大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

本編

食堂と食事

「ぶっ」
食ってた飯を吹きかけた。
で、それを強引に押し込んだら、今度は気管に入った。
当然、猛烈に咽むせこむ俺。
「がっほ！げっほぐっほ、げっほげっほ!!」
「「…大丈夫？」」
「…大丈夫ですの？」
「………おかあさん、大丈夫？」
『お前大丈夫か？死にそうな顔してんぞ』
まさかの全員に心配された。
「…大丈夫だ、生まれてこの方飯が気管に入って咽せるなんて片手で数えるぐらいしか無かったから、滅茶苦茶キツいだけだ」
スキルの関係でほとんどそんなことは無かったからな。例外は今回の様な超弩級の不意打ち(精神)とか、超弩級の不意打ち(物理)とかぐらい。
『滅茶苦茶キツいって…それ大丈夫って言わなくねぇ？』
周りはそんなストレートに言いはしないものの、似たような表情で聞いてくる。
大丈夫大丈夫……………。
「アーネ…そこの水差し取ってくれ…」
「はいですの」
コップに一杯水を入れ、飲み干す。…ふぅ、大分楽になった。
さて、茶番はそれぐらいにして。
「あー、そう、この人がリザ…えーっと、下の名前は？」
一応確認。
「「クロヴェール」」
だと思ったよ!!
しかし、これは少しばかり僥倖ぎょうこうだったかもしれない。
《不動荒野》に質問する手間が省けたし。なんせ本人と会ってるからな。
で、その本人様はさっきからずっと黙々と夕飯を平らげてる。
座っているから分からないが、多分身長は俺より少し大きいぐらい、髪と目の色はどちらも真っ黒…いや、よく見れば目は黒に限りなく近い紺色だったか。
その黒い髪は肩に届くか届かないかぐらいの位置で切りそろえてある。長い方が似合いそうだけどな。
んー、そのぐらいか。後は特筆するような事は無さそう…だな。
「むー、」「急にリザちゃんを」「ジロジロ見て」「変だよ？」「まさか」「リザちゃんが」「気に入ったの？」
「へ？あぁいや、ちょっと珍しくてな」
いかん、流石に不自然だったか。
あとアーネ、なぜお前は顔を真っ赤にして立ち上がる。周りみんな見てんぞ。そっと座れ。早く。
「「何が」」
「だって《不動荒野お前ら》、大体いっつも二人ぼっちで飯食ってんじゃん。何かあったのか？」
少しばかり気になったのがそこ。
しかしそう聞くと、二人は揃って眉を寄せた。
「あー」「そこ？」
「ん、なんか聞いちゃ不味いことだったか？」
「「んー、別に？」」
なんだ、いいのかよ。
「ちょっとね」「決闘の結果、」「負けちゃったから」「勝者の言う事聞いてるだけ」
「え？お前らが？」
「うん、」「で、リザちゃんのお願いが」「一緒にご飯食べて」「だったからここにいるの」
「なる……ほど」
まぁ、文字通り『一緒に飯を食うだけ』になってるがな。
…こんなのでいいのか？