いだろ』
「まぁ、そうなんだがな。それでも…分かってても罠の中に飛び込むってのは気分の良いもんじゃない」
舌打ちを一つし、少女に中に入るかどうか聞くと、「大兄の領域を踏み荒らすつもりは無いのでな。余はここで待つ」との事だ。自衛が出来るなら大丈夫だろう。
『さぁ──』
「──いくか」
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