大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

回避と反撃

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訓練所の窓から僅かに漏れ入る月光を受け、ユーリアの銀の長剣がぎらりと輝く。
「──ふっ!!」
「は?」
大上段から振り下ろされたそれをバックステップで素早く回避、体勢を整える。
「おいおいユーリア、急にどうした?フィールドも無しに危険だろ──」
危険だろう?、とまで言いきれなかった。
素早く地面を蹴り、地面を詰めたユーリアはさらに下段に剣を構え、そこから上へと振り抜く。
さらに次、次、次、次次次次次次次──!!
そのどれもが素早く鋭いが、しかしどれも俺を斬るどころか掠ることすら出来ない。
『…鋭いが、温いな』
…まぁ。
一年生としては早く、二年すら倒す事は不可能ではないだろうが──それでも遅い。
そう感じるようになってしまった。
「周りがアレだしなぁ…」
これなら銀剣を使うまでもない。
白銀の腕アガートラム
小さく、小さく。
一言呟くと、腰に装備してある《千変》が素早く俺の腕を覆い、頑丈にして強固な鎧を形作る。
しかしそれは鎧にして鎧ではあらず。
ギッ…!!と奥歯を噛み締め、右の拳を握りしめる。
ユーリアの剣閃が横に薙ぎ、それを俺は地を舐める程身体を落とす。
ッ!!」
バンッ!!と床を左手のてのひらで思いっきり叩き、その反動で身体を跳ね上げる。
そしてそのまま肉薄。
俺の右拳には既に戦技アーツの仄白い輝き。
決められた動きにしたがって右拳が弧を描くようにして横に振るわれ、ユーリアがたった今薙いだばかり剣の柄尻、そこを叩き抜く。
ギン!!と金属同士が強くぶつかる音がした直後、剣が手から滑り抜け、そのまま壁に突き刺さる。
それを見届けてからユーリアの方へ向きながら、呆れながら口を開く。
「…全く、急にどうした──」
『気を抜くな!!しゃがめ!!』
シャルの警告に従い、即座に身をかがめると頭の上で風が鳴った。
「──ッッ!!」
屈めた体勢から目だけでユーリアの方を見ると、背中を向けた状態から一回転するような体勢でユーリアが俺を見下ろしていた。裏拳か?
その拳が垂直に振り下ろされた。
「クッ!!」
身体を反転させつつ、さらに戦技アーツを発動。真上に拳をカチ上げ、上から振り下ろされる手刀のような形の拳と衝突させる。
不安定な状態から繰り出した拳は辛うじて戦技アーツで競り勝ち、体勢を戻す。
と言うか、そのまま跳ね上がる。
そしてそのまま自分の足を大きく上に振りかぶり、跳躍の勢いも付けて──振り下ろす。
「い、い、か!げんにしろ!!」
ごすっ!!と大きな音がしてユーリアの頭に俺のかかとが突き刺さる。
「そろそろ怒るぜ?ユーリア。いい加減喋れよ」
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