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本編
地下室と譲渡
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ヤツキに言われ、普段は滅多に使わない家の裏口から帰宅、二人して音もなく地下室へと降りていく。
「で、何をするんだ?」
「昨晩言っただろう?連と理の完全譲渡だ」
そう言ってヤツキが腰元から細長い金属の紐の様なものを取り出す──っておい。
収納状態の金剣銀剣じゃねぇか。
「生徒証、便利だな。私にくれないか?」
「馬鹿野郎、そんなもんまでスってたのか。どおりで見つからなかったわけだ」
日中、ヤツキが「自室に金剣銀剣がある」みたいな事言ってたから、少し剣を探しに行ったんだが、ほぼ物置みたいな部屋の中にはどれだけ探しても無かったし。
生徒証はあれだけ激しい戦闘だったから、失くしたか砕けたかしたと思っていた。
まぁ、あるなら良かった。もしもダメになっていたら、オードラル先生にドヤされるところだった。
「では始める。と言っても、そこまで大層なものじゃない。肩の力を抜いていていいぞ」
俺が返事をする前に、ヤツキが素早く銀剣を取り出す。
「比翼にして連理、その片翼の連──」
ぼう、と銀剣が──特にその剣に刻まれた得体の知れない文字が光り始める。
「私、シャルレーゼ・ハーケンはあなたとの契約を、彼──」
そこでヤツキが俺の顔を見て、目で聞いてくる。
──「あれ?お前の名付けられた方の名前ってなんだっけ?」
『…バカタレ』
「……シィルだ。レィア・シィル」
「──レィア・シィルに譲渡する」
特に長い口上という訳では無い。だが、変化は劇的だった。
ヤツキがそう言った瞬間、放たれていた光がぐっ!!と銀剣に凝縮される。
その輝きは決して衰える事なく、むしろ増していく。
そしてその輝きが限界にまで達した瞬間、唐突に輝きが消える。
「これで連はお前の物だ。次は──理」
キィン──金剣が澄んだ音と共に具現化する。
その姿は銀剣とそっくり同じ、ただひとつ違うのはその色。決して下品ではない金の輝きを放つ高貴な剣。
「…………」
『…………』
なんだよお前ら。二人して黙って。
『…………いや、何。少しばかりこの剣には思い入れがあってな』
「比翼にして連理、その片翼の理──」
先程と全く同じ手順、セリフを読み上げていくヤツキ。唯一違う点があるとすれば、ヤツキの手先が微かに震えているという事だろうか。
特に顔に疲労の色は見えてはいない。ならば精神的なものだろう。
「──レィア・シィルに譲渡する」
金剣も銀剣同様、輝きが凝縮されつつ増していく。
目を焼く輝きが限界に達した瞬間────?
柔らかそうな金の髪を持った男が一瞬だけ見えた。
「………………これで理もお前の物だ。大切に扱ってくれ」
「あぁ、分かってる」
今、間違いなくヤツキは命よりも大切なものを譲ってくれたのだろう。
彼女の頬を伝う涙は俺にそう確信させるものだった。
「で、何をするんだ?」
「昨晩言っただろう?連と理の完全譲渡だ」
そう言ってヤツキが腰元から細長い金属の紐の様なものを取り出す──っておい。
収納状態の金剣銀剣じゃねぇか。
「生徒証、便利だな。私にくれないか?」
「馬鹿野郎、そんなもんまでスってたのか。どおりで見つからなかったわけだ」
日中、ヤツキが「自室に金剣銀剣がある」みたいな事言ってたから、少し剣を探しに行ったんだが、ほぼ物置みたいな部屋の中にはどれだけ探しても無かったし。
生徒証はあれだけ激しい戦闘だったから、失くしたか砕けたかしたと思っていた。
まぁ、あるなら良かった。もしもダメになっていたら、オードラル先生にドヤされるところだった。
「では始める。と言っても、そこまで大層なものじゃない。肩の力を抜いていていいぞ」
俺が返事をする前に、ヤツキが素早く銀剣を取り出す。
「比翼にして連理、その片翼の連──」
ぼう、と銀剣が──特にその剣に刻まれた得体の知れない文字が光り始める。
「私、シャルレーゼ・ハーケンはあなたとの契約を、彼──」
そこでヤツキが俺の顔を見て、目で聞いてくる。
──「あれ?お前の名付けられた方の名前ってなんだっけ?」
『…バカタレ』
「……シィルだ。レィア・シィル」
「──レィア・シィルに譲渡する」
特に長い口上という訳では無い。だが、変化は劇的だった。
ヤツキがそう言った瞬間、放たれていた光がぐっ!!と銀剣に凝縮される。
その輝きは決して衰える事なく、むしろ増していく。
そしてその輝きが限界にまで達した瞬間、唐突に輝きが消える。
「これで連はお前の物だ。次は──理」
キィン──金剣が澄んだ音と共に具現化する。
その姿は銀剣とそっくり同じ、ただひとつ違うのはその色。決して下品ではない金の輝きを放つ高貴な剣。
「…………」
『…………』
なんだよお前ら。二人して黙って。
『…………いや、何。少しばかりこの剣には思い入れがあってな』
「比翼にして連理、その片翼の理──」
先程と全く同じ手順、セリフを読み上げていくヤツキ。唯一違う点があるとすれば、ヤツキの手先が微かに震えているという事だろうか。
特に顔に疲労の色は見えてはいない。ならば精神的なものだろう。
「──レィア・シィルに譲渡する」
金剣も銀剣同様、輝きが凝縮されつつ増していく。
目を焼く輝きが限界に達した瞬間────?
柔らかそうな金の髪を持った男が一瞬だけ見えた。
「………………これで理もお前の物だ。大切に扱ってくれ」
「あぁ、分かってる」
今、間違いなくヤツキは命よりも大切なものを譲ってくれたのだろう。
彼女の頬を伝う涙は俺にそう確信させるものだった。
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