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本編
剣の一族と期限
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いい加減喋れよ、と言ったものの。
ラストの踵落としで、ユーリアが見事に気絶してしまった。
当然喋ることは出来ず、暫く放置。
とは言え原因の一端──そう、あくまで一端だ──は俺にあるので、俗に言う膝枕でもして待っておいてやる。
五分か十分ほどすると、ユーリアが突然なんの前触れも無く、ガバリと起き上がる。
「……っ!!」
「よぉユーリア。いい夢見れたか?寝心地は最高だったろう?」
「…あぁ、やたら綺麗な川の向こうに死んだお祖母様がこちらに手を振っている夢を見たよ。寝心地は最高だったが、寝つきは最悪だった。次はもう少し優しく、子守唄でも歌って寝かしつけてくれるか?」
コイツよく喋るな。
しかし、起き上がりざまにでもまた殴ってくるかと思ったが、そんな気配は無さそうだ。少し安心した。
「で?」
「…で?、とは一体なんだ?それだけで分かる程私は洞察力に優れている訳では無いのだが」
キョロキョロと周りをせわしなく見、何かを探すような動作をするユーリア。
「そうか、じゃあ俺の心のメモに、『ユーリア・グランデンジークは唐突に剣を友人へと向け、武器を奪っても拳で殴り倒そうとする程の戦闘狂だ』って一行を追加しておくとしよう。…あぁ、お前の剣はこっちな」
ようやく視線の理由に行き当たり、剣を髪の中から取り出して渡す。
「…なんでレィアが私の剣を隠し持っていたんだ?」
「なんでバーサーカーに武器をハナから渡すような悪手をとらにゃならん?」
少しばかり小馬鹿にするようにしてそう言うと、ユーリアが大きくため息を吐き、剣を小さな指輪にして片付ける。
「……レィア、君は私の家がどういう家知っているか?」
ユーリアが俺の膝へ乱暴に頭を投げ、そのまま寝転ぶ。
「もちろん。と言うかお前が俺に教えたんじゃねぇか」
四つの貴族の上に立つ二つの大貴族。
剣の大貴族、グランデンジーク家。
王の剣、王の盾と呼ばれ、王に直接仕える大貴族の片割れ。
「なら、私が本来ここにいてはいけないという事も知っているな?」
「知ってるっつーか何となく知ってたっつーか…まぁ」
そして王族と聖女…というか教会は仲が悪い。
王族が政治を行い、民衆を慮っているのに、民衆が感謝し、信仰するのは教会と聖女。
これ以上は話が脱線するので割愛。
ともかく、王族に仕える一族が聖女に仕えようとするこの現状は本来有り得ないはずだ。
ユーリアが「少し昔話をしよう」、と切り出す。
「私には兄が二人いて、私は末っ子でな。王に仕えるのは上の兄か下の兄、だから私はある程度自由にしていた。父や母はもう少し女らしく振る舞って欲しかったようだが…兄二人に囲まれた結果、こんな喋り方や性格がついて、気がついたら剣も握っていた」
ユーリアの話を黙って聞く。
…そう言えば、盾の一族も似たような理由でここに来たのだろうか。
「両親も最初は飽きてやめると思っていたのだろうが…そんなことは無く、剣を握り続けた結果、私は今ここに来ると言う選択を一年前の今頃、父に話したんだ」
その声はどことなく寂しそうで。
初めて聞くユーリアの声だった。
「その時父は激怒してなぁ…今思えば、初めて出来た娘が可愛くて、好きにさせてやっていたんだろう。そのうち私も女の子らしくなる、今に剣も置いてお茶でも楽しむようになる、と。父が欲しかったのは『女の子』であって、私のような『男勝りの女』ではなかったんだろうな…だから父は私に一つ条件を出してきた。期限は一年。守れなければすぐに退学、王都の屋敷へ強制帰還」
その内容が──二つ名持ちになることだ。ユーリアがそう言う。
「なぁ…レィア。私は二つ名から見て、二つ名持ちに足る実力だろうか?」
