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本編
蝗と死闘
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ヤツキがそう言い、俺がそれは何かと聞き返す前に、羽音がより一層大きくなる。
「口閉じろ!内側から食い破られるぞ!」
直後、結界の向こうから黒い霧のようなものがこちらへ向かってくる。
よくよく見るとそれは親指よりもふたまわり程も大きいバッタ…いや、蝗。
それだけならまだしも、蝗達の顔についているのは異常発達した不格好ながらも見るからに強靭そうな顎。
「っ」
言い様もない生理的悪寒を覚えた直後、真っ黒な霧が俺達に襲いかかる。
「マキナ!!俺らの顔だけ覆って残りは迎撃!!」
マキナの返事は聞こえなかったが、行動は返ってきた。
即座に俺とヤツキの顔にフェイスヘルムが隙間なく装着される。
直後、無数の蝗が顎をカチカチ鳴らし、俺の身体の至る所に噛み付いてきた。
『ッッ!!』
噛まれた箇所から感じる激痛は皮と筋肉が破られた痛みだけではない。
これは明らかに──毒。
『クソッタレが!!』
ヤバい、そう思うと同時に半ば反射的に血界が発動、背中を中心に熱が身体を熱くする。
『第三血界《血刃》展開!!』
噛まれた傷口から四方八方へ向けて、短いながらも絶死の刃が蝗達を襲う。
蝗の耐久力は大したことは無いらしく、ついでに言うと機動力も特別すごい訳ではない。
簡単に死に、血を一滴も流さずに落ちていくが──
『くっそ、数が多すぎる!!』
何百匹、何千匹いるのだろう?あるいは万?
『ぐっ!!』
いくら剣を精密に振っても、奴らはその間を縫って必ず俺の肉に食いつく。
その度に身体を内側から焼く雷のような痛みが俺を強く刺激する。
今まで以上に急速に貯まる疲労とストレス、そしてダメージ。もし顔を保護していなかったら死んでいただろう。
『クソがあああああ!!』
『落ち着け』
叫ぶ俺と対照的に、どこまでも静かにヤツキが答える。
『こいつらの攻撃で死にそうになることはあっても絶対に人を殺す事は無い。それが神との契約だからな。いいか?落ち着け。落ち着いて確実に被弾を減らせ』
『っ、分かった』
冷静なヤツキにそう諭され、一気に頭が冷える。
途端に視界がクリアになり、剣筋がより鋭くなる。
被弾は減り、撃墜数は増えるがやはり──
『キリがねぇな』
シャルが俺の言葉を代弁した。
『これは……俺の体力が先に尽きるぞ』
『あぁ、私もかなりギリギリになるな。第七夜以降が心配だ』
『今現在の心配をしやがれ!こいつら倒すのにどれだけかかると思って──』
『おい今代の、後ろの方に気をつけろ』
シャルが短く警告を発する。
『新手か!?』
『いや、じゃなくてだな──』
「………よけ、て!!」
幼く成熟しきっていない声が俺の耳に届いた。
直後にとんでもない熱を背中で感じる。
『ヤツキ!横に飛べ!!』
言うが早いが横に飛び、俺が一瞬前までいた所を特大の火球が通り過ぎる。
火球は蝗の群れの大部分を焼き、生き残った個体も中途半端に生き残っている個体の炎が飛び火し、次々燃えていく。
「な、なんですの?これは…」
約一週間ぶりに聞いたその声は、赤い髪と共にやってきた。
『……よぉアーネ。地獄へようこそ』
「口閉じろ!内側から食い破られるぞ!」
直後、結界の向こうから黒い霧のようなものがこちらへ向かってくる。
よくよく見るとそれは親指よりもふたまわり程も大きいバッタ…いや、蝗。
それだけならまだしも、蝗達の顔についているのは異常発達した不格好ながらも見るからに強靭そうな顎。
「っ」
言い様もない生理的悪寒を覚えた直後、真っ黒な霧が俺達に襲いかかる。
「マキナ!!俺らの顔だけ覆って残りは迎撃!!」
マキナの返事は聞こえなかったが、行動は返ってきた。
即座に俺とヤツキの顔にフェイスヘルムが隙間なく装着される。
直後、無数の蝗が顎をカチカチ鳴らし、俺の身体の至る所に噛み付いてきた。
『ッッ!!』
噛まれた箇所から感じる激痛は皮と筋肉が破られた痛みだけではない。
これは明らかに──毒。
『クソッタレが!!』
ヤバい、そう思うと同時に半ば反射的に血界が発動、背中を中心に熱が身体を熱くする。
『第三血界《血刃》展開!!』
噛まれた傷口から四方八方へ向けて、短いながらも絶死の刃が蝗達を襲う。
蝗の耐久力は大したことは無いらしく、ついでに言うと機動力も特別すごい訳ではない。
簡単に死に、血を一滴も流さずに落ちていくが──
『くっそ、数が多すぎる!!』
何百匹、何千匹いるのだろう?あるいは万?
『ぐっ!!』
いくら剣を精密に振っても、奴らはその間を縫って必ず俺の肉に食いつく。
その度に身体を内側から焼く雷のような痛みが俺を強く刺激する。
今まで以上に急速に貯まる疲労とストレス、そしてダメージ。もし顔を保護していなかったら死んでいただろう。
『クソがあああああ!!』
『落ち着け』
叫ぶ俺と対照的に、どこまでも静かにヤツキが答える。
『こいつらの攻撃で死にそうになることはあっても絶対に人を殺す事は無い。それが神との契約だからな。いいか?落ち着け。落ち着いて確実に被弾を減らせ』
『っ、分かった』
冷静なヤツキにそう諭され、一気に頭が冷える。
途端に視界がクリアになり、剣筋がより鋭くなる。
被弾は減り、撃墜数は増えるがやはり──
『キリがねぇな』
シャルが俺の言葉を代弁した。
『これは……俺の体力が先に尽きるぞ』
『あぁ、私もかなりギリギリになるな。第七夜以降が心配だ』
『今現在の心配をしやがれ!こいつら倒すのにどれだけかかると思って──』
『おい今代の、後ろの方に気をつけろ』
シャルが短く警告を発する。
『新手か!?』
『いや、じゃなくてだな──』
「………よけ、て!!」
幼く成熟しきっていない声が俺の耳に届いた。
直後にとんでもない熱を背中で感じる。
『ヤツキ!横に飛べ!!』
言うが早いが横に飛び、俺が一瞬前までいた所を特大の火球が通り過ぎる。
火球は蝗の群れの大部分を焼き、生き残った個体も中途半端に生き残っている個体の炎が飛び火し、次々燃えていく。
「な、なんですの?これは…」
約一週間ぶりに聞いたその声は、赤い髪と共にやってきた。
『……よぉアーネ。地獄へようこそ』
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