994 / 2,027
本編
逆襲と臨戦態勢
しおりを挟む
バキッとかバギャッとかそんな感じの音。
そんな音を立てて砂の中から掘り起こした物体が砕けた。
と同時に、ロクに緋眼や目を凝らして魔力を見るまでもなく、濃密な魔力が溢れ出す。
「なぁっ!?」
『下がれっ!!』
シャルに言われずとも、慌てて後ろに飛びずさる。
両手で銀剣を握りしめて臨戦態勢を取り、緋眼を意識して強化。
嫌悪感を覚えるほど大量に溢れ出る魔力に、たらりと背筋に垂れる脂汗。
今気づいたが、あの変な物体の中はどうやら空洞だったらしい。
中に何か──あるいは誰かが入っていた?こんな所で、いや、こんな地中で?
──封印。そんな言葉が頭の中を駆け抜けていった。
まさか、あの六角錐を二つくっつけたようなあの箱は、何者かを出られないように封印していたものだった?
そいつが発する魔力が漏れ出て、それが結果として妨害となっていた?
そこまで思考がたどり着いた瞬間、半ば反射的にマキナの名前を叫ぶようにして呼んでいた。
「マキナッッッ!!」
しかし──
『────。』
「!?」
マキナが反応しない。過去に一度もなかった事だ。明らかに異常事態だ。
「ちィ!」
久々に自力で《千変》を操り、俺の身体に纏わせていく。
それと並行して、シャルに声をかける。
「シャル、血界の全面使用の許可をくれ」
『緊急事態だ。やれ』
『《血呪》──限定展開』
即座に血界を手足のみに絞って発動。もしもなにかしてくるのなら、即座に反応出来るよう、中腰になって構える。
その瞬間、撒き散らされていた魔力が唐突に掻き消える。
いや違う。これは消えたんじゃない。
使用された。そう直感した。
「《血鎧》!!」
背中が燃え上がるように熱を持ち、体内の血を消費してさらに血界を発動。《血呪》の上から《血鎧》の赤い紋様が身体中に浮かび上がる。
そう認識したと同時に、俺の左肩から血がどぽっ、と溢れ出す。
『っ…!?』
『なっ…《血鎧》は発動しているのか!?』
している。間違いない。
鎧の上から軽く傷口を見てみると、恐ろしく鋭利な刃物か何かで切り裂かれたらしい。いっそ美しいとすら思える傷口が見えた。
『物理か?』
『いや、魔法…魔術だ』
証拠に、俺の《血鎧》は効果がしっかり発揮されている。莫大な魔力を蓄えこんだ《血鎧》の紋様が熱を帯び、熱いとすら思えるほどだ。
つまり。
ただただ純粋に《血鎧》のキャパオーバー。
空恐ろしいまでの魔力が込められた魔法、あるいは魔術の攻撃に、《血鎧》の方が音をあげたのだ。
『上等、ぶっ殺してその首持ち帰ってやらぁ』
「む?人か?」
と。
俺でもシャルでも、ましてやマキナの声でもない声がした。
もちろん──と言っていいのか分からないが──その声は箱の中から。
ひょいと顔を出したのは、蜂蜜のような金の髪と、空より澄んだ青い瞳を持つ少女。
彼女を見た瞬間、背中の《勇者紋》がざわついた。
『………てめぇ誰だ?』
それを無視し、ひねり出した言葉はそんな言葉。
すると、少女は俺の目を見返し、こちらも全く答えにならないことを呟いた。
「…ん?いや、貴様は人ではないな?《勇者》か」
そんな音を立てて砂の中から掘り起こした物体が砕けた。
と同時に、ロクに緋眼や目を凝らして魔力を見るまでもなく、濃密な魔力が溢れ出す。
「なぁっ!?」
『下がれっ!!』
シャルに言われずとも、慌てて後ろに飛びずさる。
両手で銀剣を握りしめて臨戦態勢を取り、緋眼を意識して強化。
嫌悪感を覚えるほど大量に溢れ出る魔力に、たらりと背筋に垂れる脂汗。
今気づいたが、あの変な物体の中はどうやら空洞だったらしい。
中に何か──あるいは誰かが入っていた?こんな所で、いや、こんな地中で?
──封印。そんな言葉が頭の中を駆け抜けていった。
まさか、あの六角錐を二つくっつけたようなあの箱は、何者かを出られないように封印していたものだった?
そいつが発する魔力が漏れ出て、それが結果として妨害となっていた?
そこまで思考がたどり着いた瞬間、半ば反射的にマキナの名前を叫ぶようにして呼んでいた。
「マキナッッッ!!」
しかし──
『────。』
「!?」
マキナが反応しない。過去に一度もなかった事だ。明らかに異常事態だ。
「ちィ!」
久々に自力で《千変》を操り、俺の身体に纏わせていく。
それと並行して、シャルに声をかける。
「シャル、血界の全面使用の許可をくれ」
『緊急事態だ。やれ』
『《血呪》──限定展開』
即座に血界を手足のみに絞って発動。もしもなにかしてくるのなら、即座に反応出来るよう、中腰になって構える。
その瞬間、撒き散らされていた魔力が唐突に掻き消える。
いや違う。これは消えたんじゃない。
使用された。そう直感した。
「《血鎧》!!」
背中が燃え上がるように熱を持ち、体内の血を消費してさらに血界を発動。《血呪》の上から《血鎧》の赤い紋様が身体中に浮かび上がる。
そう認識したと同時に、俺の左肩から血がどぽっ、と溢れ出す。
『っ…!?』
『なっ…《血鎧》は発動しているのか!?』
している。間違いない。
鎧の上から軽く傷口を見てみると、恐ろしく鋭利な刃物か何かで切り裂かれたらしい。いっそ美しいとすら思える傷口が見えた。
『物理か?』
『いや、魔法…魔術だ』
証拠に、俺の《血鎧》は効果がしっかり発揮されている。莫大な魔力を蓄えこんだ《血鎧》の紋様が熱を帯び、熱いとすら思えるほどだ。
つまり。
ただただ純粋に《血鎧》のキャパオーバー。
空恐ろしいまでの魔力が込められた魔法、あるいは魔術の攻撃に、《血鎧》の方が音をあげたのだ。
『上等、ぶっ殺してその首持ち帰ってやらぁ』
「む?人か?」
と。
俺でもシャルでも、ましてやマキナの声でもない声がした。
もちろん──と言っていいのか分からないが──その声は箱の中から。
ひょいと顔を出したのは、蜂蜜のような金の髪と、空より澄んだ青い瞳を持つ少女。
彼女を見た瞬間、背中の《勇者紋》がざわついた。
『………てめぇ誰だ?』
それを無視し、ひねり出した言葉はそんな言葉。
すると、少女は俺の目を見返し、こちらも全く答えにならないことを呟いた。
「…ん?いや、貴様は人ではないな?《勇者》か」
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記
スィグトーネ
ファンタジー
ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。
そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。
まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。
全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。
間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。
※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています
※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる