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本編
騒ぎと憧れ
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時間もちょうど良かったので、ユーリアをおぶっていつもより一段も二段も騒がしい食堂へと入ってひと騒ぎ。
その後、疲れたユーリアをアーネの提案で俺達の部屋の風呂へ招待した際、ルーシェも入れさせろとひと騒ぎ。
何故か部屋に入るなとキツく言われ、未だ喧騒の真っ只中の食堂、その隅っこで何となく時間を潰していると──。
『マスター・メッ』
「《逆鱗》?」
『はい』
「繋げ」
やれやれ、今度は何用かね。
「よぉルト先輩。こちらレィア。食堂で楽しい楽しい打ち上げ騒ぎの真っ最中。何なら先輩も来たらどうだ?今ならまだご馳走がたんまりと残ってるぜ?」
『第一訓練所へ来い』
──。
『切れました』
「辛気臭ぇ声で一言呼び出しですか、そうですかそうですか…っと」
カタリ、と椅子を鳴らして食堂を出、そのままゆっくりとした足取りで夜の訓練所へと足を運ぶ。
「なぁシャル」
『なんだ今代の』
ふと思いついた事を見えない相棒に訊ねてみる。
「いたかどうか知らねぇけど、仮にいたとして、お前が憧れてた人が、誰かの手でお前の知らないヤツに変えられたとしたら──お前はどう思う?」
『質問が曖昧すぎるぞ。知らないヤツってどう知らないヤツになるんだ。それにどう思う、って何がどうだ。まったく容量を得ん話だな』
んー…なんつーか。
「お前が憧れている人が、お前が思っている『こう行動するはずだ!』って行動から外れた時、かな?」
『なんじゃそりゃ。そんなの、人の勝手だろうに』
「それが、その人に憧れてる理由に大きく関わるとしてもか?」
『それなら尚更だな。こっちが勝手に憧れて、こっちが勝手に落胆してるだけだ。どういう理由で憧れたかは知らねぇが、俺なら憧れるのを辞めるさ。もしくは──』
「もしくは?」
『それがあんまりにも気に食わなかったら、俺の知ってる奴じゃない、なんて言って──自分で殺しちまうかもな』
「おぉ怖い怖い」
おどけてみるが、あいつはそれに近いところにいるんだろうな。
『《逆鱗》…ルト・ゼヴァルナアークか?』
「あぁ」
『ちなみに、お前がそうなったらどうする?』
そうなったら、ってのは憧れが変わってしまったら、って話か?
『もちろん。それ以外に何がある』
「そうだなぁ…」
憧れ、か…そう言われて真っ先に思い浮かぶのはナナキ。未だに彼女の背中を追いかけ続けているような気がする。
「多分、だが…そんな事は無いな」
『ほう?』
「アイツは絶対に変わらない。そんな確信があったし、今はもう死んじまったしな…けどもし、万が一、また会えた時に変わっていたら」
訓練所の前で足を止め、少しだけ押してみる。鍵は開いているようだ。
──普通なら諦める方がいいのかもしれない。
あるいはシャルのように、それが認められず、壊してしまうのかもしれない。
それでも、それでも彼女に憧れを抱き続けたいのならば。
「その時は多分、俺が変わる番だ」
俺は扉を思いっきり押した。
その後、疲れたユーリアをアーネの提案で俺達の部屋の風呂へ招待した際、ルーシェも入れさせろとひと騒ぎ。
何故か部屋に入るなとキツく言われ、未だ喧騒の真っ只中の食堂、その隅っこで何となく時間を潰していると──。
『マスター・メッ』
「《逆鱗》?」
『はい』
「繋げ」
やれやれ、今度は何用かね。
「よぉルト先輩。こちらレィア。食堂で楽しい楽しい打ち上げ騒ぎの真っ最中。何なら先輩も来たらどうだ?今ならまだご馳走がたんまりと残ってるぜ?」
『第一訓練所へ来い』
──。
『切れました』
「辛気臭ぇ声で一言呼び出しですか、そうですかそうですか…っと」
カタリ、と椅子を鳴らして食堂を出、そのままゆっくりとした足取りで夜の訓練所へと足を運ぶ。
「なぁシャル」
『なんだ今代の』
ふと思いついた事を見えない相棒に訊ねてみる。
「いたかどうか知らねぇけど、仮にいたとして、お前が憧れてた人が、誰かの手でお前の知らないヤツに変えられたとしたら──お前はどう思う?」
『質問が曖昧すぎるぞ。知らないヤツってどう知らないヤツになるんだ。それにどう思う、って何がどうだ。まったく容量を得ん話だな』
んー…なんつーか。
「お前が憧れている人が、お前が思っている『こう行動するはずだ!』って行動から外れた時、かな?」
『なんじゃそりゃ。そんなの、人の勝手だろうに』
「それが、その人に憧れてる理由に大きく関わるとしてもか?」
『それなら尚更だな。こっちが勝手に憧れて、こっちが勝手に落胆してるだけだ。どういう理由で憧れたかは知らねぇが、俺なら憧れるのを辞めるさ。もしくは──』
「もしくは?」
『それがあんまりにも気に食わなかったら、俺の知ってる奴じゃない、なんて言って──自分で殺しちまうかもな』
「おぉ怖い怖い」
おどけてみるが、あいつはそれに近いところにいるんだろうな。
『《逆鱗》…ルト・ゼヴァルナアークか?』
「あぁ」
『ちなみに、お前がそうなったらどうする?』
そうなったら、ってのは憧れが変わってしまったら、って話か?
『もちろん。それ以外に何がある』
「そうだなぁ…」
憧れ、か…そう言われて真っ先に思い浮かぶのはナナキ。未だに彼女の背中を追いかけ続けているような気がする。
「多分、だが…そんな事は無いな」
『ほう?』
「アイツは絶対に変わらない。そんな確信があったし、今はもう死んじまったしな…けどもし、万が一、また会えた時に変わっていたら」
訓練所の前で足を止め、少しだけ押してみる。鍵は開いているようだ。
──普通なら諦める方がいいのかもしれない。
あるいはシャルのように、それが認められず、壊してしまうのかもしれない。
それでも、それでも彼女に憧れを抱き続けたいのならば。
「その時は多分、俺が変わる番だ」
俺は扉を思いっきり押した。
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