それは疑問の形を取った断言。
強い否定の断言。
「私は──」
ラストの踵落としで、ユーリアが見事に気絶してしまった。
当然喋ることは出来ず、暫く放置。
とは言え原因の一端──そう、あくまで一端だ──は俺にあるので、俗に言う膝枕でもして待っておいてやる。
五分か十分ほどすると、ユーリアが突然なんの前触れも無く、ガバリと起き上がる。
「……っ!!」
「よぉユーリア。いい夢見れたか?寝心地は最高だったろう?」
「…あぁ、やたら綺麗な川の向こうに死んだお祖母様がこちらに手を振っている夢を見たよ。寝心地は最高だったが、寝つきは最悪だった。次はもう少し優しく、子守唄でも歌って寝かしつけてくれるか?」
コイツよく喋るな。
しかし、起き上がりざまにでもまた殴ってくるかと思ったが、そんな気配は無さそうだ。少し安心した。
「で?」
「…で?、とは一体なんだ?それだけで分かる程私は洞察力に優れている訳では無いのだが」
キョロキョロと周りをせわしなく見、何かを探すような動作をするユーリア。
「そうか、じゃあ俺の心のメモに、『ユーリア・グランデンジークは唐突に剣を友人へと向け、武器を奪っても拳で殴り倒そうとする程の戦闘狂だ』って一行を追加しておくとしよう。…あぁ、お前の剣はこっちな」
ようやく視線の理由に行き当たり、剣を髪の中から取り出して渡す。
「…なんでレィアが私の剣を隠し持っていたんだ?」
「なんでバーサーカーに武器をハナから渡すような悪手をとらにゃならん?」
少しばかり小馬鹿にするようにしてそう言うと、ユーリアが大きくため息を吐き、剣を小さな指輪にして片付ける。
「……レィア、君は私の家がどういう家知っているか?」
ユーリアが俺の膝へ乱暴に頭を投げ、そのまま寝転ぶ。
「もちろん。と言うかお前が俺に教えたんじゃねぇか」
四つの貴族の上に立つ二つの大貴族。
剣の大貴族、グランデンジーク家。
王の剣、王の盾と呼ばれ、王に直接仕える大貴族の片割れ。
「なら、私が本来ここにいてはいけないという事も知っているな?」
「知ってるっつーか何となく知ってたっつーか…まぁ」
そして王族と聖女…というか教会は仲が悪い。
王族が政治を行い、民衆を慮っているのに、民衆が感謝し、信仰するのは教会と聖女。
これ以上は話が脱線するので割愛。
ともかく、王族に仕える一族が聖女に仕えようとするこの現状は本来有り得ないはずだ。
ユーリアが「少し昔話をしよう」、と切り出す。
「私には兄が二人いて、私は末っ子でな。王に仕えるのは上の兄か下の兄、だから私はある程度自由にしていた。父や母はもう少し女らしく振る舞って欲しかったようだが…兄二人に囲まれた結果、こんな喋り方や性格がついて、気がついたら剣も握っていた」
ユーリアの話を黙って聞く。
…そう言えば、盾の一族も似たような理由でここに来たのだろうか。
「両親も最初は飽きてやめると思っていたのだろうが…そんなことは無く、剣を握り続けた結果、私は今ここに来ると言う選択を一年前の今頃、父に話したんだ」
その声はどことなく寂しそうで。
初めて聞くユーリアの声だった。
「その時父は激怒してなぁ…今思えば、初めて出来た娘が可愛くて、好きにさせてやっていたんだろう。そのうち私も女の子らしくなる、今に剣も置いてお茶でも楽しむようになる、と。父が欲しかったのは『女の子』であって、私のような『男勝りの女』ではなかったんだろうな…だから父は私に一つ条件を出してきた。期限は一年。守れなければすぐに退学、王都の屋敷へ強制帰還」
その内容が──二つ名持ちになることだ。ユーリアがそう言う。
「なぁ…レィア。私は二つ名から見て、二つ名持ちに足る実力だろうか?」
それは疑問の形を取った断言。
強い否定の断言。
「私は──」
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