大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

不機嫌と混乱

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『……はっ、なんだそりゃ。俺達がヴェナムの生まれ変わりだってか?そりゃまた急な話だな』
何かを誤魔化すようにしてそう言うと、頬から何かがつぅ、と垂れる感覚。
それを確認するために頬を触れようとするが、硬い鎧に妨げられ、触れることが出来ない。
しかし臭いで分かる。血だ。鎧をすり抜け、どうやってか分からないが、頬を浅く切り裂かれる。
『っ』
「口を慎め。大兄ヴェナムは神であるぞ。確かに死に、存在は消滅したが、その力を持っただけの存在が生まれ変わりとは片腹痛い。貴様は全く同じ力を持ったネズミがいれば生まれ変わりと言うのか?」
恐ろしく冷えた眼。
人でも殺せるような眼光、という表現があるが、それとは違う。
殺す価値もないと。殺すのですら煩わしいと言わんばかりの目。
「強いて言うなら貴様らは大兄の眷属に近しい。それを事もあろうに大兄の生まれ変わりを名乗るか?」
『ほらバカ、機嫌を損ねちまったじゃねぇか。面倒なことになるぞ』
先に言えバカ。
『あ──』
「よい。喋るな。不快なだけだ。それより貴様は役割を果たせ」
ため息も吐かずに、ふい、とそっぽを向くシステナ。
と、そうだ、言い忘れてた。
『システナ、一つ言いたいんだが』
「喋るなと言っておる。余の身体に触れるのは気に食わんが、仕方の無い事ゆえ特別に許す。余を抱えて早う集落へ案内せよ」
歩く気無ぇのかよ。じゃなくて。
喋るなと言われても伝えなくては。
『集落なんてこの辺には無いぞ』
「だから喋るなと言って──は?」
『じゃ、散々アンタに喋るなって言われたから黙るな』
「いや、待──」
ひょいと少女を肩に担ぎ、丸太か何かのように扱って歩き始める。とりあえず結界の方に向かうか。
早く一班のメンバーと合流したいが、今メッセージを飛ばして合流した所で面倒事になることは間違いないだろう。歩いているうちにコレが解決するといいんだが…さて、どうするか。
「止めぬかっ!貴様の肩が余の肉の薄い腹を貫いて内臓にずんずん食い込んでおるぞっ!!」
少女がバシバシバンバンと俺の背中を叩くが、いくら神と言っても腕力は見た目通りの少女らしい。全く痛くない。
「それより貴様!言っておったな!なぜ集落が存在せぬ!この辺りは余の神殿があり、余の庇護下であったはずだ!!この近くに信者が集落を築いておるはずだぞ!?」
…んー?何でこんなに慌ててやがる?
「待て、神力がほとんど回復しておらぬ。おかしいぞ。これでは魔力がいくらあっても意味が無いではないか………おい貴様、外見は分からぬが、声からしてまだ二十年程度しか生を受けておらぬだろうが、最近の世は知っておろう!?」
『……………お前、何年寝てたか分かってるか?』
ずっと黙ってても構わなかったが、流石にうるさくなって思わずそう答えてしまった。
「たかだか五十年程度であろう?ヒトの世が移りやすいと言えど、たかだか五十年程度で余の庇護下にあった信者達が全て煙のように消える訳がない!!ヒトとは絶え間無き変化を求めると同時に、安らぎと安寧を求める者でもある!余の力があるのなら、僅か五十年でこうも容易く消える訳……が…」
ここで急に口が止まる。
「まさか、あの兄は…ッ!!貴様!少し手を離せ!」
え?じゃあ離すけど……っておい、人の上に登るんじゃない。ワンピース姿でそんな所登っちゃ不味いだろ。
「間違いない…あれは最終結界。あのような力技で展開しようとは。おい、あの結界はいつから張られている?」
『ざっと五十年。聖女が四代引き継いで張り続けてる』
「あんなものを五十年……!?愚かな。だから集落が消えたのだな……納得がいった」
………??全くわからん。
「おい《勇者》」
『なんだ女神』
「少し事情が変わった。近くの集落にでは無く、一度《聖女》に会わせよ」
『は?』
なんつー無理を言うのか。
『マスター・メッセージです』
『……誰からだ』
そしてマキナ、もう少し空気を読んで欲しかったかな。仕方ないけど。
『リーザ・ヒラム様・です』
しかも向こうからメッセージを飛ばしてきたか。
『……繋げ。おい女神、お前の話は後からだ』
悩んだ結果、繋げることにした。
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