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本編
起床と体調
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明日、アーネとシエルに見つからないよう、二人きりになれるタイミングを作ってくれ。
十分と少し程上がっていた花火を見終えたヤツキがそう言い、ひょいと窓から部屋に入っていった。
花火はまぁ、見応えがあった。あの大人しい聖女サマが俺に自慢したくなるのも分かる程度には。来年はもっと近くで見たいものだと思いつつ、それは難しいだろうなとも思っていた自分もいたが。
『なんだ今代の。珍しく歯切れが悪いじゃないか』
「うるせぇシャル」
昇ってきた朝日が放つ強い朝日に顔を顰めつつ大きな独り言を呟く。
『体調が悪いのか?』
「あぁ、足と肋が痛いのなんの。それとついでに、金剣銀剣が返ってきてねぇんだよ」
ベッドから降り、昨日マキナが作ってくれた松葉杖をベッドの脇から手繰り寄せて立ち上がる。着替えはクローゼットにまだ残してあったはずだ。
よっと、着替えるのも一苦労だな、やはり手を折るのも厄介だろうが、足を折るのも厄介だな。
『ヤツキが持っているんだろ?なら別に構わないじゃねぇか』
「まぁ、そりゃそうなんだが…落ち着かねぇんだよな、アレがないと」
なんだかんだ言って、十年近く常に手元にあったものだ。近くに無いというのはそれだけで少し不安になる。
「譲渡に必要なのか?」
『いや、必要な訳ではないな。が、それなりに決別と言うか区切りと言うか決心と言うか…まぁ、そう言った物が必要なんだよ』
「?」
『後でヤツキに聞け。アーネとシエルの様子はどうだ?』
そういや昨日丸々一日寝てたな。見に行くか。
この家の二階には部屋が四つもある。右隣の部屋は元ナナキの部屋だし、多分ヤツキがいるはず…となると向かい側の部屋とその隣に二人がいるだろう。
『もしかしたら起きてるかもしれないからな、ノックしろよ』
「わぁってるよ」
軽く二、三度ノックしてみるが、返事はない。まだ寝ているのだろうか。
「入るぞー」
小声でそう言いつつ、元は単なる物置部屋だった部屋に入る。
そこにはとりあえず無理矢理片付けたと言わんばかりな雑な空間と、床に直に敷く布団が一組。枕元にはコップと蒸されたであろう芋が置いてあったが、それに手をつけた形跡はない。
布団の中にいたのはアーネ。顔色は少しだけまだ悪いだろうか。しかし昨日より随分と良くなっている。
『魔力を分けなくていいのか?』
「分けてやりたいのは山々だが、こちらの魔力も結構ないんだよ。…まぁ、この様子だと昼頃にゃ起きそうだがな」
魔力ではなく緋眼によって視てとった感じそんな雰囲気だ。
「さて、次はシエルだな」
隣の部屋の戸を小さくノック、返事はやはり無い。
そっと戸を開けて入ると──
「………おかあさんっ!」
「のわっ、シエル、ちょっとタンマっ!!」
シエルが飛びついてきた。
危ねぇ。危うく倒れる所だった。
「体調はもう大丈夫なのか?」
「………ん。ん!」
うん、大丈夫そうだな。
「それならよかった」
黒竜を見た時の彼女の事を聞こうかどうか迷ったが──しばらく放置することにした。
十分と少し程上がっていた花火を見終えたヤツキがそう言い、ひょいと窓から部屋に入っていった。
花火はまぁ、見応えがあった。あの大人しい聖女サマが俺に自慢したくなるのも分かる程度には。来年はもっと近くで見たいものだと思いつつ、それは難しいだろうなとも思っていた自分もいたが。
『なんだ今代の。珍しく歯切れが悪いじゃないか』
「うるせぇシャル」
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ベッドから降り、昨日マキナが作ってくれた松葉杖をベッドの脇から手繰り寄せて立ち上がる。着替えはクローゼットにまだ残してあったはずだ。
よっと、着替えるのも一苦労だな、やはり手を折るのも厄介だろうが、足を折るのも厄介だな。
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「まぁ、そりゃそうなんだが…落ち着かねぇんだよな、アレがないと」
なんだかんだ言って、十年近く常に手元にあったものだ。近くに無いというのはそれだけで少し不安になる。
「譲渡に必要なのか?」
『いや、必要な訳ではないな。が、それなりに決別と言うか区切りと言うか決心と言うか…まぁ、そう言った物が必要なんだよ』
「?」
『後でヤツキに聞け。アーネとシエルの様子はどうだ?』
そういや昨日丸々一日寝てたな。見に行くか。
この家の二階には部屋が四つもある。右隣の部屋は元ナナキの部屋だし、多分ヤツキがいるはず…となると向かい側の部屋とその隣に二人がいるだろう。
『もしかしたら起きてるかもしれないからな、ノックしろよ』
「わぁってるよ」
軽く二、三度ノックしてみるが、返事はない。まだ寝ているのだろうか。
「入るぞー」
小声でそう言いつつ、元は単なる物置部屋だった部屋に入る。
そこにはとりあえず無理矢理片付けたと言わんばかりな雑な空間と、床に直に敷く布団が一組。枕元にはコップと蒸されたであろう芋が置いてあったが、それに手をつけた形跡はない。
布団の中にいたのはアーネ。顔色は少しだけまだ悪いだろうか。しかし昨日より随分と良くなっている。
『魔力を分けなくていいのか?』
「分けてやりたいのは山々だが、こちらの魔力も結構ないんだよ。…まぁ、この様子だと昼頃にゃ起きそうだがな」
魔力ではなく緋眼によって視てとった感じそんな雰囲気だ。
「さて、次はシエルだな」
隣の部屋の戸を小さくノック、返事はやはり無い。
そっと戸を開けて入ると──
「………おかあさんっ!」
「のわっ、シエル、ちょっとタンマっ!!」
シエルが飛びついてきた。
危ねぇ。危うく倒れる所だった。
「体調はもう大丈夫なのか?」
「………ん。ん!」
うん、大丈夫そうだな。
「それならよかった」
黒竜を見た時の彼女の事を聞こうかどうか迷ったが──しばらく放置することにした。
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