大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

帰りと埋葬

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それから丸一日後、朝早くにアーネとシエルが森を出ていった。アーネの家では一年の始まりは家族と過ごすのがルールらしく、今から帰るとの事だ。
…正直、間に合わないと思うんだが。だって歩きだろ?
そう思ってアーネに聞いてみると、「プクナイムに馬車を残してありますわ」とのこと。そこから馬車を昼夜問わず飛ばせばギリギリ間に合うんだとか。
二人が出ていった直後は、かなり家が静かに感じたが、それにもすぐ慣れた。
いつもの家だ。
「具合はどうだ?」
「お前もな、ヤツキ。体調は?」
「私はすこぶる快調だ。せいぜい、昨日一日動けなかったから退屈で死にそうだったぐらいか」
「俺も大丈夫だ。松葉杖が無いってサイコー。健康体って素晴らしい」
『アーネが施した治療は「辛うじて健康体の範疇に入る程度」の治療だろ。そんな嘘ぶっこくんじゃない』
それを言うならヤツキお前もだよ。
「それでは、準備はいいか?」
「あぁ、もちろん。いい加減、やらにゃならんとは思っていたんだ」
俺達が持っているのは年季の入った、けれど壊れる様子が一切見えない頑丈なスコップ。
それをしっかりと握り、ザックザックと地面を掘る。
何をやってるかって?この前のモンスターパレードで攻めてきた魔獣達、その片付けだ。
魔獣の肉は個体や種族にもよるが、大体は非常に腐りやすい。これは外の世界から来た魔獣達がこの世界に順応しきっているとは言い難く、生命活動をしている間は「生命活動をし、存在している」という事象が強引に世界の理をねじ曲げて存在しているのを──
『誰に説明しているんだ誰に。それに、説明をするにしても長い。もっと短くまとめろ』
つまり、生きている間はこっちにいることを許されているが、死んだ途端にこっちの世界がそれを拒絶するらしい。
その結果、最も自然な無に返す形、腐食に限りなく近い形で命を返すのだそうだ。 
そういった魔獣は骨すら残らずこの世から消え去る。残るのは、倒した者が必要に応じて手に入れる魔獣の牙や皮などの遺品ドロップアイテムのみ。その場合は世界が「魔獣の死骸」ではなく「討伐者の所有物」と認識するかららしい。同様の理由で肉を食べても問題ないらしい。
ちなみにこれはナナキの記憶からサルベージした物。全く、何でこんなことをナナキは知っていたんだ?
『色々あったんだよ。特に俺の時代激動の時代だったんだ』
そりゃまぁ、一種族を滅ぼした《勇者》様だしな。色々あるんだろうが…今度また記憶を漁ろう。
『程々にしとけよ?』
もちろん。
「おい!手が止まっているぞ!」
「はいはい」
魔獣達を埋めるのに、結局夜前までかかってしまった。
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