大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

障壁と臨界点

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──障壁。
聖女サマが使う結界、その劣化版の事を大体そう言う。俺達がよく使うフィールド、あれも障壁の一種だ。
外向きと内向きの二種類があり、外向き(相手の方)に効果が発揮するものは、大体障壁の表面に効果が現れ、内向き(自分の方)に効果が発揮するものは、大体一定範囲内、障壁で囲ってある場合はその内側に効果が発揮される。
聖女サマ以外のヒトでも扱うことが出来る魔法ではある一方で、結界と比較した際の効果や範囲はぐっと落ちる。
そしていちばん難易度が低いものの障壁の難易度でも上二級クラス……難易度が低いものはほとんど使い物にならないと聞いているので、《臨界点》の扱う障壁は少なくともそれ以上だろう。
「障壁?お前、そんな高難易度の魔法を使って気配遮断をしてたのか?」
「我輩の使う障壁はそこまで難しいものじゃ無いんじゃがの」
「そこまで難しくないって…上二級が最低ラインだろ、障壁って」
「ほう、よく知っておるの。気配遮断の障壁ならその程度で充分じゃからな」
上二級をその程度、か…流石だな。
「わざわざ障壁を使う程の事かよ」
「我輩はあの厄介者が目障りでの。出来れば関わり合いになりたくなかったんじゃよ。この魔法は魔力消費が少ない上、しっかり対象を絞ればそれなりの効力を発揮する。まさにうってつけじゃ」
「結局破られてんじゃねぇか」
気配遮断の障壁なら内向きだろうか。その内側の物質を周りに紛れやすくする…とか。本人に聞いたところで答えてくれないだろうが。
「けどのう《緋眼騎士》、我輩の魔法は完璧じゃった。気づかれるとすれば、お主のように我輩の魔法を上回る変態級の気配察知」
「変態級って…それ微妙に貶してるだろ」
「馬鹿者、本来知覚できないような気配を読み取っておるんじゃ。褒め言葉として受け取っておけ」
まぁ俺って言うよりシャルだな。シャルの気配察知はそれこそ魔法みたいなレベルだが……
「あるいは」
「?」
「否、流石にそれは無かろうな」
「なんだよ、もったいぶらずに言え」
「断る」
やけに力強く断言する《臨界点》。
「というかそれぐらい、自力で考えてみよ」
「生憎、頭は良くないんだが…決闘で聞いていいか?」
「お主……そのような見た目をしておきながら脳筋か?」
「見た目は関係ないだろ見た目は」
意外といい案かもな。滅多に戦えないような《臨界点》と戦えるなんて。
「…いや、我輩はそのような事せぬぞ。それに第三者がおらぬなら決闘の効力はないじゃろう」
「そうだけど、お前と戦ってみたいからさ」
「脳筋な上に戦闘狂バトルジャンキーか!お主!?」
意味はわからないが凄まじく罵倒された気がする。
まぁいい、引いておこう。どうせ逃げられるだけだろうし。
「あ、そうだ《臨界点》。ついでにもう一個聞きたいんだが」
「何じゃ?スリーサイズはトップシークレットじゃぞ?」
「だぁれがそんな薄っぺらい身体のこと聞くかよ」
おっと、凄まじい殺気。これもう少し煽ったら戦えるんじゃね?
『今代の…いい加減にしておけよ』
流石にシャルに諌められた。
「お主…帰るぞ」
「悪い悪い。ついでに聞きたい事ってのは、お前ってどうやって争奪戦を勝ち抜いたんだ?」
すると《臨界点》は薄く笑った口元を僅かに見せ、答えを示した。
「何、最終日の時間ギリギリに候補者を一瞬で討ち取っただけじゃよ」
そう言って今度こそ《臨界点》は訓練所から出ていった。
……暇になったな。もう少し剣振ってくか。
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