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本編
集団と襲撃
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リーザからのメッセージを簡単にまとめると、「一班は無事だ。だけど合流しよう」ということだった。普通に予想の範疇だったが。
で、今向かってる訳だが。
『なんだってこんなに魔獣がうじゃうじゃといるんだよ』
ぼそりと呟いてみるが、当然誰も答えない。ついでに魔獣からも無視された。
まぁ、かなり遠くから緋眼を相当強化して見ているので、見つかったらそれはそれで困るのだが。
一応メッセージも飛ばしてみたが、誰も答えない。ということは、このうんざりするほどの魔獣の群れと交戦中ということだろう。
あと、どうでもいいが女神サマは魔獣を見るのはこれが初めてだったらしい。汚物を見るような目で「なんだこの醜悪な生物は」と顔を顰めていた。
『………。』
『どうした、今代の』
『いや、何。少し気になったことがあってな』
「ふむ、なんだ?言ってみるが良い」
その声は俺の頭より上から。俺の小さな肩を見事足場として立つシステナだ。降ろそうとしても降りようとしねぇ。諦めた。
『あんたじゃねぇよ。五十年前の先輩と話してんだ』
「過去の勇者か。それにしては五十年?百が足らんのではないか?あるいは桁がひとつか?」
何言ってんだこいつ。シャルは間違いなく(約)五十年前にいた《勇者》だが。
『……!今代の!何か飛んで来──!』
たとえるなら、水分がぎっしり詰まった重い野菜や果物。それが内側から爆ぜるような音。
不審に思い、音のした方を見上げると、下顎のみ残した女神システナの頭部が──いや、システナの頭部の残骸があった。
『んあ……っ!?』
制御とバランスを失ったシステナの身体がゆっくりと崩れ落ち、落下する寸前で──俺の肩をがっちりと掴んできた。
『どゅぅおおおおおおおおおおおお!?』
「煩いぞ、少し静かにせぬか。頭に響く」
『今代の!驚くのは後にしろ!次が来るぞ!』
『!?』
慌てて伏せると、半瞬遅れて俺の頭があった場所を超高速で通り過ぎ、通過していくのが分かった。
『ンだ今の!?おい、見えたかシャル!?』
『一応な。お前の拳ぐらいのサイズの鉄塊が飛んで来てた』
そりゃ死ねる。普通に死ねる。
マトモに食らえば当然、さっきの女神サマみたいな事になる。
『てかアンタは大丈夫なのか?』
伏せることすらしない神サマを見上げ、伏せるようジェスチャーしながら聞くと、不要とばかりに手を払いながら答える。
「余には結界があるからな。油断さえせねばこの程度、なんの事は無い」
『そっちじゃねぇ。顔面吹き飛んでたけどなんで無事なのかって話だ』
「神は神にしか殺せぬ。故に余はそう簡単に死なぬよ。せいぜい多少気を失う程度だ」
はぁ。そうですか。
『んじゃほっといても大丈夫だな?』
「……貴様、何をする気だ?」
僅かに眉を寄せ、少しだけ不機嫌そうに少女が言う。
『別に。《勇者》が《勇者》らしく殲滅するだけだよ』
そう言い残すと、俺はシステナをその場に残して走り始めた。
で、今向かってる訳だが。
『なんだってこんなに魔獣がうじゃうじゃといるんだよ』
ぼそりと呟いてみるが、当然誰も答えない。ついでに魔獣からも無視された。
まぁ、かなり遠くから緋眼を相当強化して見ているので、見つかったらそれはそれで困るのだが。
一応メッセージも飛ばしてみたが、誰も答えない。ということは、このうんざりするほどの魔獣の群れと交戦中ということだろう。
あと、どうでもいいが女神サマは魔獣を見るのはこれが初めてだったらしい。汚物を見るような目で「なんだこの醜悪な生物は」と顔を顰めていた。
『………。』
『どうした、今代の』
『いや、何。少し気になったことがあってな』
「ふむ、なんだ?言ってみるが良い」
その声は俺の頭より上から。俺の小さな肩を見事足場として立つシステナだ。降ろそうとしても降りようとしねぇ。諦めた。
『あんたじゃねぇよ。五十年前の先輩と話してんだ』
「過去の勇者か。それにしては五十年?百が足らんのではないか?あるいは桁がひとつか?」
何言ってんだこいつ。シャルは間違いなく(約)五十年前にいた《勇者》だが。
『……!今代の!何か飛んで来──!』
たとえるなら、水分がぎっしり詰まった重い野菜や果物。それが内側から爆ぜるような音。
不審に思い、音のした方を見上げると、下顎のみ残した女神システナの頭部が──いや、システナの頭部の残骸があった。
『んあ……っ!?』
制御とバランスを失ったシステナの身体がゆっくりと崩れ落ち、落下する寸前で──俺の肩をがっちりと掴んできた。
『どゅぅおおおおおおおおおおおお!?』
「煩いぞ、少し静かにせぬか。頭に響く」
『今代の!驚くのは後にしろ!次が来るぞ!』
『!?』
慌てて伏せると、半瞬遅れて俺の頭があった場所を超高速で通り過ぎ、通過していくのが分かった。
『ンだ今の!?おい、見えたかシャル!?』
『一応な。お前の拳ぐらいのサイズの鉄塊が飛んで来てた』
そりゃ死ねる。普通に死ねる。
マトモに食らえば当然、さっきの女神サマみたいな事になる。
『てかアンタは大丈夫なのか?』
伏せることすらしない神サマを見上げ、伏せるようジェスチャーしながら聞くと、不要とばかりに手を払いながら答える。
「余には結界があるからな。油断さえせねばこの程度、なんの事は無い」
『そっちじゃねぇ。顔面吹き飛んでたけどなんで無事なのかって話だ』
「神は神にしか殺せぬ。故に余はそう簡単に死なぬよ。せいぜい多少気を失う程度だ」
はぁ。そうですか。
『んじゃほっといても大丈夫だな?』
「……貴様、何をする気だ?」
僅かに眉を寄せ、少しだけ不機嫌そうに少女が言う。
『別に。《勇者》が《勇者》らしく殲滅するだけだよ』
そう言い残すと、俺はシステナをその場に残して走り始めた。
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